「あの、料理はまだですか？」

おはなし

　その子の言葉を信じるなら、これは実際に起きた話だよ。

　小学生の頃、交換日記が流行ったの、覚えてる？

　プロフィール帳ってあったじゃない。

　あの、小さな紙に個人情報書き込むやつ。

　そうそう、今じゃ考えられないよね。

　私、多分、そのプロフの延長で、ブームが再燃したんだと思うの。

　そっ。

　交換日記、のね。

　ちっちゃい時ってさ、

「流行に乗る」「友達を作る」

　……なんてことで、偉さが決まるみたいなところがあるじゃん。

　その子はね、特別親しい友達が居た訳じゃなかったから、気乗りはしなかったんだけど……。

　交換日記をしていないだけで悪目立ちしたから、仕方なく相手を作って、やってみたんだって。

　相手の子は、……仮にAにするね。

　Aは、見た目は可愛い子。

　でも、生意気なところがあるっていうか、ちょっとおマセな子。

　友達は少ないけど、彼氏がいたから、日記の内容は大体惚気だったみたい。

　小学生なのに、すごいよね。

　でも、ある時。

　Aがこんなことを、日記に告白してきたの。

『彼氏は嘘。

　本当はいない。

　もう日記に書くのもやめる』

　実はその彼氏はAが見栄を張るために作った、架空の存在だったんだって。

　イマジナリーフレンド、とはちょっと違うのかな？

　兎に角、本当は存在しないはずのAの彼氏。

　なのに、嘘の話をしている内に、親や友達が、彼氏を見たって言うようになったんだって。

　それを読んだ友達はどうしたと思う？

　捨てちゃったの。

　交換日記。

　どうして？

　幻滅したから？

　あはは、違う、違うよ。

　……ほら、言ったでしょ、私。

　相手を『作った』って。

　実はね、Aも、友達が作った架空の存在だったの。

　なのに、そんな知らないところで、その子の意思じゃないことが書いてあったから。

　気味が悪くなったんだって。