第10話

取り調べは続いた。

二日酔いもようやく醒め、私はだんだん、記憶を取り戻してきた。

私はテレビドラマに出る……


そうか、そうだった……


私はすべてを思い出した。



美織がテレビドラマに出るなんて悔しい……

一緒に女優を目指してきたのに、美織だけ認められて、私は認められないなんて悔しい……


「演じている、と思われるようでは女優としてはまだまだ。その役そのものだと思われるようでないと」


その言葉を私も美織も、いつも口にしていた。


私は美織に憧れていた……

私も美織のように、女優として輝かしい人生を歩みたい……



私は、榛名美織を演じていた。

いや、演じているようではだめなのだ。

私は榛名美織になりきっていた。



美織のマネージャーの連絡先なんて、私の携帯に入っているわけがない。

自分の電話番号やメールアドレスをアドレス帳に入れていないのも当たり前だ。

チーフから電話がかかってきていた。

そっか、あれ、私のバイト先のチーフからだったんだ。


そうだった。

私は坂川由香だ。

私は、自分の昨夜の犯行を、すべて、はっきりと思い出した……


《 終 》

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新人女優 取り違え殺人事件 神楽堂 @haiho_

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