第4話奇跡の日

翌日、超大型の台風は私の住む地域を直撃した。

ガタガタと私の住むマンションが揺れる。まるで地震のようだ。

私はベッドから出て、テレビをつけた。

ちょうどテレビではその台風がいかに大きいか、アナウンサーが気象予報士にきいていた。その台風は数十年に一度の規模だという。

テレビの画面にはいくつもの警報が流れる。

そらに避難警報も流れる。私の住む地域の名前もそこにあった。

窓から外を見ると突風と共に横殴りの雨が窓に叩きつけられている。

そして私はブチンという音を聞いた。

さっきまでついていたテレビが消えて、照明も消えた。エアコンもシュウウという音をたてて、その動きをとめた。


なんてことだ、停電してしまった。

僕が一番最初に頭をよぎったことは美しい妻の頭だ。

僕は急いでキッチンにむかう。

冷蔵庫を開けて、妻の頭を取り出す。

愛おしくて仕方ないそれを私は抱きしめた。

どうしようか?

冷蔵庫がとまってしまったら妻は腐ってしまう。やっと美しい妻と幸せに暮らせるようになったのに。

私は美しい妻を失いたくない。



一時間ほど私は途方もなく、なす術もなく妻の頭を抱きしめ続けた。

「はーやっと溶けたわ」

それは幾日ぶりにきく妻の声であっただろうか。

私は妻の顔を見た。

真奈美は目をぱっちりと開けて私を見ている。

これはいったいどういうことだろうか?

疑問だけが頭を駆け巡る。

「私は人間じゃないのよ。いわゆる吸血鬼なの。いつも夜に血を吸いに出かけていたのよね。さすがに氷漬けにされたらどうしようもなかったからね」

そう言い、真奈美はがぶりと喉元にかぶりつき、私の血を吸っていく。

私は血を吸われながら意識が遠退くのを覚えた。

まあいいだろう、妻が無事なのなら。

私は消えいく意識の中でそう思った。



終わり

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もっとも美しい女の姿 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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