第二階層


 第一階層を迷うことなく突破し、第二階層へと続く階段を降りていく。


 ほぼ一直線に第二階層へと続く階段を目指したのだが、その間だけでも四回魔物と接敵した。


 3度はゴブリンの群れと、残る一回はコボルトの群れだ。


 エドナスの南に広がる森では探し回っても二回出逢えばラッキー程度しか見つからなかった魔物が、僅か30分程度で四回も出会っている。


 これは放置狩りをするには持ってこいの場所だな。もう少し強い魔物が居る階層で狼達を放てば、今まで以上にレベル上げの効率が上がることだろう。


 放置狩りしがいのあるダンジョンだ。


「魔物の死体はやっぱり消えたわね。素材だけ残してくれるから、解体の必要が無いのは楽でいいわ」

「最初から魔物なんて居なかったかのように消えたな。ゴブリンは魔石と牙だけを残して、コボルトは魔石と皮を残していった。ダンジョンは、人が欲しがる物を分かっているらしい」

「コボルトの皮を落としてくれるのは有難いわ。解体が面倒な上に血生臭いもの」

「それに関しては同意だ。大した金にもならないし、解体は面倒だし、見た目は気持ち悪いし。いい所無しだな。コボルトは」

「これでゴブリン並に繁殖力と環境適応能力があったら最悪ね。世界で最も嫌われる魔物として歴史に名を残せるわ」

「既に残してる気もするがな........」


 ダンジョンにて接敵した魔物は、全てエレノアの魔術によって殺された。


 最下級魔物など、今のエレノアでは相手にもならない。レベル11であり、強くなるための努力を続けるエレノアは、そこら辺のレベル11より圧倒的に強かった。


 もちろん、本人の才能もあるだろうが。


 そして、噂に聞いていた通り素材だけを残して魔物の死体はフッと消えたのである。


 しかも、破壊した魔石すら落としてくれるのだから、素材のことを考えて手加減すると言う面倒な手間がない。


 ふと思いついてエレノアに指示を出してみたが、これはかなり有難い仕様だった。


 闇狼達に出す指示が減るし、魔物の被害を考えずに戦ってくれるから普段以上に容赦なく噛み殺せる。


 ダンジョンってやはり神なのでは?


 下へと続く階段を降りていく中で、何度も冒険者とすれ違う。


 地図が無料で渡される第一階層と第二階層は、冒険者にとって人気の狩場だ。


 第二階層では下級魔物であるホブゴブリン、レッサーウルフ、レッサースネークが出現する。


 レッサーウルフの毛皮は服によく用いられる上に、頑丈で防具にも使えるので需要が高くそれなりの値段で取引される。


 第二階層に降りるなら、レッサーウルフをメインとして狩りたいな。


 長い階段を降りると、そこはまたしても森の中だった。


 エレノアはうんざりとした表情を浮かべながら、即座に周囲の警戒をしつつ愚痴をこぼす。


「知ってはいたけど、また森となると面倒ね。木が死角になって警戒を怠れないわ」

「薬草に気を取られて奇襲を貰うなよ?また探し出すのは大変だからな」

「分かってるわよ。わざと言ってるでしょ」


 エレノアをからかうと、エレノアは頬を赤くしてそっぽを向く。


 エレノアはホブゴブリンに奇襲を仕掛けられ、俺に助け出されたことが恥ずかしいらしく、この話題を出すと大抵顔を赤くする。


 自分に100%非がある上に、俺に助け出されたので強く俺に抗議できない。


 しつこくこのネタを擦るとエレノアが不機嫌になるのは分かりきっているので普段は言わないが、こういう時に少し弄るぐらいは許されるだろう。


「ここら辺には魔物は居ないようね」

「そうか。取り敢えず第三階層に続く階段を目ざして移動しよう。下級魔物も今のエレノアからすれば雑魚同然だしな」

「そうね。群れの大きさにもよるけど」


 あからさまに話題をそらすエレノアに乗っかってやりながら、俺達は第二階層の森の中に入っていくのだった。


【コボルト】

 最下級魔物の一体であり、醜い二足歩行の犬畜生。

 比較的緩やかな気候の場所に生息し、その鋭い嗅覚で獲物を探す。ゴブリンと同じく、群れを作る魔物であり、5~6体の群れが基本。

 売れる素材は魔石と毛皮。毛皮は服や防具に使われるが、加工しにくかったり防御力が無かったりと欠点だらけで、あまり人気ではなく買取価格は安い。


 第二階層に広がる森の中を歩く俺達は、順調に魔物を倒しながら進んでいた。


 普段から歩き慣れた森の中で、警戒も怠らなけば向かうところ敵無しである。


「上にレッサースネーク」

「見えてるわ。弾けなさい」


 無詠唱で行使された第二級魔術“火球ファイヤーボール”を魔物に打ち込むと、魔物は苦しむ暇さえ与えられず息絶える。


 木の上に乗っていたレッサースネークは、素材を地面に落として消えていった。


 相変わらず魔術に関しては凄いな。俺も同じことは出来るだろうが、魔力ロスが少ない上に滑らかに構成される魔法陣は芸術的だ。


「この階層の魔物も余裕ね。群れでも勝てるわ」

「だろうな。第二階層の適正レベルは大体5~8。レベル11のエレノアとレベル21の俺じゃ相手にならんよ」

「つまらないわ。群れが相手でも基本魔術で片付くし」

「命のやり取りがしたいのか?」

「そこまでは言ってないわよ。でも、もう少し手応えが欲しいわね」


 この街に来る前のレベル上げで魔物の群れに突っ込んでは暴れてきたエレノアにとって、この安全な狩りはとても退屈だったらしい。


 うんうん。そう言うと思ったよ。


 いい感じに戦闘狂バトルジャンキーになりつつあるエレノアを俺は嬉しく思いながら、エレノアのお気に召すであろう提案をする。


「それなら、モンスタートラップを踏みに行くか?」

「モンスタートラップ?」

「簡単に言えば、魔物が大量に出てくる罠がある場所だ。そこをわざと起動させて大量の魔物を呼び込めば、エレノアも楽しめるだろ」

「........安全マージン云々の話しはどこへ行ったのかしら?どう見ても危険でしょそれ」

「大丈夫、大丈夫、最初は俺も戦うから。出てくる魔物も、その階層で出てくる魔物以外は出てこないらしいし、数だけながら余裕で張り合える」


 レベル21となった俺が放てる闇狼ダークウルフの数は387体。マジックポーチやバックの維持に魔力使っているの関係でこの数しか出せないが、その気になれば450ぐらい行けるだろう。


 そして、相手はホブゴブリンやレッサーウルフと言う雑魚同然の魔物達。肉弾戦でも10体ぐらい纏めて相手で来てしまう程弱いのだ。


 十分に安全マージンは確保出来ているだろうし、いざとなれば逃げて全てを闇狼達に任せてしまってもいい。


 エレノアも俺の考えていることが分かったのか、少し好奇心に溢れた表情になる。


「そうね。ジークがいればなんとでもなるか。いざとなったら守って頂戴ね」

「任せろ。流石に絶望級の魔物が出てきたりしたら無理だけどな」

「その時は私も死ぬわよ。人類が討伐不可能と位置づけてる魔物なんだから」


 こうして、俺達は第三階層に向かう前に少しだけ寄り道をすることとなった。


 出てくる魔物の量によっては、今後のエレノアのレベル上げとしてモンスタートラップを踏むなんてやり方もありかもしれないな。


「........今、なにか寒気がしたんだけど」

「気のせいだろ」


 嫌な予感を覚えたエレノアが、俺を軽く睨みつけるが俺は何も知らないフリをして地図を片手にモンスタートラップがあると記された場所に向かう。


 半年近い付き合いで、俺に対する理解が深まっているようで何よりだ。


【レッサーウルフ】

 下級魔物の狼。見た目は少し痩せた狼であり、灰色と黒の交じった毛が特徴。

 強さはホブゴブリンと大差なく、群れを作って行動する。

 素材は魔石と毛皮。コボルトと違い、加工がしやすく防御力もあるため、服としても革防具としても人気が高い。

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