洗脳 幸子

第4話 私の家族

ここで　私の家族を紹介しようと思う。

長女のフミ。

私達が産まれるまで　うんとかわいがられてきた長女である。

自分がしたい習い事も　ほぼ制覇したようだ。

お婆ちゃんにも　お爺ちゃんにも　親戚からも幸せをもらっていたお姉ちゃん。

ちなみに私は　お婆ちゃんの顔しか知らない。

お爺ちゃんの顔を知って　愛情をもらっていたのはお姉ちゃんだけだ。

一人っ子を満喫していたお姉ちゃんの前に現れたのは　待望の次男　タツ。

お兄ちゃんが産まれた事によって　お姉ちゃんの人生も一変する。

「あの頃は　本当に憎くて仕方がなかった」

と小さいときの頃を　お姉ちゃんはよく話していた。

全て自分が一番だったのに　二番目に格下げされたお姉ちゃん。

とある日。

ようやく歩けるようになったお兄ちゃんを　階段から突き落とそうと何度か妄想

していたと言う。

今となっては笑い話だが　今書くとゾっとする話だ。

そして待望の次男はと言うと　それはもう家系を継ぐものとして

お姉ちゃんよりも　数倍可愛がられてきた。

きたと言ったら変かな。

今でも溺愛だ。

何をしても　何をされても

かならず　お兄ちゃんをかばう母。

あの鬼のような顔は　お兄ちゃんの前だけ天使に豹変する。

そして　中々登場しなかった父。

昔の父はとても口数が少なく　お酒とタバコが大好きで

酔っては暴れ狂い　タンスやコタツをひっくり返して家を出ていくといった行動を何度も繰り返していたのを覚えている。

母にはとてもあたりが強く　子供には　近すぎずの距離感で接していた。

一番　無難で

一番　怒った時が怖い存在だ。

けど小さい頃は　父が一番よき理解者だと思っていた。

怖かったけど　母みたいに理不尽な怒り方はしない。

本当にダメな時だけ　怒ってくれる。

そんな存在の父が　いつも家にいてくれたら

もしかしたら　私もここまで病気が悪化しなかったかもしれない。

父は　月に数回　出張で家を空ける事が多かった。

父の事が大嫌いな母は

「あぁー、せいせいする」

と言って　父をいつも見送っていた。

だから　仕事に行く前も喧嘩は絶えない。

なんで母は　いつもいつも人を怒らせるような言葉を人に投げかけるんだろう？

小さい頃の私でさえ　そう思った。

これが　私の家族です。

たぶん　この中で一番ましだと思えるのはお兄ちゃん。

そう思った人も多いと思う。

だけど私の中で　ましな存在などいません。

父も母　お兄ちゃんもお姉ちゃんも

もしかしたら私も　異常者であり　洗脳家族なのだ。