古代の跡

デモットはモテる


 レベル100に到達したデモットをこれでもかと褒めまくり、可愛い可愛い弟子が成長した事を祝った翌日。


 俺達は悪魔の村の手伝いをしていた。


 北の魔境を攻略し終えた俺達は次の魔境を探している。しかし、東と南、そして中央にある魔境は遠いのでそれなりに時間がかかってしまうだろう。


 という訳で、暇な時間はダンジョンでレベリングをしつつ村の悪魔達と交流を深める時間だ。


 先生と呼ばれ、かなり慕われるようになっているが、それにあぐらをかいていてはダメである。


 定期的に村の手伝いをして、ちゃんと好感度を稼ぐ。魔術を教えるのが主な仕事だがら、自分たちの復習にもなるのが丁度いいな。


「ありがとうございますジーク先生!!ここがよく分からなかったのですが、お陰で理解出来ました!!」

「それは良かった。これからも頑張って練習するんだぞ。魔術は勉強した分だけ強くなれるからな」

「はい!!」


 ぺこりと頭を下げて、教えを書いた紙を嬉しそうに持っていく悪魔。


 彼女は確か、この村で唯一の料理屋を営んでいる悪魔だったはずだ。


 この村は基本物々交換が買い物の主流なのだが、彼女は食材さえ持ってくれば無償で料理を作ってくれる滅茶苦茶いい悪魔である。


 毎日のように多くの人が彼女の料理を食べに足を運び、毎日のように騒がしい夜を過ごす。


 料理好きの悪魔であった。


 俺も彼女の料理を何度か食べたことはあるが、限られた食材の中でかなり美味しい料理を作ってくれてたな。


 ちなみに、未婚な上に料理上手で愛想もいいので、男悪魔からかなりの人気を集めている。


 俺が知る限り、最近はロザリー、カーリー、そして彼女の派閥がこの村の中にはあった。


 ウルが呆れていたな。“これだから男は........”と。


「デモット先生。ここはどう言う仕組みなんですか?」

「デモット先生、私、ここが分からないんですが........」

「デモット先生、私にも教えてください!!」

「あの、先生呼びはやめて欲しいと何時も言っているのですが........」


 俺が1人教え終わると、横で魔術を教えていたデモットに多くの女性悪魔が寄ってくる。


“先生”と呼ばれたデモットは、にこやかにしながらもとても迷惑そうな雰囲気が出ていた。


 そして、教えを乞う悪魔の中に野郎は居ない。


 そう。デモットはこの村の中で物凄くモテるのであった。


「あらあら。大人気じゃないデモット」

「そりゃ、勤勉で博識、性格も良くて顔も悪くない。何より、普通に強いとなれば、モテない理由がないわな。先生って呼ばれるのはすごく嫌そうだけど」

「良くも悪くも、私達のことを凄く尊敬してくれているものね。私達と同じ“先生”である事を嫌がるのは無理もないわ」

「こんな師匠としてだいぶ怪しい俺達を尊敬してくれるのは嬉しいけどな。ちょっと憧れが強すぎるのが問題か。俺達も可愛がりすぎてるし」

「ふふっ、そうかもね」


 デモットは、俺から見ても相当な優良物件である。


 強くて優しく、料理もできて博識。コミュ力も高いので、多くの女性悪魔がよってくるのは無理もない。


 やったなデモット。ハーレムできるぞハーレム。


 今のデモットは、男爵級悪魔程度ならひねり潰せるぐらいの強さがある。そう考えれば、この村でウルやガレンさんを除いた強さでは一二を争うだろう。


 悪魔の中では変わり者が集まるこの村であっても、強いやつと言うのは結構注目される。


 デモットが黄金の城に見えてしまうのは無理もない。


「なんというか、弟子がこんなに慕われていると師としても鼻が高いな。本人は、先生呼びが本当に嫌そうだけど」

「それに気がつけないとデモットを落とすのは無理そうね。その点で言えば、ポートネス辺りは脈アリなのかしら?」

「いや、あれは単純に頭が終わってるから無理だろ。この前、デモットを実験台にしようとして追いかけっこしてたぞ」

「........ポートネスもかなりの問題児ね」


 一体誰がデモットを落とすのか。そんな話をしていると、本命馬がやってくる。


 小さな体に大きな本を抱えながら、俺のそばによってきた片角の少女。


 デモットがこの村に来てから、ずっとデモットの事が気になっている健気で可愛い少女のナレちゃんだ。


 ちなみに、彼女の年齢は10歳らしい。この前、誕生日パーティーで初めて知ったよ。


「ジーク、この本読んで」

「ん?珍しいな。俺に本を読んでなんて。デモットじゃなくていいのか?」

「デモット、忙しそう。あまり迷惑はかけれない」


 昔ならデモットが何をしていようが“デモット!!”と言って甘えてきたはずなのに、今じゃ怖いはずの俺に本を読んでと頼んでくるとは。


 成長したと喜べばいいのか、子供らしさが無くなってしまったと嘆けばいいのか判断に困るな。


 ナレちゃんは俺の事を未だに少し怖がっている。なんでも、色が見えないから怖いんだとか。


 どうやらナレちゃんには権能とは違いスキルがあるらしく、それが人の色を映し出すらしい。


 権能は使えないが、スキルは使える。つまり、スキルと権能は別の力ということか。


 子供に恐怖を抱かせる色ってなんだよとは思うが、まぁ、普通に“何となく嫌い”とかじゃなくて良かった。


 今じゃ普通に話すぐらいにはなっているしな。微妙に怯えられているのは変わらないけど。


「デモットに迷惑をかけれないのか?大人に迷惑をかけるのが子供の仕事だろ?」

「........デモットに嫌われたくない」

「ふふっ、随分と可愛らしい理由じゃない。通りで最近はデモットの横を歩くことが少なくなった訳だわ」

「デモットは強くないたい。私がそれを邪魔したら、デモットに嫌われちゃう。大人達も今日は忙しそうだし、暇そうなジークぐらいしか本を読んでくれなさそう」


 消去法で俺が選ばれたんかい。


 それにしても、エレノアの言う通り随分と可愛らしい理由だ。


 好きな人に嫌われたくないから、自分の我儘をこらえる。


 子供ながらによく考えているじゃないか。


 少なくとも、そこで下心丸出しにしながらデモットの事を“先生”と呼ぶ悪魔達よりはちゃんと考えているよ。


 そんな可愛い恋する少女には、プレゼントをあげるとしよう。


 俺は思わずナレちゃんの頭を撫でてやると、デモットに話しかけた。


「デモット、そっちは俺達が教えてやるからお前はお前にしかできない仕事に行ってこい」

「はい?」

「ナレちゃんが来たんだ。本を読んで欲しいんだとよ」

「で、デモット。この本読んで」


 ........狙ってんのか?狙っているのか?


 本で顔の下半分を隠しながら、上目遣いでデモットに甘えるナレちゃん。


 半年前とはえらい違いだ。これが悪魔の成長ですか。いや、女の子の成長か。


 久々に自分に甘えてきたナレちゃん。デモットはそんなナレちゃんに爽やかな笑顔を見せると、ナレちゃんをお姫様抱っこしてあげる。


 ナレちゃんは顔を真っ赤にするが、とても嬉しそうであった。


「すいません、あとはお願いできますか?」

「任せとけ。こう見えてもお前の師匠なんだ。お前よりも分かり易く教えてやるよ」

「ジーク........ありがと」

「気にすんな。甘えるのは子供の特権だからな」


 こうして、ちょっとだけナレちゃんと仲良くなれた気がした俺は、あからさまにテンションの下がった悪魔たちに魔術を教えてやるのであった。


 尚、二名ほどヤバいやつがいて“ナイスですジーク先生!!私達がデモットさんに近づくことで、ナレちゃんの可愛い姿が見れました!!”とか言ってきた奴がいた。


 厄介カプ厨がよぉ........素直に見守るだけにしておけよ。


 ナレちゃんとデモットに告発するぞ。





 後書き。

 洗練されたコメ欄大好き。可愛いで埋め尽くされてた時ちょっと笑った。

 サメちゃんも執事くんも可愛いんだよね。

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