モンスタートラップ
第二階層にあるモンスタートラップは、第三階層へと続く階段から少し離れた場所にある。
地図曰く、そこだけ不自然に開けた場所であり、恐らく第三階層へと降りる前に休憩の場として使おうとした冒険者達を狩るために設置したのだろう。
流石ダンジョン。やることが汚い。
俺とエレノアは、そのモンスタートラップに向いつつ道中で出会った魔物をシバキ倒しては素材を回収していた。
レベル上げのことも考え、エレノアが優先的に魔物を処理して貰っているが、傍から見たら
「あそこかしら?不自然に開けてるし」
「だろうな。あの広場の中心部に行けば、罠が発動してどこからともなく魔物がわんさか湧いてくるはずだ」
「ちょっと楽しみね。腕がなるわ」
エレノアはそう言うと、手に持ったトンファーをクルクルと回す。
否、クルクル所か風を切る音がする勢いでぶん回しているのだが、それだけこのモンスタートラップを踏むのが楽しみなのだろう。
つい5ヶ月ほど前は、ゴブリンの村を見つけて震えていた少女とは思えない肝の座り方である。
今のエレノアがゴブリンの村を見つけたら、嬉々としてゴブリンを殲滅しに行ってしまいそうだ。
俺は“人って成長するもんだな”と思いつつも、一旦モンスタートラップの前で休憩を取る事にした。
体力は十分にあるし魔力の残量も問題ないが、念の為である。
俺とエレノアは、自分の武器が問題ないか確認しながら作戦を練った。
「恐らく、全方向から魔物がやってくる。どこに魔術を放っても当たるぞ」
「なら、広範囲を攻撃出来る魔術を放つのが良さそうね。最初から思いっきりぶっ飛ばしたいわ」
「いいんじゃないか?第二級魔術を乱発するよりも、広範囲攻撃を持った第三級魔術を放った方が魔力効率もいいしな。何を撃つ?」
「殲滅力があった方がいいわよね?なら、風魔術はナシね。火力が低いわ」
「そうだな。素材の事は一旦考えずに、今回は全力で行こう。となると、火力の高い炎魔術か、土魔術辺りか?」
「そうね。大規模な炎魔術は森にも被害が出そうだし、土魔術でいいんじゃないかしら?私も問題なく使えるしね」
「よし、それじゃ俺は黒魔術で吹き飛ばそう」
「........そこは一緒に土魔術を使う流れじゃないのかしら?」
流れをぶった斬った俺にジト目を向けるエレノア。
いいね。そういう顔もカワイイヨ。
俺はエレノアの鋭い視線から目を逸らしつつ、少し言い訳じみたことを言う。
「いや、覚えたはいいけど使う機会が無かった黒魔術があるんだよ。大丈夫。既に闇狼達は回収してあるから」
「........まぁいいわ。お互いの背中を守りつつ、目の前の敵をぶっ飛ばせばいいんだしね。やるなら思いっきりやってよ?」
「任せろ。こんな所で死ぬようなポカはしないからな。持てる全力を全て使ってやるさ」
「期待してるわ。相棒」
「おうよ。俺な背中もしっかりも守ってくれよ?相棒」
俺とエレノアはそう言って拳を突き合わせると、短い休憩を終えてモンスタートラップがある開けた場所に足を踏み入れる。
さぁ、久々に本気で行くとしますか。
【モンスタートラップ】
ダンジョン内にある罠のひとつ。罠を踏めば最後。大量の魔物が襲いかかってくる事となり、余程実力のあり魔物が弱くなければ突破できないとされている。
罠の張り方は様々で、開けた場所そのものが罠だったりある場所を踏むと罠になっていたりと様々。初見では先ず引っかかる。
普通の冒険者は安全のために避けて通ることが基本だが、偶に頭のトチ狂った冒険者が興味本位で罠を踏むこともしばしば。
モンスタートラップをワザと踏み抜きに行く俺達は、開けた場所の中心部にやってきた。
すると早速、周りの森から数え切れないほどの気配を感じる。
これ、全部魔物か。かなりの数だな。
「お出ましね。今回はジークがいるから安心だわ。30近い魔物の群れに1人で突っ込むよりかは」
「それは良かった。もし、効率が良さそうなら、今度から毎日ここに通うか」
「........週に一回ぐらいは休みが欲しいわね」
全く緊張して居ないエレノアを頼もしく思いつつ、俺とエレノアはほぼ同時に魔術を行使するための準備に入る。
今回使うのは、第三級黒魔術“
練習のために何度か家の庭で使ったことがあるのだが、貫通力が強すぎる上に範囲もかなりのもので、庭をボコボコにして怒られた事がある。
この魔術は行使する際に魔力量を調節すると範囲を変えることが出来るのだが、それなら単発の魔術を使った方が正確だと言うことで、使う機会に恵まれなかった魔術でもある。
今回は、想定さてれている以上に魔力を注ぎ込んで圧倒的広範囲攻撃を実現させてやろう。
一直線に迫り来る魔物達。だが、俺達は既に迎撃の準備を整えている。
「行くぞエレノア」
「えぇ、行きましょう。魔物共にありったけの魔術をぶち込んでやるわ」
魔物との距離が約20メール程になったその時、俺とエレノアは準備していた魔術を行使して魔物達を一斉に迎撃する。
「「貫け」」
同時に発動された魔術は魔物達を無惨に殺していき、悲鳴をあげる間もなくその姿を素材へと変える。
ちらりとエレノアの方に視線を送れば、土の棘が魔物達を貫いて串刺しにしていた。
あの魔術は確か“
魔力消費が少ない代わりに、地面に体の一部が接していないと使えない魔術だ。
ほかの魔術とは違い、一から全てを生成するのではなくすである物の形を変える事によって攻撃力を生み出す魔術である。
その証拠に、土の棘が生えている根元の地面はぐちゃぐちゃになっていた。
「使えない魔術ってそれ?私の知ってる魔術の筈なのに、知らない魔術だわ。範囲が可笑しすぎる」
「ぶっちゃけ俺もこんなに広範囲になるとは思ってなかった。下手したら冒険者を巻き込んでるかもな」
空から降る黒い矢の雨は、100メール以上もの範囲に降り注ぎ魔物達を貫いていく。
それなりに広い場所であるにもかかわらず、魔術の一部が森の中にまで降り注いでいた。
多分、近寄っている冒険者は居ないだろうが、居たら大問題だな。
いっこうに俺たちに近づけない魔物達だったが、魔術とは魔力が切れれば効力を失う。
運良く生き残った魔物達は、仕返しとばかりに雄叫びを上げてこちらへ迫ってきた。
「もう1発魔術を叩き込んでおくか?」
「いや、残り数も少ないし、訓練のために殴り飛ばしてしまいましょう。久々に私のトンファーが暴れるわ」
エレノアはそう言うと、目の前の魔物たちに突っ込んで行く。
せめて、“フォローよろしく”とかいう言ってから突っ込んでくれよ。合わせるのが大変じゃないか。
俺はそう思いつつも、剣を抜いてエレノアの後ろについて行った。
「フッ!!」
「グギァ!!」
エレノアがその手に持ったトンファーでホブゴブリンの顔を殴りつけると、ホブゴブリンは悲鳴をあげながら素材へと姿を変える。
よくよく考えてみれば、1発殴るだけで相手を殺せるとかヤバいパンチ力してんな。
エレノアとはよく手合わせをしているが、一度もまともに攻撃を食らったことがないので忘れていたが、エレノアのパンチ力はゴリラにも勝るのだ。
「久々に殴ると気持ちいいわね!!ジークと手合わせしても、攻撃なんて届かないから爽快感が凄いわ!!」
「そりゃ良かったな。だが、そんな勢いで殴られたら俺も死ぬ」
「大丈夫よ。ジークは頑丈なんだから。レベルも高いしね」
会話をしながらも余裕で魔物を殴り殺すエレノアを見て、実は結構ヤバいやつなのでは?と思いつつ、俺はエレノアが取り逃した魔物の首を跳ねていくのだった。
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