地下二階層へ
天魔くんちゃんがエレノアにママみを感じて幼児退行しつつも、探索は至って順調である。
矢のトラップが出てきてから、ちょこちょこトラップが見られるようになったものの俺達の生命を脅かすほどでは無い。
俺達が命の危険を感じるほどにやばいトラップってそれこそ、師匠とかウルが使うような攻撃の火力をしてないと無理だしな。
そんな馬鹿げた火力をしたトラップなんて設置した日には、この遺跡どころか、山そのものが吹っ飛ぶに違いない。
「お、下に降りる階段だ」
「これでも第一階層はおしまいかしらね。トラップ以外は見所が無かったわね」
「悪魔が住んでいるような気配は今のところなかったですね。この先に何か手がかりがあるんでしょうか?」
遺跡の探索を続けていると、さらに下へと続く階段を発見する。
ここが地下一階のだとしたら、次は地下二階か。
とりあえず、地下一階にはトラップしか無かった。
闇狼達にも聞いた感じ、俺達が通っていない道に何かめぼしいものがあった訳では無い。
本当にトラップと入り組んだ道だけが用意されていたのだ。
下から串刺しにしようとしてくるトラップとか、横から矢が飛んでくるトラップが多かったな。
悲しいことに、俺もエレノアもトラップの解除方法を知らないので天魔くんちゃんが正面からぜんぶ壊していたが。
どれほど前に作られたものなのかは知らないが、少なくとも現代でも動くようなトラップを作れる文明を持っていた者が作った遺跡であるのは間違いない。
デモット曰く、悪魔はこのようなトラップを作る種族では無いとの事なので、余程の変わり者の悪魔が作ったか、悪魔では無い別の種族が作ったものだと予想される。
尚、トラップの仕組みが知りたいデモットは、トラップを見つける度に壊したそうにしていた。
でもちゃんと、エレノアのいいつけを守って我慢している。
偉いぞデモット。途中から凄く葛藤していたのが分かったから、俺が暴走しないようにデモットの手を握ってあげていたりもしたけど。
そしたら滅茶苦茶機嫌が良くなり、今はるんるんである。
「それじゃ、地下二階へ行ってみるか。何が待ってるのかな?」
「悪魔では無い別の種族が作った遺跡だったら面白いわね。悪魔がこの大陸を支配する前の支配者だった可能性もあるわ」
「悪魔がこの大陸を支配したのは数万年前の話ですから、それよりも前に何者かがここを支配していた可能性はありますね。ですが、悪魔が人間以外の種族と戦争をした記録はなかったはずです」
「人間と戦争か。本当にしてたのか?」
悪魔と人間はあまり仲が宜しくない。
人間は悪魔を嫌う傾向があるし、悪魔は人間を見下す傾向が強いと思っている。
事実ら悪魔が人類大陸に来た例はある。しかし、戦争と言えるようなことをやっていたという記録はないのだ。
あくまでも、討伐戦。ただ強い魔物と戦っているに過ぎない。
「戦争と言うよりは悪魔単独で攻め込む場合が多いとされていますね。そこまで大規模な攻撃を仕掛けた記録はなかったかと。少なくとも、俺の知る範囲ではありません」
「どこかの宗教が悪魔召喚をして、その呼び出された悪魔を頭として戦争したという方がしっくり来るか。で、運良く生きて帰ってきた悪魔が魔界に人間という種族がいると広めた........とか?」
「そこら辺は不鮮明で、俺にも分かりません。ですが、可能性は高そうですね」
そんなことを話しながら、俺達は地下二階へと降りていく。
俺は歴史に興味が無いが、遺跡という古代の異物を探検しているとなると過去についても気になってしまうのは仕方がない。
悪魔と人間。別大陸にいながらも、お互いにその存在を確認しあっている。
過去に何が起きて、お互いを知ることとなったのか気になるな。
そう思っていると、ドン!!と地面が軽く揺れた。
なんだ?と思って音の方に視線を向けると、そこには下ってきた階段の上にドデカイ弾があった。
これ知ってる。遺跡トラップの定番、坂道から転がってくる岩でしょ。
全力で坂をおりてギリギリセーフ!!って言うやつだよ。映画で見たよ。
「へぇ、こんなトラップもあるのね。これで侵入者を轢き殺すのかしら?」
「殺意が高いよな。全力で階段を降りなきゃならんし」
「いやいや、なんでそんなに落ち着いてるんですか二人とも!!急いで降りましょうよ!!」
階段を下りながら落ちてくる丸い岩は、徐々に徐々にそのスピードを上げてこちらに迫ってくる。
俺とエレノアは新しいトラップを見て感心し、デモットは“早く逃げよう!!”と言って俺とエレノアの服の裾を軽く引っ張った。
俺達が力のないただの人間だったらもちろん逃げていたが、こちとらレベル270超えだぞ。
ブラックドラゴンよりも軽くて脆い岩を相手に、逃げなきゃ行けない道理は無い。
ゴロゴロと迫ってくる丸岩。
そんな岩をぽけーっと見ていると、エレノアが1歩前に出る。
「止めるわよ」
「どうぞどうぞ。トラップを破壊しちゃいけないなんてルールはないしな。あ、でもパンチの余波で周りまでぶっ飛ばすなよ?」
「もちろんよ。私だってそこまで馬鹿じゃないわ。ちゃんと受け止めから静かに壊すわよ」
エレノアはそう言うと、凄まじい速度で落ちてくる丸岩に向かって片手を伸ばす。
ドゴォン!!と、言う凄まじい音と共に丸岩はエレノアと激突し、ピタッと動きを止めてしまった。
威力を受け流しつつ止めるのではなく力で強引に止めるとはさすがはエレノア。
........というか、なんか指がめり込んでね?岩に勝てる指とかおかしいやろ。
「と、止まった........そっか。普通にとめればいいんですね」
「お約束を守って逃げる必要は無いわな。だって止めれるし。エレノア、破壊しちゃって」
「もちろん」
エレノアはそう言うと、空いたもう片方の手で軽く今に向かってデコピンをする。
ペシンと、軽く弾いたように見えたそのデコピンは、一撃で丸岩を粉々に砕いてしまった。
あんな軽そうにデコピンしただけで、岩が崩れ去ったぞ........これ、そこら辺の人間に軽くデコピンしたら、頭パァン!!ってなるんじゃないか?
「........俺、毎日のようにあれよりも強い攻撃を受けてきたんですかね?」
「受けてるぞ。つまり、デモットの体はこの崩れ去った丸岩よりも頑丈という事だな」
「なんかちょっと自信が着きますね。こんな丸岩すらも軽く砕くような人のパンチを多少なりとも耐えられるなんて」
「デモットは十分強いからな。基準としている相手がちょっと強すぎるだけだ」
あからさまに自分よりも硬そうな岩が砕かれたのを見て、謎に自信を得たデモット。
ポジティブなのはいいことだ。少なくともネガティブになるよりかは全然マシである。
砕かれた岩を見てポジティブになれる思考回路はちょっと理解できないが。
「ちなみにジークさんはどの程度頑丈なんですか?」
「んー........まぁ、エレノアの7割パンチを貰ってもギリギリ耐えられるぐらいかな。くっそ痛いけど、そこまでなら骨も折れないと思う。当たりどころが悪いと折れるけど、そういう場所はちゃんと防御するからね」
「な、七割........俺は牽制パンチを防御の上からされただけで吹っ飛ぶのに........」
「そんなもんだ。と言うが、エレノアの牽制はあの子石頭野郎の頭を砕くんだぞ?むしろ吹っ飛ばされるだけで済むならマシだろ」
「確かに!!」
あ、それで納得しちゃうんだ。
こうして、俺とデモットは如何にエレノアのパンチ力がおかしいのかを話し合うのであった。
結論、エレノアのパンチはパンチじゃなくて殺人兵器。
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