遺跡発見
ウルの手が、どこか師匠と似ている感触であった事に懐かしみを覚えつつも、俺とエレノアは早速村の強化に入った。
とは言っても、大抵の事は魔術で片付けられるし魔術で終わる。
強化系の補助魔術が得意な悪魔と、土属性を持つ悪魔達にあれこれ教えながらそれっぽい城壁を2日で完成させた。
木造の扉と周囲を囲む土の壁。
これで小型の魔物が入り込むことは無いだろう。流石にトリケラプス辺りが突っ込んできたら普通に破壊されるだろうが、それでも二、三回ぐらいの突撃なら耐えられるはずだ。
一応実験ではエレノアのジャブ(トンファー無し手加減アリ)をギリ耐えれたので、そこそこ硬いはずである。
言っておくが、城壁が脆い訳では無い。エレノアとか言う火力ブッパのおバカさんが強すぎるだけだ。
「助かったよ。これで私の仕事も少しは減るだろう」
「監視用の魔術も組み込んだから、定期的に外の様子を見れると思うよ。畑に影が掛からないように設計するのが面倒だったけど」
「建築にそこそこ詳しい悪魔がいて良かったわ。デモットの知識を合わせることで、村に変化もなく終わらせられたはずよ」
「やはり、知識は力ということだな。ノアもよく言っていたよ。知識こそが力であり、暴力にすら抗えると。戦争時にはよく色々な作戦を考えていた。兵士の友好的な使い方や、地形を生かした戦いのお陰で私達も随分と楽をさせられた記憶がある」
城壁が完成したことをウルに伝えると、ウルは師匠との思いで話を始める。
これは長くなりそうだな。
ウルが師匠の話しを始める時は、大抵話が長くなると相場が決まっている。
そして、俺達も師匠の昔話が知りたいので最後まで聞いてしまう。
午前中はこの話を聞くだけで終わりそうだ。
「知識は時として力を凌駕する。ノアはそうも言っていたが、間違いでは無い。悪魔同士の戦争は大抵力推しだからな」
「悪魔も戦争をするのか?」
「あぁ、滅多にないが、ごく稀に戦争を始めることもある。私達悪魔は基本的に閉鎖的な環境で暮らしているが、その領主達が集まる時が何度かある。その際に喧嘩を始めると、場合によっては戦争にまで発展するんだ。王の許可を経てやっているから、違反にもならない戦争がな」
「へぇ。てっきり、領主に挑むだけかと思ってたよ」
師匠がやらかした事はさておき、悪魔たちの中でも戦争は存在してるらしい。
ウルの話し方から推測するに、戦争が起こるのは位の高い悪魔達の間っぽいな。
大公級悪魔や公爵(又は侯爵)級悪魔が主役となるだろう。
悪魔達の戦争か。ちょっと見てみたいかも。
俺も戦争は1度経験しているが、師匠が暴れ回って終わっただけだ。
俺とエレノアは何もやってないし、あれは経験したと言っていいのかすら怪しい。
相手に楔を打ち付けて、怪我をしたヤツを敵に回す魔術を使うとかえげつないよ師匠。
流石は人間時代の時は戦争の抑止力となった人物。戦争に慣れてやがる。
「私も何度かやり合った事があるが、基本的に悪魔の戦争は正面衝突。数が多くて強いやつがかつものだ。だが、ノアは地形を戦術を使って公爵級どころか、大公級悪魔にすら勝利をあげている。本当にすごいよアイツは」
「そりゃ前に突進するしか脳のない戦い方をしてくれる連中に、師匠が負けるわけないよな」
「そうね。なんだったら1人でも勝てそうだわ」
「実際、下の侯爵級悪魔には一人で勝っている。態々ご丁寧に宣戦布告をし、準備までさせてあげたのに圧勝した。私はそれを見て、強さにも違いがあるのだと気が付かされたな。喧嘩を売られ、この魔界をひっくり返そうと言われた後、最初に見せられた光景でもあった」
まぁ多分、正面からぶつかっても師匠の方が勝ちそうだが、それを言って話の腰を降りたい訳では無いので大人しくしておこう。
悪魔の戦争か。
不意打ち上等の俺達からしたら、縁のない話なんだろうな。
だって宣戦布告は特大魔術でドカーンだし。それで戦力を削ってから、狩りが始まるだけだ。
「戦争ねぇ........俺達も────」
そんなことを思いながら、悪魔の戦争について会話を続けようとしたその時であった。
俺の護衛として影の中に潜んだいた天魔くんちゃんがぬるりと現れ、何やら俺に伝えてくる。
問題が発生したのか?
「........(主人、ちょっと変なものを見つけた)」
「変なもの?」
「........(東側の沿岸部より少し離れた山の頂上に、誰も住んでいない遺跡のような建物を見つけた)」
「遺跡........?こんな魔界に?」
「........(主人が興味を持つかと思って一応報告、少しだけ中を覗いたけど、今の所魔物が住んでいる気配は無かったと報告を受けている)」
それは、思ってもみなかった変わった報告であった。
どうやら、東側で悪魔の街を片っ端から殲滅しまくっていた天魔くんちゃんの1人が、山の頂上で遺跡と思わしき建物を見つけたらしい。
魔界にも遺跡なんてあるんだ。
「なんて言っているんだ?ジーク」
「山の頂上に遺跡があったんだって。何か知ってる?」
「遺跡........?いや、何も知らないな。そもそも見たことすらない。なんだそれは」
ウルに遺跡について聞いてみるが、どうやらウルも何も知らないと言う。
何年生きているのかは分からないが、かなりの年月を生きてこの魔界を旅していた悪魔ですら知らない遺跡か。
ちょっと面白そうだな。
魔物は存在しないらしいが、折角魔界に来たのだから観光したい。
ある程度の場所は見て回ったが、誰も知らないような遺跡を探検するのだって悪くないだろう。
「エレノア、ちょっと冒険者らしく未知なる場所に冒険をしてみないか?」
「ふふっ、いいわよ。毎度毎度狩りをしているだけでは味気ないしね。飽きないけど」
「もうレベリングは生活の一部だからな。むしろ、やらないと落ち着かない。多分あれだぞ、一ヶ月とかレベリング禁止されたら禁断症状で発狂するぞ」
「それは重症よ........今すぐに医者に見てもらった方がいいわ。絶対に手遅れでしょうけど」
こうして、俺とエレノアは天魔くんちゃんが見つけたらしい遺跡に向かってみることにしたのであった。
先にデモットに話を聞いてみるとしよう。もしかしたら、何か知っているのかもしれない。
【悪魔の戦争】
悪魔達による領地の全戦力を使った戦争。基本的に皆殺しにした方の勝ちであり、ほかの街には迷惑かけないでねぐらいしかルールがない。
勝った場合はその領地を好きにできるが、大体放置されるか新たな悪魔達が入ってくる。
ジークの指示に従い、悪魔の狩りを続けていた天魔くんちゃんが偶然発見した遺跡。
土を固め、石でできた今にも崩れそうなその遺跡を覗いて見た天魔くんちゃんは、探知系の魔術を使って驚いていた。
「........(広い。地下に広がってるタイプだ。しかも、ある一定の場所から探知阻害されているのか先が分からない)」
見た目はそこまで大きな遺跡ではない。しかし、その中を探知してみるととても広かった。
そして、ある一定の場所から探知がまるでできない。
そこに何かを隠しているかのように、霧のようなもやによって全てが包まれている。
「........(主人、こういうの好きそうだよなぁ。歴史とかは興味無いけど、楽しそうに探検しそう)」
ジークはこの世界の歴史にあまり興味はない。しかし、ジークも男の子なのでロマンあるものは好きである。
それこそ、古代文明や超高火力(実用性皆無)魔術など、なんかカッコよかったり面白そうなものには興味を引かれるのだ。
「........(褒めてくれるかな?)」
しかし、そんなロマンは分からない天魔くんちゃんは、とにかく主人が褒めてくれるかどうかの方が重要。
褒めて欲しいなーと思いながら、天魔くんちゃんはのんびりとジーク達の到着を待つのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます