第34話 デスペリア
「スタァァァァァァァァーーーーズ!!!!!」
巨体の男、デスペリアは両腕に対戦車ライフルを掲げこの私に一斉に銃弾を放つ。
「おいおい。対戦車ライフル二丁持ちかよ」
アーマー内のスピーカー越しにスナイダーの声が聞こえる。二丁の銃口から放たれた銃弾は私の鋼鉄の身体に次々と被弾する。私はX字に両腕をクロスさせ攻撃に耐える。両のライフルを撃ち尽くしたデスペリアは片方のライフルをヒョイと放り捨てるともう片方のライフルを両手で逆に持ち私に向かってダッシュし野球のフルスイングのように私の身体に叩きつける。ライフルは粉々に四散し私は思わず姿勢を崩す。
「例の物を早く持って来い!!」
デスペリアは手下に向かって叫ぶ。体勢を立て直した私は奴に鋼鉄の拳を叩き込む。豪速球を受け止めるキャッチャーのように奴はそれを手の平で掴んでみせる。なるほど、すさまじい怪力ぶりだ。もう片方の拳を叩き込むも奴もそれも受け止めてみせる。
そうこうしてるうちにデスペリアの手下が金属製の頑丈そうなケースを持って車に乗り込む。あれが研究所から奪取された貴重な研究サンプルとやらか。あれを奪い返すのが今回の任務だ。
何とかケースのもとへと行きたいが私の両手をつかむデスペリアが私の腹部に蹴りをお見舞いする。私は吹き飛ばされ廃工場内の埃まみれの何に使っていたのかわからない機械に叩きつけられる。
常人であればその衝撃で身体中の臓器が潰れ骨という骨が砕け散り命は無いだろう。アーマー内からはかすかに血の匂いが漂う。気づくと口腔内から出血してる。だが私の治癒能力であればすぐ治ってしまう。先ほどの衝撃でアーマー内のヴィジョンがノイズ混じりに乱れる。
デスペリアが倒れている私に向かって歩み寄る。私はその顎めがけて脚を思い切り蹴り上げそのまま宙を一回転して着地する。キロ数が3桁台の鋼鉄のアーマーを全身に装着した状態でこんな芸当ができるのも私くらいだろう。不意打ちを食らった奴はよろけて後ずさりする。私は対戦相手をリングのコーナーに追い詰めたときのボクサーのごとくパンチの連打を奴に浴びせていく。さすがのデスペリアも鋼鉄の拳によるパンチの応酬を食らいよろよろになっていく。
「ッオオオオッ!!」
デスペリアは雄叫びをあげ私の下半身にタックルしそのまま押し倒す。あれだけの打撃を受けながら全く見上げた体力だ。デスペリアはそのまま私の両足を両腕でガッチリとつかむとジャイアントスイングで投げ飛ばす。私の身体はコンクリート製の図太い柱に思いきり叩きつけられる。やれやれ吹っ飛ばされるのは今日で何度目だ。私は野球ボールじゃない。デスペリアは廃工場の閉まったシャッターの下に手を入れ力任せに開く。
「ボス!持ってきました!」
奴の手下が金属製のケースを手に廃工場内に止められたトラックに乗り込む。トラックは急発進する。でデスペリアは私は手放した軽機関銃を見つけるとそれを拾い上げる。
「これはなかなか良さそうだ。貰っておくぞ」
と言いトラックの荷台に乗り込む。トラックはそのまま廃工場内から発信し逃走する。この廃工場の周囲が米兵たちが待ち構えているはずだ。私の方はここの探索とするか。この廃工場は二階建てになっている。私は錆びついた鉄の階段を登っていく。階段を登りきると先ほど私の銃撃を脚に受け身動きが取れない手下の男を見つける。こいつは尋問には持ってこいのようだ。奴はサブアームとして装備していた拳銃を私に向けて連射するがこの鋼鉄の身体にそんなものは効きっこない。私はそのまま奴を抱え上げる。
「おい!離せ!クソ野郎!」
と両足をバタバタさせるがそんなことは知ったことか。私は奴に軽く頭突きをお見舞いする。カンッ!という音が響き男は意識を失い静かになる。二階の奥の部屋では椅子に縛り付けられた3名の研究所から人質として科学者が見つかった。音声による報告によるとデスペリアは例の軽機関銃を乱射しながら防衛ラインを突破し逃走したらしい。肝心なものは逃したが人質は確保出来た。これだけが今回の任務の成果と言えよう。
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