第12話 スーパーヒーローはじめました

 こいつとの馴れ初めは思い出したくもない。丘学人。第9話では声だけの出演だったが。今回からはガッツリと出てくる。


「彼は丘学人博士。まだ若いけど天才的な非常に優秀な研究者よ」


 菅凉子が紹介する。


「天才だなんて。過大評価も良いところですよ」


 丘学人が眠たげな目で言う。その眼鏡をかけた目元についた目やにに起きがけのままに来たに違いないボサボサ頭。こいつの辞書にスキンケアやスタイリングの文字はまず無いと思った方が良さそうだ。こいつが俺の研究担当?悪い冗談もほどほどにしてくれ。ここは白衣姿でありながら胸の谷間を露出させたセクシーな巨乳の眼鏡美人の女科学者を出すべきだろう。それが何で一体こんなチー牛をわざわざ出してくるんだ。


「まずはあなたの身体がどうなってるか色々と調べさせて欲しいの」


 菅凉子が言う。続けて丘学人が蚊の鳴くような声で


「よろしくお願いします・・・」


と呟く。


 俺の脳裏では幻想の胸の谷間を露出させたセクシーな巨乳の眼鏡美人の女の科学者が微笑んでいた。


 そんな俺は溶接用マスクを顔面に装着した丘学人にアーク溶接機を皮膚に当てられてる。すさまじい火花が飛び散る。丘学人が興奮気味に叫ぶ。ここんとこガスバーナーで焼かれたり散々な目にあってる。


「本当に信じられない!君はこれでも全く何も感じないのかい!?」


「てめえみたいなチー牛への嫌悪感以外は何も感じねえよ!」


「そりゃあすごい!」


 丘学人が叫ぶ。こいつもなかなかのマッドサイエンティストだ。


 というわけでここは自衛隊基地だ。


「どの辺りを狙って撃てばよろしいでしょうか?」


 迷彩服の自衛官のおっさんが拳銃を手にやや困惑気味に言う。


「力人君。ちょっと右手を高く掲げてみてくれ」


 丘学人は言う。こいついつから俺を慣れ慣れしくファーストネームで呼ぶようになったんだ?


「こう?」


 俺は右手を高く掲げてみせる。


「そうそう。そんな感じ。それではよろしくお願いします」


「本当によろしいのでしょうか?」


 自衛官のおっさんは拳銃を握りしめながら確認する。


「ご遠慮なさらずに。力人君からも言ってくれ!」


 丘学人が叫ぶ。俺はかったるげに言う。


「どこでもいいんで撃っちゃってください」


「まずは彼の右手の手のひら。そこを狙って発泡してください」


「わかりました・・・」


 自衛官のおっさんは拳銃を構え俺の右手に照準を合わせる。


「葛城自衛官は射撃の名手だ。狙いは決して外さない!」


 丘学人はこう言うがそんな事はどうでもいい。どこに当たろうが関係ない。俺はとにかく早く帰りたいだけだ。 


「それじゃあお願いします!」


 自衛官のおっさんがパンパンと発砲とする。前からわかっていたことだが銃弾は俺の手を貫通などするわけもなく次々と弾き返されていく。


「だからどこでも良いって言ったじゃん」


 自衛官のおっさんは今度は俺の全身に容赦なく弾丸を浴びせてくるが結果はやはり同じである。


「今度はライフルで試してみては?」


 おっさん何かノリノリになってきてないか?だが結果は同じである。のび太がドラえもんのどの道具を使おうが結果的に毎回、失敗するようにライフル、機関銃と道具が変わろうと俺の身体は攻撃を跳ね返していった。


「中国海軍の奴らと戦った時もそうだったんだけど俺の身体はいくら攻撃を受けても大丈夫なんだが衣服がボロボロになっちまうのが何とも困る」


 俺は丘学人に愚痴る。やつはしばし考えた後こう言った。


「力人くん、君の髪の毛を少しばかり抜いてもらって僕にくれないか?」






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