オリハルコン級冒険者達の交流会


 こうしてオリハルコン級冒険者が集まっていたのは、俺とエレノアの新たな階級を決めるためだったのか。


 自分で言うのもなんだが、俺とエレノアはほかのオリハルコン級冒険者達と比べて圧倒的に強い。


 レベル差だけで言えば3倍近くはあるだろうし、実力だけで言えば計り知れない程の差が生まれているだろう。


 1度リセットされたからね!!(血涙)


 正直、天魔くんちゃんの方がオリハルコン級冒険者達よりも強いのだ。


 絶望級魔物を相手に普通に勝つからねこの子。


 そんな天魔くんちゃんを数百体は用意出来ると考えれば、最早全ての天魔くんちゃんにオリハルコン級冒険者としての称号を与えてやるべきである。


 まぁ、そんなことをしたら一気にオリハルコン級冒険者の格が下がるが。


 そんな訳で、明らかに同じ分類として扱うには規格外すぎるというマリーやリエリーの助言から俺とエレノアの新たな階級の設立が考えられたのだ。


 そういえばそんな話もしてたね。完全に忘れてたけど。


「オリハルコン級冒険者が全員揃えば始めると言っておったから、明日には始まると思うぞ?これで儂も人類最高峰の冒険者では無くなるわけじゃ」

「剣聖は認めてるの?新しい階級の設立に」

「ホッホッホ。認めるも何も、認めざるを得んわい。ここにいるオリハルコン級冒険者全員が束になって掛かっても勝てぬのだぞ?そんなやつを儂らと一緒にするでないわ。儂らがむしろ迷惑じゃろうて」

「全くよん。ジークちゃん達は強すぎるから、それと同じように見られるのは勘弁願いたいわねん。魔術一つでオリハルコン級冒険者を完封できる人と同じ括りにしないで欲しいわん」


 俺達の強さを知っているマリーと剣聖は、心底嫌そうな顔をする。


 俺とエレノアがオリハルコン級冒険者と名乗ることで、その他のオリハルコン級冒険者達が同じ強さを求められることが嫌なのだろう。


 こんな規格外と一緒にすんじゃねぇという訳だ。


 人類の中でも規格外と言われるオリハルコン級冒険者達の中でもさらに規格外。それが今の俺とエレノアなのである。


「ちょっと照れるわね。褒められてる気分だわ」

「そうだな。素直に嬉しいかも」

「そんなに強いのか?強いのは分かるが」


 かつては教えられる側であった立場なだけあって、こうして賞賛を得られると素直に嬉しい。


 しかし、俺達が暴れている姿を知らないフロストは、純粋に首を傾げた。


 彼女も馬鹿ではない。俺達が強いことは見ただけで分かっている。しかし、その強さがどれほどのものなのかが、想像出来ていないのだ。


 これは仕方がないとも言える。


「ホッホッホ。なら試してみればええじゃろ。ちょうどここは広いしな。フロストも手合わせをすれば、どれほどの規格外かわかるだろうよ」

「その後俺ともやろうぜ!!」

「はいはいバカは下がってなさい。巻き込まれて死ぬわよん」

「いいね。やろうか」

「そうね。残り二人のオリハルコン級冒険者の強さを私は見てないし、いい経験になるわ。ジーク、結界はお願いね」

「はいよ」


 という訳で、お互いの実力を見てみようという事で、エレノアとフロストが模擬戦をすることとなる。


 もちろん、観客達は大盛り上がり。


 冒険者達も見たいのだ。人類最高峰の冒険者達による戦いを。そして、誰が最強なのかを。


 オリハルコン級冒険者最強決定戦とかやったら面白そう。


 多分会場が一瞬で吹っ飛ぶが。


 俺はエレノアに言われた通り結界を張っておく。これで多少はしゃいでも問題ない。


「これだけの大規模な結界を一瞬で張る技量........天魔もすごいね」

「私の自慢の相棒よ?このぐらいは朝飯前だわ」

「そう言う貴方も?」

「このぐらいなら簡単ね」


 立ち上がった二人がある程度の距離をとって睨み合う。


 急に、その場の空気が静かになって誰一人として話さなくなった。


 つい先程まで魔術の話をしていたはずのリエリーとデモットも、いつの間にか俺の隣まで来てこの戦いの行く末を見守っている。


 エレノアはトンファーを取り出すと、いつものようにクルクルと回しながら“かかってこい”と言わんばかりに挑発した。


「先手は譲るわ」

「お言葉に甘えて。世界よ凍てけ“フロストノーヴァ”」


 刹那、結界の内部が凍りつく。


 おいおい。俺が結界を張ってなかったら今頃ここら一体が全て凍ってたぞ。


“氷帝”と呼ばれるだけあって、地面に突き刺した魔剣の威力は凄まじい。


 一瞬で大地は凍り、空気までもが凍りつく。


 あれが魔剣“フロストノーヴァ”。


 噂程度にしか聞いてないが、絶対零度の冷気を纏い、切りつけたものを全て凍らせる魔剣。


 あまりにも強力すぎるその魔剣だが、強力すぎて使用者すらも凍らせてしまうおちゃめな子だと俺は聞いている。


 が、フロスト本人は至って元気そうだな。


「ちょっと寒いぐらいかしらね?」

「........これは予想外」


 凍てついた世界。しかし、その中で平然と歩くのは炎魔エレノア。


 エレノアの奴は、あえて自分の炎を使わずにこの氷を魔力だけで受け止めた様だ。


 しかも、当然のように無傷。


 これにはフロストも顔をしかめるしかない。


「次は私の番ね?大丈夫、骨を折るようなことはしないわ」

「ゴフッ........!!」


 その瞬間、エレノアの姿が掻き消えて、トンファーがフロストの腹に突き刺さる。


 かなり手加減した一撃。移動も普段よりもかなり遅いし、威力も弱い。


 が、それはエレノア基準での話。


 エレノアの手加減した一撃は、フロストの腹を的確に撃ち抜いて体をくの字に曲げさせたのだ。


 相変わらずめちゃくちゃである。


 相手はオリハルコン級冒険者だと言うのに、そのオリハルコン級冒険者相手に舐めプできるぐらいには強くなってしまった。


 反応すら許さない一撃。


 フロストは膝から崩れ落ちると、両手を上げて“参った”をする。


 たった一撃で、勝負は決してしまった。


「あら、随分とあっさり負けを認めるのね。あまりダメージはないでしょう?」

「痛いよ?それと、貴方はまるで力を出していない。私はそこそこ本気でやったのに。この時点で歴然の差。力比べなら十分」

「そう。でも、いい一撃だったわよ。冷たかったわ」

「普通に攻撃を受けて、その感想がおかしいことに気がついて欲しい」


 ニッコリと笑ってフロストに手を伸ばすエレノアと、エレノアが想像以上の規格外であることを認識し、呆れた顔のフロスト。


 炎と氷。


 自然界では相容れない存在だが、この二人は結構仲良くやっていけそうだ。


「昔、フロストちゃんの氷を食らった事があったけど、あんな無傷じゃ済まなかったわよん........一体どれだけ強くないって帰ってきたのよん」

「ホッホッホ。儂もちゃんと防御せぬと怪我をするのぉ」

「凄いなー。エレノアお姉ちゃん、魔術を一切使ってなかったぞ。つまり、あれは肉体のみで防いだという訳だ」

「俺の本気の攻撃が当たり前のように伏せがれるんですよ。しかも、パンチ一発で。理不尽だと思いませんか?いや、理不尽ですよ」

「よし!!次は俺の番だな!!」


 こうして、オリハルコン級冒険者たちの交流会が始まった。


 魔術を教えたり、軽く模擬戦をしたり、雑談をしたり........意外と集まることがないオリハルコン級冒険者達が全員集まってワイワイやっている姿はかなり珍しかったのか、次第に人が人を呼び、気がつけば俺達は動物園の動物のように見られていた。


 しかし、誰もそれは気にしない。


 だって気にしたところでどうにもならんし。


 それよりも、俺は可愛い弟子と遊んだり剣聖やリエリー達と仲を深めた方が楽しいのだ。


 普段は合わない分、さらに仲良くなれた気がしたのは俺だけではないだろう。

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