探索二日目
探索2日目。俺達は昨日見つけた地下四階層ヘの道に戻ってきていた。
昨日発見した、頭と胴体が異なる魔物。
ウルに成果を聞かれたのでその報告として魔物を見せたのだが、彼女もこんな魔物は見た事がないと驚いていた。
数多くの魔物を見てきたであろうウルですら見たことがないとなると、益々遺跡に眠る秘密が気になってくる。
俺はちょっと楽しみすぎて、いつもより早く起きてしまった。
まぁ、エレノアの抱き枕にされているので起きても抜け出せないのだが。
気持ちよさそうに寝ているエレノアを起こすのは忍びないからね。トイレの時ぐらいしさ、エレノアの腕から抜け出すことは無いのだ。
さて、そんな道の魔物だが、やはり無理やりくっつけられた可能性がかなり高いと言う。
魔物に詳しい悪魔達が集まって色々と弄り回してみたらしいが、結果として分かっているのは人為的、もしくは自然によって発生した魔物の融合との事。
理由も仕組みもまだ詳しくは分かってないが、異なった魔物同士をくっ付けたのは確定的であり、俺達はこの魔物を“キメラ”と名付けた。
今後、似たような特徴を持った魔物はキメラとして分類し、様々なサンプルを持ち帰るつもりだ。
まずは人為的に作られた存在なのか、それとも何らかの要因によって自然発生した異質の生物なのか。
そこを調べるところから始まるだろう。
「エレノア。いつまでくっついてるつもりだ?歩きにくいぞ」
「ふふっ、ジークが楽しそうだったからつい。私もなんだか楽しくなっちゃって」
「つまらないよりかはマシだけど、トラップとかあるんだから離れてくれ。いつも寝る時は俺を抱きしめてるんだからさ」
「分かってるわ」
今日はいつも以上に機嫌がいいエレノア。
理由は分からないが、とにかく今日のエレノアは機嫌がいい。デモットも“今日は機嫌がいいな”と一目で分かるぐらいには、エレノアはるんるんであった。
何かいい事でもあったのかな?
どうせ聞いても教えてくれないので、聞く気にはならないが。
俺は後ろから抱きついてきて匂いを嗅いでくるエレノアを離すと、地下四階へと降りていく。
昨日見慣れたその景色が急に変わることはなく、俺達は無事に地下四階層へ足を踏み入れた。
「昨日の夜のうちにある程度闇狼達が探索してくれている。めぼしい場所には天魔くんちゃんが案内してくれるが、トラップと魔物には気をつけてくれよ」
「また矢のトラップが出てくるのかしら?楽しみだわ」
「またトラップで遊ぶことになりそうですね........製作者側も絶対こんな使われ方をされるとは思ってませんよ。如何に軽やかに、スマートに相手の攻撃を避けるかだなんて」
「「避けられるトラップを作る方が悪い」」
「はぁ........これだから俺の師匠達は........」
トラップを完全に遊び場だと思っている俺とエレノアに呆れるデモット。
だってこの遺跡、結構暇なんだもん。仕方ないよね。暇な時に遊び道具が来たら遊んでしまうのが人間なのだ。
それと、デモットも昨日は楽しんでただろう?いいじゃないかそれで。
そんなわけで始まった探索2日目。昨日とは違い、闇狼くんが数多くの場所を探索してくれているので、俺達は情報がありそうな場所に向かっていく。
道中数々のトラップを避けたり破壊したりしながら進んだ先にあったのは、地下二階にあった数多くの部屋と同じような扉であった。
ここにも部屋が用意されているのか。もしかしたら、日記の続きを探し出せるかもしれんな。
「部屋ね」
「部屋だな。又しても。中に生命の反応は無さそうだから、入ってみよう。何があるのか気になるしな」
「もしかしたら、重要な情報が見つかるかもしれないですしね」
というわけで部屋に入場。やっていることは空き巣だが、鍵をかってない方が悪いの精神で部屋に入ると、地下二階で見たものとはかなり違った部屋の作りとなっていた。
以前の部屋は独房と言った感じであったが、この部屋は明らかに生活感のある部屋だ。
リビングのような作りの部屋と、台所。それに、壊れかけのベッドまである。
これなら多くの情報が隠されているかもしれない。昨日の謎の核心に迫るものがあったらいいのだが........
「生活感溢れる部屋ね。家具が少ないという点を除けば」
「もう少し彩りがあってもいい気がするが、少なくともここで最低限の生活はできそうだな。とりあえず色々と調べてみよう。重要な証拠が見つかるかもしれん」
「そうですね。調べてみましょう」
という事で、なにか重要な手がかりがないかを探し始めた俺たち。しばらくあれこれ探していると、デモットがあるものを見つけた。
それは、石版に書かれた日記である。
しかも、保存状態がかなりいいのか、大部分が読めるようになっていた。
「ジークさん日記のようなものを見つけました。かなり読めますよ」
「おっ、ナイスデモット。それじゃ、みんなで読んでみようか。謎が全部解けるとは思わないけど、少しばかり進むといいな」
「あら、流石じゃないデモット。探し物はデモットに探させるのが1番かもしれないわね」
俺はデモットから石版を受け取ると、その内容を読んでみる。
日記にはこう書かれていた。
『○○の月○○度日が昇る日。今日で勤務交代の日となる。ようやく街に帰れるのだ。ここの仕事は、時間が流れるのが遅く感じて仕方がない。いつ来るかも分からない─────に────ら、私たちは毎日を生きているのだ。街の連中だって例外ではない。だが、最も────に近い奴らが最初に見つけるだろう。そして次はこの場にいるもの達、そして最後は街の者達が。─────、私たちは生きている。─────り、ほぼ─────を手にしたとしても、それは変わらない。あぁ。いつになったら私達は自由になれるのだろうか。元老院の連中はあれこれやっているようだが、期待しない方がいいと分かっている。だが、それ以外に考える頭を持つ奴らもいない。なんて不条理な世界だ。だが、一度自由を手にすれば呑まれてしまう。だから私達は檻の中で生きるしかない。これが世界なのだから........』
なるほど分からん。だが、分かったことも多い。
どうやらこの部屋は、何らかの仕事部屋らしい。そして、ここに勤務していた奴らには“街”があるそうだ。
元老院という言葉からもわかる通り、おそらくひとつの社会を築いていたことが分かる。
だが、この文を書いたものが何者なのか、なぜこの場所で働いているのかなどの情報は乗せられていなかった。
まぁ、日記だしな。誰かに読まれる、それも何も事情を知らない数万年後の未来で読まれると想定している訳では無いので当たり前だが。
もし予想してたら怖いよ。普通に。
「読めない文字が気になるわね。全部読めてたらもっとなにか分かったのかしら?」
「かもしれないか。でも、分かったことも多い。少なくとも、この場所はこの日記を書いたやつにとって職場だったらしい。それも、長時間拘束される仕事だ。よくやく街に帰れる、ってある通り、結構な時間をここで過ごすみたいだな」
「一日2日で“ようやく”とは描きませんよね普通。少なくとも1週間以上。長ければ年単位ですかね?」
「そのぐらいだと考えるのが妥当かな。この日記の著者が死ぬほど仕事嫌いだったら分からんけども」
「自由について語ってもいるわね。閉鎖的な環境だったのかしら?」
「この部屋と遺跡を見て、開放的で自由があると思うか?」
「ないわね」
こうして、見つけた日記は回収された。
削れてまともに読めなかった部分。あそこには一体何が書いてあったのだろうか。
もしかしたら、すごく重要なことだったりしてな。
後書き。
この石板はあまり重要じゃない。
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