第7話

火事は本当だった……

私の部屋は全焼していた。

幸いにも、隣部屋への延焼はそれほどでもなかった。

しかし、この後、私は火事の責任を負わされるのだろうか?


ん?

私は死んだことになっている。

このままにしておけば、私は責任から逃れられる?


いや、そんなことはない。

私はこれからも榛名美織として生きていかないといけない。

私は榛名美織であり、生きているということをどこかでカミングアウトしなくては。



私の部屋は、まだ警察や消防が現場検証をしていて、近づくことができなかった。

そこ、私の部屋なんです……と言いたかったが、言える雰囲気ではなかった。


部屋を失い、私には居場所がなかった。


とりあえず、由香の部屋に帰ろう……

由香に会って、昨夜のことを聞こう。

それしか方法がない。


なにせ、今、私が警察に行ったところで、提供できる情報は何もないのだ。

昨夜の記憶がまったくないからだ。



私は由香の部屋に戻ってきた。

由香は、まだ帰ってきていない。


由香は生きているのか?

焼死体は、実は由香なのではないか?

それとも、由香は殺人や放火の犯人であり、現在逃走中なのか?

あるいは、別の犯人がいて、由香も被害者なのか?

情報が少なすぎて、これ以上、推理することは不可能だった。



シャワーを浴びたい……

由香の部屋の浴室を借りよう。

以前は私もこの部屋に住んでいたのだ。

使い勝手はよくわかっている。



私は浴室のドアを開いた。



私は声にならない悲鳴を上げた。

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