♥15初めて。



 期末テストの結果が貼り出された。僕と莉香さんは、湧き上がる衝動に耐えて、これまでよく勉強したと思う。僕も一体どれだけ瞑想したことか……。ドキドキして表を見上げる。一番下の80位から目線を上げていくと、68位に僕の名前があった。やった、

順位も少し上がってる…と喜ぶ前に、莉香さんの順位も確認する。1位から目線を下げるまでもなく、3位に入っていた。


「い…やったぁ~~~!!」


「よかったぁーーーっ!!」


 莉香さんに抱き着かれ、僕も思わず抱き返してしまう。もう夏に入っており、お互いに少し汗ばんでいるのもあって、莉香さんの体は熱く、そして少し湿ったいい香りがした。このまま嗅ぎ続けていたいけれど、さすがに多くの同級生がいる中で、それはできない。僕と莉香さんは、わざとらしい咳ばらいを1つして離れると笑いあった。


 お互い成績も落とさずに済んだ。これまでラブラブするのも我慢してきた。お互い口には出していなかったが、「テストが終わったらね」は2人の暗黙の了解、合言葉だった。





 その日の午後。夕方の少し前くらいの時間。僕は冷房の効かせた自分の部屋のベッドで緊張して座っていた。シャワーを浴びたはずなのに、身体が頬が熱い。少ししして扉が開くと、そこにバスタオル姿の莉香さんが立っていた。電気を消してカーテンを閉めた薄暗い部屋。廊下の灯り越しに見える体のライン。


「敬真くん……」


「莉香さん…こっちきて」


 おずおずと近寄ってきた莉香さんを抱きしめると、バスタオルが落ちた。莉香さんの目はなんだかトロンとしていて、唇は艶やかに光っていた。僕は誘われるように、その唇にキスをする。そのまま僕は莉香さんをベッドに押し倒し……僕と莉香さんは結ばれた。





 万琉軟拳では『意感』によって、相手の動きやしたいこと、状態などを把握できる。そして把握できるということは、相手をより楽しませることも、もっと言うなら気持ちよくさせることもできるということだ。


 僕は、師匠のもと、何人かの年上のお姉さん達にいろいろと教えを受けてきた。その中で僕も万琉軟拳でお姉さん達に喜んでもらえるようにがんばった。学びがいろいろと深くなるにつれて、僕の中には『セックスは気持ちいいけど、人生をかけるものではない』という信念のようなものもでき、セックスをしている最中も僕はどこか冷静でいられるようになった。


 今、僕の腕の中で莉香さんが疲れて眠っている。最初は、万琉軟拳で莉香さんに気持ちよくなってもらおうとがんばった。僕もすごく興奮はしていたけど、頭の中に冷静な自分はいた。少しして耐えられなくなった莉香さんに懇願されて、ゴムもつけて(師匠やお姉さんからは最低限の礼儀だと教えられている)、莉香さんと一緒になった。


「けい…まぁ……♡」


 耳元で熱く囁かれた自分の名前を聞いた時、僕の中にいた冷静な自分は消し飛んで、万琉軟拳とかも頭からなくなって、僕は1人の男になった。


「莉香!…莉香!」


 お互いの激しい息遣いの中で、莉香さんの温かい心が僕に流れ込んでくる。僕はそれに応えるように、キスをして体を動かした。


 気がつくとすっかりと暗くなっていた。


「あ……敬真…くん…」


 目を覚ました莉香さんが、僕を見て微笑んで、そして裸である自分の姿を思い出して布団を手繰り寄せ、うかがうような目で僕を見た。


「敬真くん…なんだか、すごかった…」


「うん、莉香さんが可愛くて、夢中だった……」


「よかった…あたしも、その…きもちよかった……♡」


 最後の方は莉香さんの声は消え入りそうなほど小さかった。


「莉香さん、時間は?もう7時だけど」


「テストの打ち上げしてくるって、お母さんに伝えてる。由美さんは?」


「うちの母さんも今日は飲み会で遅くなるって言ってた」


ぐぅ~… くぅ~…


 2人同時にお腹がなる。


「莉香さん何か食べに行かない?」


「うん、あたしもお腹空いた」


「よければ先にシャワー浴びてきて」


「うん。……あ、シーツ、敬真くん、どうしよう…」


 体を起こした莉香さんは、シーツについた血を恥ずかしそうに見た。


「あ、だ、大丈夫、僕洗濯しておくから。大丈夫だから」


「うん…お願い…します」


 その後、僕と莉香さんはファミレスに言って夜ご飯を食べて帰った。マンションまで送っていったのだけど、莉香さんが少し歩きにくそうなのを隠している様子に、僕はドキドキ半分、なんだか申し訳ない気分半分になった。






~姫宮 莉香~



 敬真くんと初めてのえっちをした。したのだけど、なんというか何をされたのかが、あたしはよくわからなかった。いやわかっているんだけど、なんかもう全部ふわふわしてて、自分が自分じゃないけど、やっぱり自分である感じ。うん、あたしちょっと混乱してる。


 敬真くんはすごかった。最初は、いろんなところ触られて、撫でられて、な、なめられた……、もう全部が気持ちよくて、キスもいっぱいして。あたしはもうすごく乱れちゃって、最後は自分からて欲しいなんておねだりしちゃって。初めては痛いって、愛と絵美から聞いてたけど、痛みはほんと少しだけで。体の奥がじんじんと熱くなっていって。あたしは疲れてちょっと寝ちゃったけど、それまでにその…3回もされた。


 ご飯は敬真くんと食べたけど、味なんてあまりしなかったし、何を話したかもあまり覚えてない。家に帰ったら、出てきたお母さんが少し微笑んだ気がして、ばれてるかもって思ったら恥ずかしくて、すぐ自分の部屋に入った。愛と絵美にはしたら教えてって言われてたけど、あたしは今は…今だけは、この温かいのを独り占めにしておきたいと思って連絡しなかった。誰かに話したら、あたしの中の熱が逃げちゃう気がして。


 そういえば、最中に敬真くん、あたしのこと莉香って呼んでた。そう思い出した瞬間、ドクンと大きく鼓動が跳ね上がった。あたしはそれを思い返して、敬真くんにプレゼントしてもらった『サメかわ』の特大ぬいぐるみを思いきり抱き締める。


 少しずつ落ち着いてきたので、パジャマに着替えて、お布団にくるまっていたら眠くなってきた。寝るにはだいぶ早いけど、この幸せな気分のまま、あたしは今日を終わりたくて、敬真くんにメッセージだけ送ると目を閉じた。



『今日はありがと♪大好きだよ♡』




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