辺境伯級悪魔の街
伯爵級悪魔を倒したら次に挑むは辺境伯級悪魔。
段階を踏んで戦おうという事で、俺は天魔くんちゃん達に辺境伯級悪魔の街を探してもらうように命令を出しておく。
魔界の中で真ん中辺りに位置する辺境伯級悪魔。しかし、その数はかなり少ないらしく、この広大な魔界で探すとなるとそれなりに時間がかかるらしい。
東側の大地で暴れ回ってた時にも発見できなかったから、かなに時間がかかりそうだな。
とか思っていたら、割とあっさり見つけてきてしまった。
どうせ見つからんやろとか思っている時に限ってあっさり見つかる。あるあるすぎる。
そして見つけたい時に限って全く見つからないんだよな。
運命とは常に真反対を行くものだと俺は思っている。
「ここが辺境伯級悪魔の街か。伯爵級悪魔の街よりもさらに大きいな」
「そうね。少し都会になった街と言うべきかしら?規模感からして田舎と大差ないけども」
「悪魔達からしたら大都会だぞ?何せ、まともに城壁があって住んでいる悪魔達も倍以上もいるんだからな」
「人類大陸と比べるとどうしてもね」
そんな訳でやってきましたは辺境伯級悪魔の街。
辺境伯級悪魔が治めるこの街は、魔界の中ではかなり賑やかで発展している。
空から見た限り、伯爵級悪魔の街よりも大きく、数多くの建物が並んでいた。
しかし、人類大陸と比べたら、そこら辺の田舎街と大差ない。
ちょっと規模の大きくなった田舎だ。小国の王都よりも規模は小さい。
レルベンの街より少し小さいぐらいかな?俺達が旅に出て初めて訪れた冒険者の街。当時は都会だなーとか思っていたが、全くそんなことは無かったダンジョンのある田舎街である。
アイアンゴーレム君には滅茶苦茶お世話になったものだ。
経験値も貰えるし、魔鉄と呼ばれる値崩れしにくい素材を落としてくれるお陰で今後の旅の資金をかなり調達できた思い出がある。
後、エレノアがすごく楽しそうにはっちゃけてたな。本来熱に強いはずのアイアンゴーレムを燃やし尽くすやべー子が生まれた瞬間でもあった。
また遊びに行こうかな。思い出に浸ってたら、ゴーレムが狩りたくなってきた。
どこかにオリハルコンゴーレム君がまた生まれてたりしないだろうか?そしたら遊びに行ってあげるのに。
「おぉ、ここが辺境伯級悪魔の街ですか。話では知っていますが、見るのは初めてですね」
「ちょっと観光でもしてみるか?今回は住民を募集したりはしないけど」
「4人も増えたものね。暫くは増やさなくてもいいと思うわよ。適当に観光してみましょう。デモットも見てみたいだろうしね」
「いいんですか?」
今回はデモットもつれてきている。
辺境伯級悪魔の街に行くけど来る?と言ったら、“行きたい!!”と目を輝かせたので連れてきたのだ。
知識はあれど、デモットも実際に辺境伯級悪魔の街を見た事はなかったそうで、とても興味深そうに街を見下ろしている。
この後観光して、その話をお爺さんにしてあげると思うとほっこりするな。
デモットとヤーレンお爺さんが話しているのを見ると、どこかほっこりしてしまう。
自分の見てきた世界を話す孫と、それを聞くおじいちゃん。
デモットが楽しそうに話しているだけで、お爺さんも楽しくなるのだ。
もしかしたら、師匠も俺やエレノアが両親と話しているのを見ている時は同じ感情だったのかもしれない。
「あそこが領主の住む屋敷か。伯爵級悪魔の時よりもさらに大きいな」
「領主にとって、自分の住む家というのは一つの権威だものね。みみっちい家には住めないわ。主に舐められるから」
「外交という場がなくとも、民衆に“俺は偉いんだぞ”って示さないといけないんだよな。面倒ったらありゃしない」
「私達のような面倒くさがりには無理な話ね」
「大きい家って落ち着かなくありませんか?広いとソワソワしちゃいます」
「「わかる(わ)」」
無駄に広い家とか俺は落ち着かない。
だから、自分たちの家も一般的な大きさにしているしな。
その気になれば豪邸すら作れたのだが、どうせ使わない部屋が大量に出てくるってことで辞めたし。
客人用の家はさすがに大きめに作ってもらったけど。
また誰か呼んでパーティーとかしたいものである。使わないとなんか勿体無い気がしてしまう。
「さて、それじゃちょこっとだけ観光してみるか。金は........まぁ今回は誰かから貰ってくるか。一日だけ観光するつもりだし、どちらにしても死ぬしな」
「そうね。ガッツリ犯罪だけど、ここは魔界で私たちは人間。それに、今更だしね」
「えぇ........確かにそうですけども」
こうして、俺達は辺境伯級悪魔の街の観光をするのであった。
とりあえず匂いと姿を変えて、空からバレないように侵入するとしよう。
男爵級悪魔の街のように狭く閉鎖的な街と違って、侵入しやすいのはこの街のいい所だな。
【辺境伯級悪魔の街】
伯爵級悪魔の街よりも少し大きい程度の街。ここまで来ると街ごとの特色が大きく現れ、観光もそれなりにできる。
しかし、根本的なところは変わらないため、喧嘩は絶えず治安があまり宜しくない。やはり、強いやつが正義なのだ。
西の大地を侵略する天魔軍団。
その速度は凄まじく、現在西側の森の4割近くを滅ぼしていた。
その中にはもちろんジークの苦手な魔物も含まれており、ジークは見ていないが全人類の敵である黒光りした魔物もいる。
そんな魔物たちを滅ぼすついでに、天魔軍団達は子爵級悪魔以下の街も滅ぼしていた。
「な、何者だ貴様ら!!」
「........(なんで逃がしたの?)」
「........(普通に出力を間違えた。ごめんなさい)」
不幸にも西側の大地に街を構えてしまった子爵級悪魔は、とうじょとして現れた天と魔の使いに驚く。
天魔の力ならば一撃で滅ぼせるはずなのだが、出力を間違えて子爵級悪魔だけ逃してしまった。
ほぼ完璧な天魔とは言えど、ジークを元にして作られた思考を持った魔術。
ごく稀にちょっとしたミスをする事だってある。
「........(さっさと始末する。まだ滅ぼさないといけない主人の敵が残ってる)」
「........(分かってるよ)」
「おい貴様ら、何を変な踊りをしているんだ!!この私が子爵級悪魔ザビ─────」
刹那、子爵級悪魔の頭が消し飛んだ。
天魔は伯爵級悪魔を相手にしてもなお、圧勝できるだけの強さを持つ。
伯爵級と子爵級の間には越えられない壁があり、その壁に阻まれて歩みを止めてしまった悪魔程度、片手間に殺せてしまうのだ。
それこそ、魔術でもなんでもないただの魔力の塊をぶつけるだけで。
頭を失った子爵級悪魔は全く動けず、そのまま空から落ちてゆく。
名乗りすらさせて貰えないほどには、天魔と悪魔の実力差が開いていた。
「........(これでよし。ごめんね。ミスしちゃって)」
「........(大事にはなりませんでしたのでいいですが、主人を失望させてはなりませんよ。私達は常に完璧でなくてはならないのですから)」
「........(分かってるよ気をつける。主人に“使えない”とか言われたら、本当に悲しい)」
天魔の2人はそんなものには見向きもせず、敵となる魔物たちの掃除に戻る。
もう少しで半分だ。あと残り半分を滅ぼせば、主人の敵は全て消え去る。
「........(でも、ちょっと主人に雑に扱われたいかも。いつも優しい主人が、急に私達に冷たくするのって良くない?)」
「........(........それはそれでアリですけども。あの綺麗な顔で見下されるのも悪くないですね)」
こうして、西の大地は滅びていく。
まさか、ジークも天魔達が癖の話をしているとは思いもしないだろう。
後書き。
天魔くんちゃん達に限った話じゃ無いけど、ジークの魔術達の癖はジーク。
ジークならなんでもいい。ジークしか勝たん。
あれ?人で同じような奴がいたような...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます