探索開始


 天魔くんちゃんから遺跡を見つけたという報告を受け取ってから3日後。


 俺達は、黒鳥ちゃんを送り込んで転移できるようになったその遺跡とやらに足を運んでいた。


 ウルも知らない東側にある遺跡。


 デモットにも話を聞いてみたが、デモットも“そんな話は聞いたことがない”という。


 魔界のことならなんでも知っているデモットですら知らない遺跡。見てみたら何か分かるかもしれないと言うことで、デモットも連れてやってきた俺達を出迎えてくれたのは、正しくThe、遺跡ですと言わんばかりのレンガ造りの古びた建物であった。


 ギリシャとかイタリア辺りにありそうな建築だな。世界遺産に登録されていそう。


「........(主人、待ってた)」

「お疲れ様天魔くんちゃん。それにしても面白いものを発見したな。この1年間、こういう報告は一つもなかったのに」

「........(主人なら喜んで探検に行くかと思って、報告した。偉い?)」

「もちろん偉いぞ。よくやったな。お陰で楽しそうな冒険が始まりそうだ」


 今は天使ちゃんモードなのか、ちょっと女の子らしい仕草をしながら“褒めて!!”とアピールしてくる天魔くんちゃん。


 何度でも言おう。やはり俺の魔術は可愛い。


 性能とかそういうのは置いておいて、性格が可愛い。


 我魔術の可愛さは世界一。


 俺が天魔くんちゃんの頭をよしよしと撫でてあげると、天使ちゃんモードの天魔くんちゃんはこれでもかという程に喜んでいた。


「うーん........本当に俺が知らない建物ですね。こういう形式を取った建物すら俺は知らないです」

「デモットですら知らないとなると、魔界のほぼ全ての悪魔が知らない建物ということになるわね。一体何なのかしら?」

「入って調査してみない事には、何もわからないですね。でも、ちょっと楽しみです」


 俺が天魔くんちゃんと遊んでいると、エレノアとデモットが見たこともない遺跡を興味深そうに眺める。


 エレノアは割とすぐに飽きて俺と一緒に天魔くんちゃんを撫でていたが、デモットは壁を触ったり何か手がかりがないかあれこれ調べ始めていた。


 デモットはとにかく知識を欲する傾向がある。知らないことは知るまで調べないと気が済まない性格なのか、ひとつの魔術に対して調べる時間がかなり長い。


 俺やエレノアは“使えればいいや”主義で、その魔法陣がどのようにできたのか、なんの為に作られたのかなどはどうでもいい。


 しかし、デモットはそこまで推測してしまう。


 魔術の理解を深めるための行動だとは分かっているので何も言わないが、デモットも研究者気質なのは間違いないな。


「........(主人、ここの遺跡は中がかなり広い。そして、ある一定の範囲から探知が阻害されている)」

「探知が阻害されてる?何らかの魔術による探知阻害か?確かにそういう魔術も存在するけど........何かを隠しているのか?」

「........(それは私達には分からないけど、少なくともこの見た目よりは相当広いよ)」


 既に少しだけ遺跡の調査をしたのか、天魔くんちゃんが興味深いことを教えてくれる。


 探知魔術の妨害?


 この遺跡が見た目よりも広いってことは、多分地下に掘り下げて中に空間を作っているということなのだろう。


 探知魔術の妨害をしているということは、何かを隠している?


 はっ!!もしかして、過去の悪魔による埋蔵金が........!!


 そんなアホなことを考えつつも、少なくとも探知系魔術に頼りすぎるのは注意しておこうと肝に命じる。


 自分の感覚を信じた方が良さそうだな。いいじゃん、楽しくなってきたかも。


「うーん。さすがにこれだけじゃ何もわからないですね。やはり中に行かないと、なんのために作られたのかどんなものだったのかはさっぱりかも........」

「んじゃ早速行ってみようぜ。楽しみだな。魔界に眠る遺跡。その奥に隠された秘宝とは一体何なのか?!」

「そもそも秘宝があるとは決まってないわよジーク。もしかしたら、ただの誰かの家だった可能性もあるわ」


 それを今から確かめに行くんだろ?ワクワクするじゃないか。


 さぁ、レッツ冒険!!何気に冒険者という何恥じぬ冒険をするのはこれが初めてなんじゃないか?


 俺はそんなことを思いながら、遺跡の中へと足を踏み入れるのであった。




【遺跡】

 様々な大陸の至る所に見られる過去の遺物。誰がなんのために作ったのか。どんな役割をしていたのかなど、明確に分かっているものは少なく、基本推測でしかない。

 ごく稀に、師匠(ノア)が持っているような遺産が手に入ることもあるが、使用方法などがご丁寧に書かれている訳でもないので扱いには注意が必要。




 早速遺跡に足を踏み入れた俺達。


 中に明かりが灯っているはずも無いので、天魔くんちゃん(光モード)で中を照らしてもらいながら先を進んでいく。


 下に降りていく感じの遺跡だったから、あの建物は玄関口かな。


 遺跡の中はそこまで変わった様子がある訳でもなく、今の所予想通りであった。


 レンガで出来た壁。それと、おそらくだが当時は中を照らしていたランプのようなものが壁に着いている。


 デモットはそれを興味深く見ていたが、“知らないなぁ........”とだけ言って先に進んだ。


「暗いわね」

「誰かが住んでいるってことは無さそうだな。魔物の気配を今の所ないし、そもそも生物の気配が俺たちしかない。そんな場所が明るかったら逆に怖いだろ?」

「それは確かにそうね。管理されていない場所を明るく照らす物があっても、余計に混乱を招くだけだわ」


 一本道なのでサクサクと歩いていく俺達。


 今のところは特に問題もなく、迷う要素すらないのだ。


「魔界でよく見た建築とは違うから、別の種族が建てたのかしらね?」

「いや、過去はこの建築が主流だったって可能性もあるし、こういう建築を好む悪魔が建てた可能性もある。現時点じゃ本当に何も言えないよ」

「そうですね。可能性として考えられることが数多くありすぎます」


 過去のものということ以外は何も分からないこの遺跡。先に進めば謎が解けるのか、それともさらなる謎を残して終わるのか。


 それも含めてこの探検は楽しみである。


 そんなことを思いながらしばらく歩くと、ついに別れた道に到達する。


 今まではまっすぐ進んでいたが、ここで右か左か別れる訳か。


「どっちに行く?」

「私はどっちでもいいわよ」

「俺もどっちでもいいですが、我儘を言わせてもらえば両方行きたいですね」

「んー、全部の道を回ると相当な時間を取られそうだし、ちょっと先に調べてきてもらうか。何か変わった場所やこの遺跡の手がかりになりそうな場所を見つけたら報告してもらおう」


 俺はそう言うと、闇狼達を呼び出す。


 全部の道を見て回るとなると相当な時間時間を食わされる。


 流石にそれは勘弁願いたいので、めぼしいものを見つけてきてもらうのだ。


 ただし、今回の探索では転移は余程のことがない限りは禁止している。転移が使えちゃったら探検って感じがしないしね。


 もちろん、一旦探索を打ち切って再開する時は転移を使わせてもらうが。


 要はセーブポイント的な扱いだ。それ以外の転移は基本禁止の方針で。


 せっかくの冒険なんだから、移動も楽しまないとね。


「なんかいい感じの見つけてきてね!!GO!!」


 俺が指示を出すと、闇狼達はバッと散開して遺跡の中を探索していく。


 探知である程度の構造は理解出来ているが、これでもう少し分かるはず。


「さて、俺達は俺達で歩いていこう。どっちでもいいなら俺が決めていい?」

「いいわよ」

「いいですよ」

「んじゃ、右側で」

「理由はあるのかしら?」

「いや?特にはないよ」


 俺はそう言いながら、右側の道を選択するのであった。


 これが正解ルートなのかは、後々分かるだろう。

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