♥8告白



「敬真氏、聞きましたぞー。姫宮殿との成績ボードの前で抱き合ったとか!」


「いや、雅臣…それは」


「今さらごまかしはきかないですぞ。誰もがすでに知っておることですぞ?」


「まぁ、そうか。いや最近、莉香さ、いや姫宮さんに教えてもらってて。で、順位があがったから、すごく喜んでくれて…あぁなった」


「なんと、だから敬真氏は80位内に入っていたのでござるか!」


「うん、そういうこと。だから…」


「理解したでござる!学校1の美少女という彼女もでき、勉強も教えてもらって!率直にいって、ベスト・オブ・リア充の極みでござる!」


「いや、ベストと極み被ってるし。うーん、彼女ではないと思うのだけど」


「なんと!お弁当を食べさせあって、その様を全校生徒に見せつけておいて、ハートなオーラを散々出しておいて!それで、つきあっておらぬと…わが友人ながら、敬真氏は最悪のホストクズ野郎でござった!」


「雅臣、やめて。さすがに、ちょっと傷つきそうだから」


 万流軟拳では、突きや蹴りは流せても、人から受ける言葉なんかは流せない。


「すまんでござる。ホストクズはさすがに冗談でござるが…なぜ付き合わぬので?」


「付き合うって、いまいち良くわからなくて。今まで恋とかもしたことないから、なんて言うか自信がないんだ」


「姫宮殿と一緒にいてドキドキしないでござるか?」


「するよ」


「姫宮殿を独り占めしたいと思わないでござるか?」


「うーん…」


「想像するでござる。姫宮殿のお弁当を別の男が食べ、ハグを別の誰かがするのでござるぞ?」


「あ…雅臣、僕すごくイライラしてきた」


「おうふ、敬真氏、顔が!全体が恐いでござる!」


「ふぅ…ご、ごめん」


「ドキドキして、他の誰にも渡したくないと思ったのなら、それが恋でいいのでござるよ。拙者も地下アイドルの握手ハグ会ではいつもドキドキしっぱなしでござる」


「え?一緒なの!?」


「恋にもいろいろあるでござる。拙者の恋はお金がかかるだけでござるよ。拙者が言えるのは、敬真氏は間違いなく恋をしており、後は告白すれば、晴れてカップルでござるよ」


「なんか、雅臣がかっこよく見えるよ」


「ふふふ、伊達にCDを買いまくってないでござるよ。今度地下アイドルのライブ一緒にいくでござるか?」


「いや、この流れで誘ってくるってどうなの」


 とにかく、雅臣と話すことで僕は自分の気持ちに整理がついた。のはいいのだけど、告白か…。告白ってどうすればいいんだろう?





~姫宮 莉香~



 あたしは友達の愛と絵美と3人で、週に2回くらい放課後に近くのマスバーガーで話をしている、最近はあたしが敬真くんと勉強しているのが続いたから、今日は久しぶりだ。愛も絵美も中学からの友達で、3人ともギャルファッションが好きで話も合うから、気兼ねなく話せるのが楽しい。


「莉香もすっかり付き合い悪くなったよねー、私も絵美も置いてけぼりじゃん」


「愛、ごめんって。もうちょっと3人の時間とるようにするから」


「そうだよねー。昼も3日に1回は拳法君とお弁当だもんね」


「ってか莉香、よく続くよね。まめだわー。恋パワーやばいw」


「美味しそうに食べてくれるから…ついね」


「すごいよねー、私達それなりに長いけど、莉香がこんなになるって初めてだよね」


「そんなに拳法君いいの?私は背がもっと高い方がいいんだけど」


「背は確かにあたしと同じくらいなんだけど、なんかね頼りになるの。敬真くんの師匠みたいな人がいるんだけど、教えてる内容がすごくて、なんかやばい経験いろいろしてるらしいし」


 特に止められてもいなかったから、あたしは敬真くんに聞いた師匠の話を、2人にも教えて上げた。


「やばいwww師匠、狩人か何か?えぐすぎwww」


「拳法君、イノシシ倒すとかwww」


 ひとしきり笑ったところで、2人から真剣な顔で聞かれた。


「で?莉香、拳法君から告白はされたの?」


「…まだ」


「はぁ~!?拳法君それでも男かよっ!?」


「まじかー…莉香がからみはじめてから2ヵ月くらい経ってんじゃん!?え、普通、男子って、もっとがっつくもんじゃないの?」


「あたし、魅力ないのかなぁ?」


「っんなわけないじゃん!」


「ってか、拳法君はゲイとか、そういう可能性は?」


「あたしの胸とか脚とかみてるから…大丈夫だと思う…」


「そかー。あれか、自分に自信ないんじゃない?オタク系草食にありがちな感じで」


「目をあわせて普通に喋るし、オドオドも別にしてないから自信がないタイプとも違う気がする」


「じゃああれか、莉香も何かと騒がれる系だから、莉香に気後れしてるんじゃね?」


「あーそれはありえるかも。2人でお弁当食べてるときの周囲の男子やばいし。歯ぎしりみたいの響いてるときまであるww」


「もうさー、莉香から告ってもいいんじゃない?」


「上手くいくと思う?」


「「いくっしょ!」」


「そっかー、そだね♪うん!愛、絵美ありがとー!」


「「どういたましー」」


「あー莉香さ、拳法君とからみはじめてからけっこう経つし、そろそろ気をつけておいたほうがイイかも。カレカノになってないんだったら、なおさら絶対あの女ちょっかい出してくるから」


「「「月浦瑠々」」」


 その名前が出て、あたしは正直嫌な気分になった。中学の頃から、あたし達、特にあたしに対して嫌なからみばっかりしてくる、言葉は悪いけど、すごく“うざい”女だ。





 放課後、僕は告られていた。HRが終わって莉香さんが来る前に、1人の女子に僕は呼び出された。もちろん知らない女子なんだけど、2人のことで大事な話があるからという理由だ。呼び出されたのは屋上の手前の階段の踊り場だった。


「えっと、花村君、来てくれてありがとね」


 潤んだ目で僕を見るその女のこの第1印象は、とにかく胸が大きいということだった。暴力的と言えるほどの大ボリューム。胸以外は体型は普通だから、よけいにこれでもかってくらいに目に入ってくる。しかも胸の前で手をグーにしてあわせてる。


 ツインテールにしたきれいな黒髪に、莉香さんにも負けないくらいの白い肌。たれ目がちの目は大きくて、瞳も黒かった。ピンク色の唇から出てきた言葉は、萌えキャラというか、そういう感じのアニメみたいな声だった。


「えっと…」


「わたし、瑠々。月浦瑠々だよ」


「えっと月浦さん、それで…」


「瑠々って呼んで」


「いや、月浦さん」


「瑠々…」


「月浦さんで」


 僕はしっかりと言い切る。莉香さんとも同じような会話をして押し切られたけど、僕はなぜだか目の前の女のこを下の名前で呼びたくなかった。


「それで?大事な話というのは…?」


「うん、瑠々ね。前から花村君のこといいなって思ってて…えへへ」


「そ、そうなんだ…でも、からみないよね」


「ずっと見てるだけだったの…瑠々、恥ずかしがり屋なの…」


「そ、それで……?」


 自分で言うのかと思いながら、僕は続きを促した。


「瑠々ね、花村君のことが好きなの…。花村君、瑠々と付き合ってください!」


 月浦さんは腕にぎゅっと縮めて、大きな胸をさらに寄せながら僕を見る。そして、ほぅと吐息を吐くと、小さな声で囁いた。


「……付き合ってくれたら、瑠々のおっぱい、花村君の好きなようにしていいよ。もちろん、その先だってしたいこと、何でもしていいから……」




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