シューティング‼︎
リエリーのやっている事がかなりヤバいと言うことを改めて認識した俺達は、翌日再び南の大地へと戻ってきてきた。
村と南の大地を行ったり来たり。
転移魔術を作ってから本当にあったこっちに飛び回るようになったよな。
消える氷帝こと、フロストよりも俺たちの方が居場所が掴みにくいかもしれん。
俺はそんなことを思いながら、ついに本格的な狩りを開始した。
南の大地の魔物はあの西の大地と違って、生理的嫌悪感を抱くようなものでは無い。
むしろ、カッコイイからテンションが上がる見た目をしているのだ。
最近は草食恐竜ダンジョンばかり潜っていただけに、新しい魔物を狩るのは新鮮さがある。
結果、狩りはとても楽しいものとなっていた。
「ズドン」
「グギェェェ!!」
「あら、そっちに逃げるのはダメよ?大人しく私達の経験値になりなさい」
「クェェェェ!!」
そんなこんなで始まった狩り。
南の大地の生態系を脅かす存在が降臨したことによって、巨大な森の中で暮らす魔物達は尽く死んでゆく。
一撃で全てを終わらせるような魔術を使ってもいいのだが、今はまだ見ぬ魔物と出会うためにそれは我慢しておいた。
虫はともかく、ロマン溢れる恐竜の見た目をした魔物達は是非ともこの目に収めておきた。
せっかくロマンの塊である恐竜が異世界に転生してきてくれたのだ。
2回目の絶滅を経験する前に、自分自身の目で見てみたいと思うのは自然と言えるだろう。
誰だってそうする。俺だってそうする。
「この森は魔物の種類が豊富で楽しいな。見たことがない魔物が沢山だ。そして、そのどれもがカッコイイ」
「大体似たような見た目が多いけれど、よく見ると違うわよね。人類大陸に住む魔物と違って、魔物の見た目の豊富さは少ないわよ」
「似たような進化を遂げてきたって事だろうな。その形として生まれることが、この魔界においては最適であったというわけだ」
「人類大陸は多種多様な姿をしていても、生き残れるだけの多様性があったということかしらね?」
「だろうな」
魔界の魔物は確かに数多くの種類が存在しているが、その見た目は割と似たようなものが多い。
大きく分けると3つぐらいか?
ティラノサウルスのような骨格をした魔物と、トリケラトプスのような骨格をした魔物、そしてブラキオサウルスのような骨格をした魔物がかなりの割合を占めている。
もちろん、それ以外のまものも存在しているが、この3つの形をした魔物の数が異様に多かった。
まぁ、俺の知る限りでは、恐竜も似たような見た目をしたやつは多かったしな。
大きさは違えど、同じような見た目で紛らわしいやつとか沢山いたし。
ちなみに、人類大陸では二足歩行型の魔物が多い気がする。
ゴブリンにオークにオーガ、それにゴーレム系も二足歩行だな。
人類が大きく発展した大陸では、二足歩行の人型魔物が生き残る上で最適な形であると思われたのだろうか?
もちろん、スライムやウルフなどの人型ではない魔物も多く存在しているので、多様性はあると言えるだろう。
「その環境に合わせた進化を遂げる魔物は多いですからね。ほら、地上では生きていけないと悟った魔物が空を目指したように」
「あぁ。プテラドンか。ほんと、こいつだけはいつでもどこでもいるよな。さすがに見飽きたぞ。あんまり強くないし」
「風の力を使うという点では少し厄介だけど、今の私たちからすれば大したことないものね。ほら、落ちなさい」
エレノアがデコピンをすると、遠く離れた空を飛ぶプテラドンが空中で弾けて空から落ちてくる。
魔力を指で弾く魔術でもなんでもないただの技術でここまでの威力が引き出せるとは、流石はエレノアだ。
その強さで一般人の頭をデコピンしたら、頭パァンってなりそう。
ホラー漫画かな?
「ナイスショット」
「ふふっ、私にかかればこんなものよ」
ちょっとドヤ顔をするエレノアは、褒められて嬉しかったのかさらに続けざまにデコピンを空に向かって放つ。
パァン!!パァン!!パァン!!
群れで移動していたプテラドンが次から次へと撃ち抜かれ、あっという間に群れは地面へと落ちていく。
シューティングゲームをやってるような気分だな。尚、本人のエイムはチートを使っているのかと疑いたくなるぐらいに正確だ。
「凄いですね。あんなに当てられるものなんですか?」
「魔術を使う上で、狙いを定めるというのはとても大切なことよ?ジークだって欠伸をしながらでも出来るわ」
「まぁ出来るっちゃできるけど、そこまで持ち上げるなよ。これで失敗したら恥ずかしいじゃん」
俺はそう言いながら、森の奥に向かって魔力を弾く。
空に飛んでいるプテラドンは消え去ってしまったので、俺が狙うは森の奥で呑気に歩いている魔物だ。
「お、当たったわね。流石はジーク」
「え?何を狙ったんですか?」
「ん?アルバートルス。ほら、あそこの木と木の間を歩いてただろ?」
「........すいません。全然わからないです」
デモットが分からないと言うので、俺達は移動してアルバートルスが倒れている場所に移動。
アルバートルスとは、アルバートサウルスと呼ばれる恐竜にそっくりな見た目をした中型の魔物だ。
強さは大体最上級魔物ぐらい。
インフレしまくった俺とエレノアからすれば、経験値もあまりくれない弱い魔物程度である。
昔話最上級魔物相手に、本気で魔術を行使してたのにね。
今となってはデコピン一つで済むのだから、成長とは恐ろしい。
「これ。あそこの木と木の間から、狙ったんだよ」
「滅茶苦茶細い場所を通してませんかこれ。数センチしか射線が通ってないですよ。しかも、その間を通せるだけの小さな魔力でどうやって殺してるんですか........」
「生物である以上、脳を傷付けられたら生きていけないからな。それを狙った。ほら、目が潰れてるだろ?ここから中に入って、脳を破壊したんだよ」
「それも狙ったんですか?」
「当たり前だろ?狙わないと殺せないんだし」
如何にも余裕ですよと言わんばかりの雰囲気を出している俺だが、実はちょっとだけズルをしている。
デコピンで魔力を弾き、目に攻撃したまでは純粋な射撃能力なのだが、その後脳を破壊するのはちょっとだけ打ち出した弾丸を操っているのだ。
俺は長年の練習で、自身から切り離した魔力をある程度操作出来る。
魔術と言う媒介を使わずとも、その気になれば魔球もびっくりな飛んでも変化球が投げられるのだ。
デモットはその可能性に至ってないが、俺の事をよく知っているエレノアはすぐに気がついて驚いているデモットを楽しそうに見つめている。
ここでネタバラシをせずに、弟子の純粋な心に癒されている辺りエレノアはいい性格をしている。
「ふふっ、ジークならこんなことも出来てしまうのよ。すごいでしょう?」
「凄いです!!流石はジークさんです!!」
「ふふん、そうだろそうだろ。とは言っても脳の破壊はさすがに魔力を操ったけどな」
「へぇーそうなんです........え?そうなんですか?」
一瞬スルーしそうになって、聞き返すデモット。
その驚いた顔はとても可愛かった。
純粋かよ。今どきの子供よりも心が純粋だよ。
「自分の体から切り離した魔力を操るやり方は教えただろ?あれを使ったんだよ」
「えっ、あれってこんなに離れた場所でもできるんですか?しかも、あの速さの中で?」
「慣れればできる。昔もできるには出来たが、今の方が圧倒的に精度がいいな」
「私も練習したわね。懐かしいわ」
「こんな高等技術をサラッと当たり前のように........」
「こればかりは練習あるのみだ。頑張れとしか言いようがない」
「はい!!頑張ります!!」
あぁ。やっぱりデモットの笑顔は眩しすぎる。
俺は、可愛い可愛い純粋無垢な愛弟子の笑顔に浄化されながら、狩りを続けるのであった。
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