第3話

昨日、由香と飲みながら話した内容を、私は思い出してみた。


「私も明日、仕事があるんだ」


そう言っていた。

となると、由香はもう、アルバイトに行ったのかもしれない。

そうならそうで、置手紙でも残してくれたよかったのに……


いや、泊めてもらった立場だ。

そんな贅沢は言っていられない。


ん?!


私にも何か、大事な用事があったことを思い出した。


そうだ、今日はテレビ局の人と撮影の打ち合わせをするんだった!

時間は? 集合場所は?

急いで確認しないと。


私は、携帯電話を取り出し、マネージャーさんに電話することにした。



あれ?



マネージャーさんの連絡先が、携帯に入っていない!



アドレス帳や通話履歴を見てみる。

ちゃんと、他の人の番号やメールアドレスは表示されている。

なのに、マネージャーさんのデータだけがどこにも見当たらない。


電話番号やメールアドレスは、暗記なんてしていないので、携帯のデータがないとまったくどうにもならない。


どうして、マネージャーさんのデータだけ、ないのだろう?

自分で消したのか?


そんなはずはない。

別にマネージャーさんとケンカしたわけでもないし、第一、大きな仕事が控えているのだから、連絡できなくなると困るのは私だ。


ん?

困るのは私?

まさか……



由香が消したのか?!


これはあり得る話であった。

由香は、小さな劇団の脇役をやっているが、大きな仕事はまだ来ていない。

なので、アルバイトをして生計を立てていた。

一方、私は舞台でも成功し、そして今日からはテレビのお仕事もある。



由香は、私に嫉妬して嫌がらせをした?!



親友の由香がそんなことをするだろうか?

由香はいつ帰ってくるのか分からない。

しかし、本人に聞いて確かめるのが一番だ。

私は携帯で由香と連絡を取ることにした。

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