キメラキメラキメラ‼︎
地下五階層に居たキメラ達を全て回収した俺達は、次の階層への入口を見つけて更に下へと行く。
現れたキメラ達は全て不自然な形をしており、その中にはなにか生命への冒涜を感じる見た目もある。
明らかに何者かの手が入っているキメラ。一体どんな文明が作った兵器なのだろうか。
地下六階層へと降りると、そこはかなり開けた場所だった。
明らかにほかの階層とは違う。俺の経験則上、こういう場所にはでかい魔物が存在している。
「気をつけろ。ここは、ダンジョンで言うボス部屋だ。見たことも無いキメラが出てくるかもしれんぞ」
「言うて、今までのキメラ達も見たことがないものだったけどね。私達の知りえないその魔物の姿がまた見られるのかしら?」
「広い空間ですね。ほかの階層とは違います」
明らかに違う階層の雰囲気に警戒心を顕にする俺達。
そして、その予想は当たっていた。
ゆっくりと歩いていくと、その広間の中心地に眠る魔物が一体。
大きい。
胴体はティノルスらしきものを使っており、そこそこ大きめの個体を使っているように思える。
しかし、
あれを基準に比べたらダメだな。規格外すぎる。
そして、ありとあらゆる魔物がごちゃ混ぜになっていた。
まず頭がふたつある。
ティノルスの頭と、おそらくアロルスの頭。
二頭魔物でありながら、その尻尾はステゴルスのものだ。しかも、背中にはステゴルスの棘が綺麗に並んでいる。
そしてティノルスの特徴とも言える飛べない翼はプテラドンのものだ。
頭にはトリケラプスと思わしき角と、パキケファルロスの硬い頭。
正しく魔物のオンパレード。ありとあらゆるものが取り付けられており、見た目はなんか強そうだけど気持ち悪いやつになっている。
「ここまでごちゃ混ぜになると、もはや別の魔物ね」
「だな。眠っているのか知らんが、今のところこちらに敵意を示してなはい。生命の反応はあるから多分生きてはいる。起こすか?」
「出来れば綺麗に殺して欲しいです。これはいい研究材料になりそうですし」
雑に頭と胴体を付け替えたと言うよりは、明らかに強い個体を生み出そうとして作られた結果だろう。
そう思わせるこのキメラをどうしようか悩んでいると、可愛い弟子がオネダリをしてきた。
しょうがないな。デモットがそう言うなら、綺麗な状態で殺してあげるとしよう。
俺もこのキメラをどうやって作りだしたのかは正直気になるし。
もし、魔術や悪魔の力によって複製が可能であれば、俺の影の中に入っている魔物の在庫を有効活用出来るかもしれない。
主に、村の防衛として。
ここにいる魔物、キメラ達は明らかに何者かの指示によってここにいる。
でなければ、魔物の居ない階層と存在する階層がここまではっきりとわかれるなんてことは無いだろう。
ここはダンジョンでは無いのだ。階段を自由に昇り降りするぐらいはできるはずである。
もし、命令を聞かせられるのであれば心強い戦力となる。
悪魔の村は確かに発展し、悪魔たちも魔術という力を手にしたが、それでも不安は残るからな。
尚、俺達の経験値となるかもしれないとも考えたが、このキメラ達はおそらく世界の理を逸脱している。
生命を人の手によって作り出した場合はその生命に経験値が付与されないことは実証済みなので、これもその例に盛れることは無いだろう。
あくまでも経験値が宿るのは、自然の摂理によって生み出された個体のみ。生物の繁殖などによって増えた個体にしか世界は経験値を付与しないのだ。
もしかしたら、このキメラ達にはレベルと言う概念すら存在しないかもな。
確認する方法はないけど。
俺は経験値という観点からは大して価値のないキメラに向かって、寝起きドッキリを授けでやることにした。
おはよーごさいまーす!!朝ですよー!!
「天へ誘え」
地下に現れた天への道標は、その場で寝ていたキメラを掴んでいく。
「グユァァァァ!!」
「おはようキメラくん。そして、おやすみ」
キメラは掴まれた時点で目を覚まし、激しい抵抗を試みたが、進化してレベルももうすぐ元のレベルに戻る俺の魔術を相手にそんな抵抗ができるはずもない。
最初に掴まれた時点で逃げる術はないのだ。それこそ、転移魔術などを習得していない限りは。
このキメラがその素材となった魔物の力を扱えたとしても、せいぜい使えるのは風の力ぐらい。
天の門からすれば、この程度ではどうということは無い。何せ、最近はエレノアのジャブにギリギリ耐えられるからな。
ジャブ(威力一割)だけど。
おかしくないか?そのジャブ。
うちの天門、地獄門から出てくる手はかなり頑丈のはずなんだけどなぁ........
そんなことを思いながら、天の門へと囚われるキメラを眺める。
最後の最後まで吠えていたキメラだったが、結局このキメラも何もできることはなく門の中に入り込んで天の光によって浄化されてしまった。
まぁ、絶望級魔物にギリ届かない破滅級魔物レベルの強さっぽかったしな。今の俺たちからすれば、絶望級魔物未満はそこら辺のゴブリンと同じように始末できてしまう。
「いつ見ても美しい魔術ね。流石はジークの得意とする魔術なだけはあるわ」
「ありがと。デモット、これで綺麗に殺せたぞ」
「ありがとうございます!!早速見せてもらっていいですかね?!」
知識欲が刺激され我慢できなかったデモットは、早速キメラの死体を見たがった。
仕方がないなぁ。まだこの部屋の探索も終えてなしいその間ならゆっくり見るといい。
俺は死体を出してやると、デモットは満面の笑みを浮かべながらそのキメラをアレコレ見ていく。
あれ?戦ってた時は気が付かなかったが、皮膚がアンキロルスのものに一部置き換えられてるな。
アンキロルスはかなり皮膚が頑丈で、ティノルスよりも硬いらしい。
防御面もちゃんと考えて作られたって感じなのかな?特に弱点となりそうな腹の部分が、アンキロルスの皮膚で覆われている。
「本当に不気味な魔物ね。こんなものが誰かの手によって作り出されただなんて、いい趣味しているわ」
「だな」
俺はそう言いつつ、フラフラと部屋の中を探索してみる。
念の為まだキメラが存在していないか確認してみたが、ここに配置されているのは一体のみだったようだ。
もしかしたら、このキメラが最終兵器だったのかもしれない。
「ん?なにか書いてあるな」
「あら、本当ね」
壁をのんびり眺めていると、そこに文字が書かれていたのを発見する。
やはり風化して読めない部分が多くあったが、何やら重要そうなことが書いてあった。
『我ら最後──、ここが─────ば、我らは滅びゆく』
たった一文。だが、その一文はかなり大きな意味を持っていた。
「我ら最後ってことは、ここにいたヤツらは最後の生き残りってことか?」
「確か、何者かと戦っていたわよね?3つ目だったか四つ目の石版にそんなことが書かれていたはずだわ」
「となると、こいつらは敗北寸前だったってことだな。やっぱり滅びた古代文明とかだったのかな?」
「となると、相手は誰なのかしらね?悪魔?それとも別の何かなのかしら?」
「分からん。だけど、この遺跡の構造上、下に向かうに連れて侵入が困難になっているはずだ。そう考えると、最後の地下には石版に書いてあった“街”があるのかもしれないぞ?」
「それを見つけたら、全ての謎が解けるかもね。ふふっ楽しみだわ」
その後、他にも文字が書かれてないか探してみたが、壁に書かれていたのはこの一文のみであった。
一体何と戦っていたのだろう?
早く真実が知りたいぜ。
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