新たな発展
両親が楽しそうにやっていけている事を聞いて、ちょっとホームシックになりながらも俺達は村の拡張工事に取りかかることとなった。
先ず最初にやるべき事は木々の伐採。
村の中に木があってもいいのだが、さすがにこの森の量は多いので幾らか間引くのである。
次いでに現在の確保になって一石二鳥だ。資源は余すことなく使った方がいい。
これは俺達だけで済ませた。
できる限り早く木々を撤去して、魔物が来る前に終わらせる必要があったためである。
最近はかなり安全になったとは言えど、この村のある場所は割と危険な魔物が多い。
俺やエレノア、ウルや師匠のような化け物じみた強さを持つ者達ならば関係の無い話だが、村の悪魔達が魔物に襲われると下手をすれば死ぬのだ。
被害を出してまでやる作業では無いので、俺たちが代わりにやる。
全員魔術が使える上に、そもそも肉体的にもかなり優れているため、木々の撤去はそこまで時間が掛からず終えることが出来た。
100本以上の木を引っこ抜くのは疲れたけど、こう言う仕事もたまには悪くない。
昔、冒険者になりたての頃におばちゃんの家の草取りの依頼を受けたことを思い出したな。
あの愉快で面白いおばちゃんは、今も尚健在で週に一度ぐらいの頻度でうちの店に来ているらしい。
俺があちこちで店の宣伝をしまくったおかげで、冒険者たち以外からも愛される店になって俺は嬉しいよ。
親父とお袋の作る料理は、世界一だと胸を張って言えるからな。
「これでよし。加工は任せるよボニーさん」
「はい!!お任せ下さい!!先生方に教わった魔術を駆使して、色々と材料を作っておきます!!」
根っこごと撤去した木は、家を建てる材料に再利用される。
その加工を担うのがボニーさん達の魔術部隊だ。
魔術はほぼ全ての悪魔たちが使えるが、その中でもそれなりに熟練した悪魔達が選抜されている。
第四級魔術が使えるぐらいの悪魔たちが主戦力かな。後は、こう言う加工に適した権能を持った悪魔とか。
凄いよね。木を切る権能を持った悪魔とかいるんだから。ピンポイント過ぎないか?その能力とは思うが、スキルなども割とそんな感じなので似たようなものかもしれない。
「で、次が壁の設置だな。師匠は南側をお願いできる?」
「フハハハハ!!可愛い弟子のお願い事は聞いてやらんとな!!任せておけ。ガッチガチの魔術で補強したやつを建ててくるわ!!」
「いや、ちゃんと説明した通りにやってね?悪魔たちが後で修理とかできるようにするんだから........デモット、ちょっと心配だからついて行って貰っていいか?」
「分かりました。変なことをしていたら止めますね」
「頼んだよ」
場所が確保出来たら、次は壁だ。
悪魔の村を魔物たちから守るための壁。大体トリケラプスが突っ込んでも問題がないほどに固くしておく必要がある。
この村、割とトリケラプスとか小型の魔物が突っ込んでくるんだよな。昔はそれによる被害が多くて、ウルも頭を悩ませていたんだとか。
今となっては、魔術1つでお手軽に堅牢な壁を作ることが出来る。
師匠が張り切って、さらにガッチガチの硬いやつを作ろうとしていたが。
デモット、師匠がバカやらかさないように見ておいてね。あの人、俺達にいい所を見せたいからとか言って、たまに変なことやらかすから。
俺もエレノアも弟子を持って、師匠の気持ちが少しばかり分かるようになった。
弟子にはいい格好をしたいのが師という物。しかし、弟子はあまりそこら辺は気にしていないのである。
弟子と師匠。両方の立場に立ったことがあるから分かるが、師を尊敬する時と言うのはふとした時に必要な教えをくれる時とかそういうのなのだ。
見え透いた張り切りというのは、逆に呆れられる。
「ふふっ、ノアの奴ジーク達にいい所を見せたいみたいだな。あぁ言う子供じみた所は本当に昔から変わっていない」
「はいはい。分かったからウルは周辺の安全確保をお願いね」
そして、そんな師匠を見て師匠ガチ勢ことウルが、楽しそうに微笑む。
貴方は師匠が何をやっても肯定するからちょっと離れてて。全肯定ウルちゃんはお呼びでは無いのだ。
こうして、師匠や土魔術が使える悪魔達と共に壁を建設していく。
ウルとガレンさんは周囲の安全確保を任せ、更に念の為天魔くんちゃんも出しておいた。
壁の建造を始めて数時間後、ようやく壁ができ上がる。
あまり俺達がやりすぎても悪魔達の為にならないとして、少ない範囲だけ建てて残りは監督を務めたから時間が掛かってしまったな。
しかし、これで村の輪郭が出来上がった。後は家を作り、周囲を隠蔽すれば最低限の村が完成する。
「よーし、それじゃ結界を作動させようか。ボニーさん達は結界の準備、それ以外は家の建築かな?」
「いよいよ私達の努力が実るのですね!!」
「そうだよ。よく頑張ったね」
「ふふっ、一から魔術を学んだにしてはかなり早い魔術開発だったわ。私やジークが魔術を学んでから、新たに開発を始めるよりも早いんじゃないかしら?ジークの場合は完全に独学で魔術開発をしていたから、遅いのは仕方がないけどね」
「闇狼君作るだけでもめちゃんこ時間かかったからな........当時は何故牙だけ物理的干渉力を持ったのかも分からなかったし........」
作った当時、魔法陣への知識が不足しており何故か牙だ物理的干渉力を持って生まれた闇狼君。
原因は、一部に闇人形と同じ物理非干渉の魔法陣が組み込まれていた事だったのだが、当時の俺がそれを知る由もない。
今となっては色々と改良されて、全身モッフモフの狼くんだけどね。
モフモフしたい時は、呼び出してお腹の辺りに顔から突っ込む。
それを見ていたエレノアが、“狼の赤ちゃん見たい”と言った為俺の中では闇狼くんはマッマのような存在だったりする。
モフモフのマッマとか最高かよ。
ちなみに、闇狼くんも何となくそのことを察したのか、偶に母親のように俺の頬を舐めたりして息子を可愛がるような仕草を取ってくれるのだ。
その仕草が、お袋が俺の頬に自分の頬を合わせるような感じなのがまた母っぽい。
なお、エレノアも闇狼くんはマッマとして扱っていたりする。
2人で闇狼君のお腹をモフモフしながら、安らいでいる時の絵面は多分相当酷い。
それこそ、人に見せられないレベルで。
「ここをこうして........」
「おい、そこ間違えてるぞ」
「あ、悪ぃ。前の魔法陣だったなこれは」
そんな闇狼くんが俺たちのモフモフなマッマの役割を果たしている事を思い出していると、悪魔たちが着々と魔法陣を形成していく。
分かるよ。修正前の魔法陣を描く時とかあるよね。
俺もそれでやらかして、1回思いっきりリエリーした事あるし。
当時は師匠の家で修行していたのだが、師匠も笑っていたよ。“絶対にやると思ってた!!”とからかわれた。
日が沈み始めた頃、ようやく魔法陣が完成する。
地面に刻み込んだ魔法陣。それを保護するために周囲には祭壇のようになっており、さらに魔術をいくつも掛け合わせて強固な結界を張っている。
これも悪魔たちが作った魔術だ。いや、正確には元々あった魔術を魔道具に改変したものである。
俺達よりも魔道具に関しては悪魔達の方が上かもな。俺もエレノアも、魔道具は作ったことないし。
「それでは、行きます!!」
魔法陣が出来上がり、代表を務めるボニーさんが魔法陣に魔力を流す。
すると、村の周囲に魔力の結界が出現し、無事に起動に成功した。
“わぁ!!”と盛り上がる悪魔達。
俺とエレノアは村の新たな発展を見届けた唯一の人類として、悪魔たちと一緒に喜ぶのであった。
後書き。
闇狼君。キャラ付けされまくって結果的にマッマになる。なお、本人も満更でもない模様。
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