第16話 アザーズ

 俺の登場以来、世の中は急速に変わっていった。憲法改正の際は国会において与党議員と野党議員がほぼ乱闘状態になり逮捕者も出たようだが俺は知らない。その後、核武装、在日米軍撤退と重要な事が変わっていったが俺はぼんやりとテレビの報道を眺めるだけだった。俺は政治のことはよくわからない。そういえば思い出したが前回、会場で俺の銃を放った男だが警官を襲撃して拳銃を奪ったらしい。今は入院中で警察による聴取を受けているらしいが選挙は不正に操作されてるとか電波なことを口走ってるらしい。


 俺の前で俺の世話係の馬虎ばとらさんは器用に上品な手つきでナイフでリンゴの皮を剥いている。俺は我慢出来ず卓上に置いてあるリンゴにそのままかぶりつく。馬虎さんを俺をジロリと見てこう言う。


「はしたないですよ。今、切ってますからちょっと待って」


 馬寅さんは日本政府が用意してくれた俺の世話係だ。以前は皇居で働いていたらしい。どうりで全てが完璧なわけだ。ここは大乃島おおのじま。千石諸島のひとつの島だ。千石諸島は主にこの大乃島、西南島せいなんとう、樫実島かしみじまの三島で構成されている。ここに俺を置けば防衛上、抑止力になるし人里離れてるし隔離という点でも一石二鳥ということだろう。


 千石諸島は以前は人里ある島々だったが住人は誰一人いない孤島と化している。俺がいるこの大乃島も飛びながら色々と見てまわってみたが確かに集落はあったがいずれも廃墟と化して人の息吹は感じられなかった。そんな孤島であるが日本政府は色々と計らってくれた。ネット環境完備、テレビも地上波、デジタル放送いずれも視聴出来る。俺は普段は地下施設で暮らしてる。日光が届かないのが難だがパトロール時に思う存分浴びられる。出動要請が来た時は地下から地上へ繋がる射出口が開きそこから出撃する。


 ここは超人総合研究所。略して超総研と呼ばれる事が多い。今日も丘学人が色々とテストがしたいと言うのでこうして呼び出されてる。今日は菅涼子も同席していた。テスト中にふと俺は気になり丘学人にたずねる。


「しかし、ちと大げさ過ぎやしないか?超人総合研究所って。超人なんて俺以外にいやしないってのに」


 俺は前から思っていた疑問を口にする。それを聞いた丘学人は俯き何やら考え込む仕草を見せた。


「菅さん。ここいらで彼にも伝えてももう良いんじゃないかな?」


 それを聞いた菅涼子目を泳がせ固まる。


「おい、何なんだよ。お前ら」


「力人くん」


 丘学人が口を開く。やや間を置いて奴はこう言った。


「今まで黙っていたけど実は超人は君以外にもいるんだ」

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