第2話

目が覚めると、私はなぜか、由香の部屋にいた。

昨夜、私は自分の部屋で由香と飲んでいたはず。

どうして私は、由香の部屋にいるのだろう?


あの後、外に飲みに出たのだろうか?

そして、自室には帰らず、由香の部屋に泊めさせてもらったのだろうか?

そう考えれば辻褄が合うが、いかんせん、そんな記憶はない。


なぜか私は、由香の服を着ている。

服を借りたのだろうか?

やはり、そんな記憶はない。

となると、由香が着替えさせてくれたのか?

由香にそんな手間をかけさせてしまったのだろうか?

なんだか申し訳ない。



ズキン!

……頭が痛い……



私は飲み過ぎていた。

吐き気もある。

昨夜の記憶が全くない。



私は再び、由香の部屋を見渡した。

由香はいない。


……由香の部屋か……


数年前、私、榛名美織はるなみおりは、女優を目指し、親友の坂川由香さかがわゆかと一緒に上京してきた。

経済的に苦しかったので、この部屋を借りて、由香と二人で住んでいたのだった。

この部屋には、由香と一緒に暮らしてきた思い出がある。

なので、部屋のどこに何が置いてあるか、だいたい分かる。



私は由香と一緒に暮らしてきたが、数年前、私の方が先に舞台女優として芽を出すことに成功した。

小さい公演では私は主役を任されるようになった。

アルバイト以外に、女優のお仕事でも給料が入るようになり、経済的に豊かになってきた私は、由香との同居を辞め、もっと上質な部屋を借りて住むようになった。

なので、この部屋に私は今、住んでいない。

由香だけが引き続き、この部屋に残って住んでいる。


由香と仲が悪くなったわけではない。

別居してからも、何かあれば一緒に行動してきた。

昨夜だって、私のテレビドラマ出演決定をお祝いしに由香は来てくれた。

私たちは、志を共にした親友だ。

この先もずっと、仲良くやっていけると思っている。


それにしても、由香はいったいどこに行ったのだろう?


ひょっとして、朝食などを買いに、外に出たのかもしれない。

しかし、いくら待てども、由香は帰ってこなかった。


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