ネズミ君
伯爵級悪魔の街へと降り立った俺達は、早速行動を開始した。
デモットが満足するでその感動を味あわせてあげた後、俺達は陰に隠れて目的地まで突っ走る。
最優先はカーリーさんと言う、今回逃げてきた悪魔の人の妹。
特徴は聞いているので、多分見間違えることは無いはずである。
「監禁されているなら、領主の館にある部屋のどこからしいな。どうも、この街の側近は領主と同じ家に住んでいるみたいだし」
「そこは人間と同じよね。住み込みの使用人とかよくいるわ。側近もほぼ使用人みたいなものだから、とりあえず家を目指せばいいのは楽でいいわね」
基本的に権力者とは、その家に使用人を住まわせる。自分の権威を見せつけるためにデカイ家を建てていることが多い為、その管理のために人を雇うのだ。
皆が皆、俺のように魔術で全部何とかするわけじゃないからな。そもそも、俺の魔術は難易度がかなり高いから真似しようと思っても中々できないし。
魔術を知らない悪魔ならば尚更だろう。家の管理をしてくれるなんて言うピンポイントな権能を持っている悪魔なんて、多分数える程しかいないはずだ。
「あれか。しっかりと柵で囲われているし、侵入するのは結構大変そうだな」
「そうね。侵入者への対策も立てられてそうだわ。と言うか、立てられているわね。ほら、あそこ。門の前に魔力の残滓が見えるわ。何らかの罠をあそこにしかけていそうね」
空の上から確認していた伯爵級悪魔の館に辿り着くと、そこにはそこそこの大きさの屋敷があった。
空から見ている分にはそこまでの大きさを感じなかったが、こうして地上で見ると結構でかい。
ここから特定の1人を見つけ出すのは結構苦労しそうだな。
いつものようにお得意の人海戦術で何とかできるとは思うが。
そして、侵入者に対する対策もしてある。
エレノアの言う通り、扉の前の地面に魔力の反応が見て取れた。
「どうする?」
「とりあえず、偵察用のネズミ君達を作ったから、これで中を見てきてもらおう。かなり足が早いし、何より即座に消えられるからバレる可能性はかなり低くなるはずだ」
「鳥ちゃんたちは?」
「出さなくていいかな。空から見ても多分分かんないだろうし」
俺はそう言うと、手の平の上にネズミくんを召喚する。
このネズミくんは、闇狼や悪魔くんと同じく自分の意志を持った魔術シリーズの一つであり、こういった潜入や情報集めのために作った魔術だ。
しかし、大抵潜入とかする前に吹っ飛ばすような戦い方ばかりをしてきた為に、あまり使い道がなく活躍させてあげられなかった子である。
呼び出す機会もほぼ無かったしな。ネズミくんには申し訳ないが、俺はこのシリーズの癒し役はサメちゃんだと思っているんだ。
サメちゃんはとにかく甘えてきてくれて可愛いからな。ずっとヒレをパタパタさせて喜んでくれるし、感情が分かりやすくてとても好きである。
モフモフも捨て難いが、個人的にはずっと甘えてくれるサメちゃんの方が好みであった。
「........(おひさ)」
「やぁ、ネズミくん。ごめんな、中々呼び出してあげれなくて」
「........(気にしてないよ。それで、何をすればいいの?)」
「あそこに大きな屋敷が見えるだろう?あそこの中にカーリーさんがいるはずだ。探してきてくれるかい?」
「........(了解。主の記憶にある特徴の子を探してくる)」
「助かるよ。何体ぐらい欲しい?」
「........(僕一人で大丈夫。期待してて)」
手振り身振りで上手に会話してくれるネズミくん。このシリーズ全般に言えることだが、やはりジェスチャーが上手い。
俺と魔力が繋がっているというのもあるが、ここまで普通に会話できると声とか必要ないんだよな。その分余計な魔法陣を組み込まなくて済むし。
「ふふっ、この子も可愛いわね。そうえば、結構前に作った以来、目にすることは無かったわね。元気にしてたかしら?」
「........(エレノア姐さんもお元気そうでなによりです)」
「なんか、私の時だけ硬い気がするのだけれど」
「エレノアだからな........」
「ちょっと、それどういう意味よ」
特に意味なんてありませんとも。毎度毎度自分の魔術の威力検証に悪魔くんを使ったり、天使ちゃんが困惑するほど撫で回した挙句“ほっぺむにむにできない........”とか言って残念がったりしてるけども、別に意味なんてないですとも。
俺と繋がってるから、一応全部の報告が来るんだぞ。特にエレノアに関しての報告は。
天使ちゃんに至っては、“ほっぺをムニムニにできたりしませんか?”とか言って相談してきたんだからな。
頑張って改造したが、そもそも甲冑で顔を覆っていて意味が無いという残念な結果になってしまっているけど。
ちなみに、メイドちゃんはムニムニである。偶にエレノアにムニムニされて、めっちゃ嬉しそうにしてる。可愛い。
「さて、一人で十分なら任せてみるか。もしダメそうだったら言ってくれよ。追加を出すから」
「........(もちろん。それでは行っきます)」
ネズミくんはピッと可愛く敬礼した後、俺の手から飛び降りて爆速で屋敷へと向かっていく。
足はっや。あの小さな身体でよくもまぁあんなに走れるものだ。
「これであとは報告を待てばいいな。その間はちょっと街を見て回ろう。初めての魔界の街を楽しもうじゃないか。だからエレノア、腹いせに俺のほっぺをムニムニするのはやめて。謝るから」
「ん、反省したかしら?」
「した。いっぱいしたから」
こうして、俺達は観光に戻る。今日の夜には見つけられるかな?ネズミくん、あんな小さなからだなのに超高スペックだからなんとかなるやろ。
【ネズミくん】
第七級黒魔術“闇鼠”によって生み出された、ジークの魔術。高い知能を持ち、ある程度の戦闘力もかねそなえている。
最上級魔物ぐらいまでなら簡単に捻り潰せるので、ネズミの見た目をしているから弱いなどと油断するとあっという間に殺される。
この子達はノリがいいと言うよりかはクール系。ノリのいいキャラだとほかと被るなと判断して、クールキャラを演じている。賢い。
伯爵級悪魔の館への先入に成功したネズミくんは、そのまま屋敷の中へとはいる。
扉の前に罠が置かれていたが、そもそも影の中に入って身を隠してしまえばトラップは発動しない。
ネズミくんは悪魔の使用人の影の中に潜むことでトラップを回避したのである。
「........(中は思ったよりも綺麗だな)」
ちょっとした死亡フラグをわざと立てながらも、ネズミくんは迷うことなく影から出て屋敷の中を移動し始めた。
行き当たりばったりで探している訳では無い。ネズミくんには探知系魔術が多く搭載されており、本格的な潜入が可能な忍びなのである。
ネズミくんは、とりあえず片っ端から気配のする方へと向かい、その顔を確認しては“これも違う”と判断していく。
あれは違うこれは違う。
そう確認しながら館の中を走り回ること2時間弱。ネズミくんはお目当ての特徴もを持った悪魔を発見した。
姉と同じくピンク色の髪。そしてどこか姉の面影を感じる顔。そして、姉と同じく豊満な胸。
唯一違う点は、髪の長さ。姉はショートヘアだったのに対して、妹はポニーテールで長い髪を纏めていた。
「........(すごく分かりやすくて助かる。あれが主の探していた人だ)」
ネズミくんは“あ、いや、悪魔か”と、どうでもいいことを考えつつも主であるジークに合図を送る。
これで、妹の居場所は把握した。後は、騒ぎになりにくいように助け出すだけ。
なぜ騒ぎにならないように助け出すのか。それは、後で観光を楽しむためである。
こうしてジーク達は今晩の内に、救助をしようと言うことになったのであった。
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