探知阻害
遺跡の地下二階にて、日記と思わしき石版を見つけた俺達。
その後も闇狼君たちは多くの空き部屋を見つけたらしく、全部回ってみたがこれと言った手がかりを見つける事は出来なかった。
日記を書いてきたのはあの部屋の主だけであり、残りの部屋には石版すら残されていない。
しかし、似たような部屋が数多くあることから、この遺跡にいた者たちは集団で生活していたのではないか?という事が考えられた。
食料や水の問題などはあるが、少なくとも何かしらの生命がここで生活していた。
知能ある文明を持った者たちだ。今のところ、古代の悪魔の可能性が高そうだが、俺達の知らない種族とかの方がロマンがあるよな。
そんなわけで、地下二階の探索を終えた俺達は地下三階へと足を運ぶ。
地下へ降りる時は毎回トラップでも用意されているのか、今度は天井から棘の着いた板が降ってきた。
まぁ、エレノアの拳に撃ち抜かれ、ぶっ壊されていたが。
この中で1番身長が高いのはエレノアだからしょうがないね。俺が1番小さいからね........(泣)
なんで俺の体はまるで成長しないのだろうか。少しぐらい成長したっていいじゃないか。
男として、かっこよく在りたいと言う純粋な欲すらも無くさせるほどに強力なお袋の家系。あれが純粋な人間の血しか入ってないのはこの世界のバグだろ。
絶対どこかで長寿種の血が混ざってるって。
そんなわけでやってきましたは地下三階。この階層も、急に景色がガラリと変わることはなく他の地下階層と同じ景色であった。
「ここには何があるのかしらね?」
「地下一階にはトラップ。地下二階には空き部屋。次は........武器庫とか?」
「悪魔は基本武器を使わないですから、武器庫があったら悪魔ではない可能性が高くなりますね。トラップの時点で怪しいですが」
「ウルの村みたいに多くの変わり者が住んでいたかもしれないだろ?」
「それを言ったらなんでもありですよジークさん」
景色は変わらないが、普段とは違う冒険があるからかダンジョンに挑んでいる時のような作業感がない。
これは新しい発見だ。経験値が稼げずレベルが上がらないと言う最悪の欠点を除けば、完璧な冒険である。
魔物とか出てきてくれないかな。山の中だから、本気で暴れられないけど。
「........(主人、この先ぐらいから探知が阻害されてたはず。気をつけて)」
「ここら辺から探知阻害が出てくるのか。分かった。気をつけるよ」
そんなことを思いながら歩いていると、天魔くんちゃんが警告してくる。
どうやら、この先からは探知魔術が使い物にならなくなるらしい。
相手の気配を感じとれるようになってからは、あまり使ってないんだけどね。
探知魔術の大きな欠点。それは、人の脳で処理をするにはあまりにも情報が多すぎて頭が痛くなるという事。
どれだけレベルをあげようとも、この欠点が克服されることはない。人間という種族の構造上、一気に情報を流し込まれると頭が痛くなるのだ。
魔術との視界共有も未だに目を閉じないとできないしな。不便な体である。
はっ!!つまり、相手の脳が処理しきれない量の情報を流し込むことで、殺さずに相手を無力化することが出来たりする?
非殺傷系の魔術はあまり収めてないから、実験してみるのはありかもしれないな。相手の頭の中に情報を流し込む術を知らないけど。
「ん........?何かあったぞ今。結界を超えたような感覚だ」
「魔力に触れたわね。これが探知阻害かしら?」
しばらく歩くと、肌にいっしゅん何かが触れた感覚が押し寄せてきた。
デモットは気づかなかったようだが、俺とエレノアにはハッキリとわかる。今のは魔力に触れた感覚だ。
ウルの村を出入りする時と同じような感覚である。
「これが探知を阻害していたのか?となると、どこかに魔道具とかが置いてありそうだな」
「おそらくそうでしょうね。魔道具か、どこかの壁に魔法陣を刻み込んであるはずよ」
「........?俺は何も感じなかったですけど」
「俺達はこういうのにちょっと敏感すぎるだけだ。昔、師匠に嫌という程魔力を感じる訓練をさせられたからな」
「デモットもそのうちやるわよ。もう少し強くなってからだけど」
肌で魔力を感じることが出来れば、知らずの内に結界に入り込んでも把握することが出来る。
そう言われて、魔力感知の訓練は嫌という程した。
感知できなかったら罰ゲーム。罰ゲームはその時によって変わっていたが、1番キツかったのは一発ギャグだな。
雑に“じゃ、面白いことして”と振られて、面白いことをしなければならなかった。
当たり前だが、俺もエレノアも洒落のセンスはほぼ無いので、結果すごい空気になってしまったのが辛かったよ。
そしてシラケた空気に笑う師匠。あの人は悪魔よりもやっていることが悪魔である。
性格悪すぎるだろ。
「んー、どのタイプの結界かな?中心地から広がる結界な感じがするけど」
「その場結界を出現させると言うよりは、大きな範囲を持っている結界でしょうね。今ここで魔法陣や魔道具を探しても無駄だと思うわよ」
「だよね。一応周囲にそれらしい痕跡がないか探しながら行くか」
この探知阻害、結界の中では探知が使えないですよという物ではなく、どちらかと言えば外からの探知に対して阻害をかけている感じがするな。
だって今結界の中で探知を使っても普通に使えるし。
しかし、結界の外に向かっての探知が阻害されている。
結界内部にまで影響を及ぼすタイプのものでは無く、結界だけが効果を持つタイプのようだ。
ウルの村にあった周囲の景色と溶け込む結界と全く同じタイプである。
「探知を阻害しなければならなかった........か。なにかの外敵から身を守る手段だったのか?」
「基本そうでしょうね。秘密基地にしては随分と大きすぎるし目立ちすぎるわ」
「なんでこの場所からしか探知阻害が入らないのかというのも疑問だな。普通こういうのって玄関口とかに張るものだと思うけど」
「んー、もし魔道具とかで作られた結界なら、劣化して範囲が狭まったなんてことも考えられます」
「そうか。魔道具も所詮道具に過ぎないからな。適切な手入れがされてなきゃ劣化するか」
これだけ考察をしても全て推測でしかない。結局、さらに深くへと足を踏み入れて真実を見てみるしかないのだろう。
この遺跡がどこまで続いているのかは分からないが、最深部まで行った時には少しだけでも謎が解けていると嬉しいな。
「........昔、師匠が遺跡巡りをしていた気持ちが少しわかった気がするよ」
「そういえばそんなことを言ってたわね。確かにこうして過去の歴史を想像しながら手がかりを集めていくのは、レベリングじゃ味わえない感覚だわ。謎を解いているみたいで楽しいわね」
「遺跡の遺産なども見つかるんですかね?ほら、大師匠が持っていた“
そうえば、師匠は遺跡探索で
もしかしたら、この遺跡にもそんなお宝が眠っているかもしれない。
でも、正直アレは要らん。
普通に怖いし。
「流石にそれは要らないかも。だって相手の精神を乗っ取るとか言ってたぞ。アンデッドで頭がちょっとおかしいから師匠は耐えられたけど、生身の人間で精神が清らかな俺達には扱いないだろうよ」
「正直、要らないわね。アレは力を求めていたとしても、触れてはならないものよ。師匠は別だけど」
「やっぱりお二人もそう思うんですね。俺もアレは触れちゃいけないなと思いましたよ。まともに扱える気がしません」
もしこの遺跡に
俺はそう思うと、さらに遺跡の奥へと歩みを進めるのであった。
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