遠き未来に残した物
この遺跡に住んでいた者が残したと思われる日記をみつけ、新たな事がいくつかわかった。
まず、ここは職場であったということ。どのような仕事をしていたのかは不明だが、少なくとも何らかの職がこの場に与えられていたらしい。
そして彼らは街を作っている。
どんな街なのかは分からないが、“元老院”という記述から最低限の社会性があったと見るべきだろう。
貴族制なのか共和制なのかは知らないが、人の上に立つ職業が存在していたのは事実だ。
そして、文字を残せる高度な文明力。トラップもおそらくは彼らが作ったものだと考えていい。
益々彼らの正体が気になってくる。悪魔なのか、それとも別の種族なのか。
もしかしたら、人類なのかもしれない。
そんなことを思いながら、俺達は天魔くんちゃんの案内に従ってさらなる情報を求めに行く。
地下四階層は、地下二階層と同じくまたしても同じ構造で多くの部屋が存在していた。
「ここにも部屋があるのね。これで五つ目かしら?」
「そうだな。日記とかあってくれると助かるんだが........」
「今のところ、あの1つ以外は見つかっていませんからね」
天魔くんちゃんに連れられて見学に行った部屋のほとんどは、あまり情報が残されていない。
しかし、その部屋の家具の配置などがかなり変わっているのを見るに、ここで働いていた人達の個性が見えた。
テーブルをど真ん中においてリビングのように使っていたり、テーブル壁際にあって部屋の余裕を確保していたり。
土を固めたと思われる食器も発見したことから、それなりの文明力が伺える。
陶器を作れるということは、火を使っていたという証明だ。魔術で作られていたりしたら知らんけど。
そんなわけでやってきた5つ目の部屋。
俺は手慣れた手つきで扉を開くと、サッサと部屋の中に入っていく。
俺に続いてエレノアとデモットも中に入り、みなが示し合わせたかのように情報となりそうなものの捜索を開始した。
もう五回目だ。多少は慣れる。
「........ん、石版を見つけたぞ。ちゃんと読めそうな感じだ。幾つかは削れて読めないけど」
「お、今度はジークが見つけたわね。早速読みましょう」
「さすがですジークさん。俺、この遺跡がなんなのか気になって仕方がないんです」
偶然見つけた引き出しの中には、2枚の石版。ひとつはヒビが入っており、もうひとつはかなり綺麗な状態である。
そして、両方とも読めそうな感じであった。
毎度の如く読めない部分もあるが。
俺は最初の文を見て、先に書かれたであろう方からしっかりと読み解くことにする。
そこには、こう書かれていた。
『私が残せるものは多くない。だが、未来の子供達がこの仕事に来た時、如何に未来のない話なのかを────のものを残すのは難しくない。これを読んだ未来の子供達よ。元老院の言葉は虚言だらけであると知れ。
知っての通り、我らは今─────────ている。理由を知らないだろう?生まれてからそれが普通だったのだから。だから、君たちが見たことの無い──────う。現在、──────り、────────ている。いつからだったかは分からない。少なくとも、私が生まれた時にはそうなっていた........私が独自に調べた時は、────年前か?その辺から、我らは──で生活していたという。なぜか。それは、─が──を飲み込み、────────レらが、大地を貪り尽くした。この世界で最も高潔で美しく、そして偉大であったこの私達は世界の広さを知らなかったのである』
........これは、未来の子孫に向けたメッセージか。
どうやらこれを書き残した奴は、この仕事に来るであろう未来の子供たちに真実を伝えようとしていたように思える。
重要な部分だけが完璧に抜け落ちているのは、彼がやはり知られたくはないと思って消したのか、それともこの真実を知られると都合が悪い者が消したのか。
ともかく、当時の彼らに希望がなかったという事実はハッキリとわかる。
「世界の広さを知らなかった........つまり、何者かが当時の支配者であったここの人たちと敵対して侵攻を開始したと見るべきかしら?」
「可能性は高そうだな。だが、重要な部分だけが綺麗に抜け落ちている。風化したからと言って、こんなに都合よく知りたい部分が消えるのか?」
「風化しすぎて分かりませんが、おそらく書いたはいいものの真実を伝えるのは酷だと思ったんですかね?でも、破壊して全てを消すことも出来ず、残してしまった........そう考えることもできます。おそらくですが、かなり彼らは追い詰められていたのかもしれないです」
こんな山奥の遺跡の中で立て籠っていたのだ。可能性は高いだろう。
とにかく、元老院というおそらく最高階級の者たちは何らかのプロパガンダを行い、彼はその言葉が真実ではないと伝えようとしたことは分かった。
何者かが大地を侵食し、こんな僻地へと逃げ惑う羽目になったのだと。
「もう1枚も呼んでみるか」
「そうね。見てみましょう」
とりあえず分からないところは後で考察しよう。今は、もうひとつの情報を辿るべきだ。
俺はもう1枚の石版を崩れないように慎重に持ち上げると、内容を読む。
その石版にはこう書かれていた。
『あぁ。私達は一体どこで間違えたのか。私が生まれた時には既に不可能な地点まで来てしまっている。私は──────史を読み漁ったが、その問題点がどこにあるのかは発見できなかった。──の───、───による───、───求めた──の──、それら全てが始まりなのか?いや、─────も、─────────が、全ての始まりだったのか?
分からない。分からない。──────。私の凡たる頭では、この世界に何が存在しているのかすらも理解していない。子供達よ。いや、この世界に生きる全生命よ。この文を読んだのであれば、心に留めておけ。───は、触れてはならない者に触れてしまった。無知は罪だが、知ることによって巻き起こる────もある。遠くはるか未来、この─────で新たに生を授かったもの達よ。─────に手を────。その先に待つのは滅びだけだ。決して、私たちと同じ末路を辿ってはならない。いつの日か、生命の─────捨てる時が来てしまう』
ここで文は終わっている。
なんというか、あれだな。ちょっとS〇Pの調査報告みを感じるのは俺だけだろうか?
誰かの記録って毎回こんな感じじゃなかったか?
微妙にホラーチックで、ちょっと難解。これはわかりやすい部類だと思うが、重要な部分は隠されている。
そんなどうでもいいことを思いながら、俺はエレノア達の反応を待った。
「........なるほど?よく分からないわ」
「真実を書き残したと言うよりは、俺達に向けた........未来の生命に向けた忠告のようにも思えますね。知らない事で死ぬ時もあるが、知ったことで滅びを選択してしまうこともある。世の中、知らなくてもいいことはあるのだ。そう言っているように思えます」
「俺もそう思う。だが、結局この言葉を残した奴は誰なのか、そして彼らを滅びに導いたのは誰なのかは分からないな」
「モヤモヤするわね。どこか一つでも分かれば、全部の謎が解けそうなのに」
「それを含めての謎解きだ。過去にいる人々は未来のどっかの誰かにそれを読まれるなんて考えてないからな。こいつは違ったみたいだけど」
俺はそう言うと、2枚の石版を回収して、この場を立ち去るのであった。
この石板はかなり重要なものになるだろう。ウルや他の悪魔達にも見せて、考察してもらおうかな。
俺は考古学者がなぜ過去を解明したがるのか、その理由が少しだけわかった気がした。
後書き。
最初と三つ目の石板にはヒントがあります。今まで一切触れてなかった話に触れてるよ。
それと、新作を上げたので是非読んでね‼︎『異世界ローグ』で小説検索かけたら出るよ(私のプロフィール欄からもいけるはず)‼︎
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