初日終了
わざとモンスタートラップを起動させ、迫り来る魔物の群れと戦うこと僅か15分。
森の中で不自然に開けたこの場所にたっているのは、俺とエレノアの二人だけとなった。
エレノアは汗ひとつ流すことなく、気分良さそうにそこら辺に落ちている素材を拾い上げる。
「大したこと無かったわね。流石に1人じゃ死んでたでしょうけど」
「楽しそうでなによりだ。態々魔物を探さなくてもいいし、これは効率がいいな」
「途中でレベルも上がったしね。レベル12になったわ」
「それは良かった。俺は上がらなかったけど」
「レベルは上がれば上がるほど次のレベルに行きにくくなるのよ?既にレベル21の癖に、私と同じペースで上がったら私が困るわ」
エレノアはそう言いながら、拾い上げた素材を見て苦い顔をした。
レッサーウルフの毛皮なのだが、この激しい戦闘に巻き込まれてグチャグチャになってしまっている。
これは売れるとしても、買い叩かれるだろうな。下手をしたら買い取って貰えないかもしれない。
「沢山魔物が出てきてくれるのはいいけど、落とした素材が戦闘に巻き込まれて使い物にならなくなるのは何とかしないとね。レベル上げには持ってこいの場所だけど、お金稼ぎとしてはあまり効率が良くなさそうだわ」
「だからこそ、ランクの高い冒険者もこの手法をやらないんだろうな。特に、戦士系の冒険者にとってこの数は脅威だし」
「そうね。ざっと見ただけで200近くの魔物が出てきてたわ。半分以上は最初の魔術で吹き飛んだけど」
「魔術師からすれば、固まって襲ってくるだけの的だしな。とはいえ、魔術だけでどうにかなるレベルでは無いけど」
「ジークお得意の狼攻撃なら余裕なんじゃない?ほら、数はこっちの方が圧倒的に多そうだし」
「俺なら余裕だろ。多分。多少は肉弾戦も強要されそうではあるけどね」
これだけの魔物が出てくるのだから、狩りの効率としては持ってこいだ。
だが、戦闘の余波によって素材のほとんどが使い物にならなくなる。とくに1番高く売れるレッサーウルフの毛皮がダメになるのは痛手だった。
そりゃランクの高い冒険者もこの手法をやらない訳だ。頑丈な魔石は売れるだろうが、これだけの労力を払って魔石だけを手に入れるかどうかと言われればNOと答えるだろう。
労力に対して、利益があまりにも少ない。
が、レベル上げがメインである俺たちにとってはこの狩場は持ってこいの場所である。
傍から見ればイカれてるだろうが。
「とりあえず売れそうなものだけ集めるか。戦闘が終わったあとの素材集めも面倒だな........」
「ジークの狼達に指示を出せばいいじゃない。その間は私達はゆっくり出来るわよ」
「........エレノア、お前天才か?」
「ジークって、たまに馬鹿よね。普段は頼れるのに」
残念そうに俺を見つめるエレノアを他所に、俺は闇狼達をひたすら作り出していく。
全部出さずとも回収はできそうなので、とりあえず100体だけ作り出した。
「相変わらず化け物じみた魔力量ね。魔術が得意とされているエルフよりも魔力量が多いんじゃない?」
「エルフか、確か森の中に住む種族で魔術適正が高く、身体能力が低いのが特徴だったよな?」
「そうよ。人間とはあまり仲が良くないと言うのも有名ね。かつては戦争をしていた仲よ。エルフは長寿だから、恨み事を忘れにくいのよね」
まるでエルフと会ったことがあるような言い方だ。
エドナスの街は、小さい街なのでエルフを見ることは無かった。
首都に行けば多少は居るらしいが、それでも珍しさから目立つらしい。
この国と面している国家に、エルフの国が無いのも原因のひとつだろう。
その代わり、獣人はそれなりに居る。
冒険者ギルドでも何度か見かけたし、エドナスの街でも何度か見かけた。
俺は、エレノアのセリフに引っ掛かりを覚えつつも、過去の詮索はしない方がいいと察して突っ込むことはしなかった。
お互いに、秘密があるのは分かっているし、語りたくないのなら語らない。
俺達はパーティーメンバー。“今”を知っているならば、それで問題ないのだ。
「エルフの国もいつかは行ってみたいな。話を聞く限り、人間は嫌われてそうだけど」
「そうね。エルフの国に行ったら多分、すごい睨まれるわ。主に、ご老人に」
俺はエレノアとこの世界の種族の話に花を咲かせながら、闇狼達が素材を回収してくるまでゆっくりと腰を下ろすのだった。
ちなみに、モンスタートラップが再び作動したら困るので、森の中に移動してからの休憩だ。
2連チャンはさすがに疲れる。
【獣人】
人間に獣の特徴を合わせた種族。身体能力が高い代わりに、魔術適性が低い事で知られており、獣人の魔術師はかなり希少である。
素材の回収を終えた俺達は、その足で第三階層に降りていった。
とは言っても、地図もないこの状況で探索はしない。今回はチラ見と、闇狼達を放つのが目的だ。
第三階層に降りると、そこはまたしても森。
話には聞いていたが、3連チャンで森となるとさすがに嫌気がさす。
俺もエレノアもうんざりとした表情を浮かべていた。
「だるいわ。またこの森の中を歩くなんて」
「気持ちはわかる。俺も代わり映えのない景色にうんざりだ。でも、ここはレベル上げに最適だぞ。中級下の魔物がいるからな」
第三階層に出てくる魔物はオーク、グレイウルフ、ブラウンビー、ゴブリンソルジャー(またはゴブリンメイジ)の5種類だ。
ここら辺の魔物は今のエレノアのレベルでも雑魚呼ばわりはできないレベルであり、この階層にやってくる冒険者はグッと減る。
中級下って銀級冒険者が討伐できる基準と言われているからな。
オークはよく物語で出てくるあのオークだ。豚のような醜い見た目と太ったでかい体。
我らが日本で有名な“くっ殺”によく出てくるアレである。
まぁ、この世界のオークは人間を食糧として襲ってくることは有るけど、繁殖目的で襲うことはないんだよな。
魔物と人では、体の構造が違いすぎてそもそも繁殖できないらしいし。
グレイウルフはレッサーウルフの上位互換。毛皮は高級な服によく使われる。
ブラウンビーは茶色のでかい蜂。話でしか聞いたことがないが、かなり大きな群れを作って襲ってくるそうなので注意が必要だ。
そしてゴブリンソルジャーとゴブリンメイジ。
エドナスの森で闇狼達がシバキまわした雑魚である。こいつとオークが同列に扱われていることに、涙を禁じ得ないな。
ちなみに、闇狼にとって天敵なのはゴブリンメイジだ。ゴブリンの村を襲撃した際にも居たらしいが、突然の奇襲とその数の少なさから魔術を放つまもなく食いちぎられていたらしい。
流石は俺の闇狼。最も危険な相手に、一切の反撃を許さずに殺すとはやりおる。
「中級下と言うと、かなり強いわよね?」
「少なくとも、さっきみたいなモンスタートラップを嬉々として踏みに行くのは無理だな」
「言われなくてもやらないわよ。ジークがやろうと言い出したらその顔をぶん殴ってるわ」
「流石にそこまでイカれてない。エレノアのレベルが15になるまではモンスタートラップを踏んでレベル上げをしよう。今日とは違って、俺はなるべく魔物を倒さないようにするから、エレノア1人で出来るだけ魔物を倒すんだぞ?」
「あぁ、またあの地獄が始まるのね。そして、ジークは闇狼を使って苦労することなくレベルを上げると」
「嫌なら闇狼を維持できるだけの魔力量を手に入れたら?」
「出来たら苦労しないわよ。分かってて言ってるでしょ?ぶっ飛ばすわよ」
そう言ってトンファーを握りしめるエレノアからさりげなく距離を取りつつ、俺はこの森の中に闇狼達を放つのだった。
指示を与えるのは少し苦労したが、一先ずは問題ないだろう。
あ、そろそろ闇狼達の魔術も改良しないとな。
そんなことを思いつつ、今日のところは引き上げる。まだ昼を少しすぎたぐらいだが、初日はこんなもんでいいだろう。
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