第12条「エンジンー想いは、言葉に、形に結ぶー」
教室で待っていた
普段は「1時間前行動」が鉄則の
マメな彼女が、遅刻
いつもは、そんなに着飾らない
あらゆる陰の努力を嫌う、効率重視のコスタイ勢が。
今日に限って、この前と違って、髪まで整えて来たからだ。
そう、
それはそれとして、ワンピース。
白ワンピと麦わら帽の、
その破壊力たるや、筆舌に尽くし難し。
思わず、
「だ、大丈夫?」
「……ちょっと、休憩……」
「
来てくれただけでも、
ほら、椅子。
ここ、座って。
てか、そんなに急がなくても平気だよ。
ドタ参させたの、ユウだし。
それに、女性は色々、入用でしょ?
男は、ほら……そこまででもないし」
「そういうんじゃ、ない……。
ハルを、待たせる。
これ、重罪。
「しないから、死なないでね?
くれぐれもね?
はい、スポドリ。
飲める?」
「感謝、永遠に……」
「大袈裟だって。
落ち着いたら、教えて。
こっちも予定、済ませてるから」
「5分……」
「いや、早いな。
遠慮は?
第1条、違反はして?」
「いない……」
「なら、
とりま、今は、ゆっくりして」
「ん……」
給水しつつ、人心地つける
そんな彼女を見守りつつ、
「ん?
あー、これ。
宿題だよ。
っても、夏休みじゃなくて、俺達の。
調子戻ったなら、読む?」
「戻らなくとも、読む」
「お願いだから、戻ってからにしてください」
「ならば、戻った」
「どんな人体構造?
根性論とかじゃない?」
「
コスタイ」
「オッケー、分かった。
確かに、もう平気そうだし」
『
そんなタイトルに、
「……ハル」
「……なんてーか、その……。
……そういう、目的だったじゃん?
当初は、さ。
俺は、『
ナツは、『エコ』『ユニーク』。
互いに、それを見付け合おうって。
今でこそ、
だから、原点回帰ってか、初志貫徹ってーか。
っても、寝不足でグロッキーだったから、纏まってないかもだけど。
「そ、それは、その……。
……猛省」
「ううん。
俺も、悪かったから。
今の言い方も含めて。
これからは、ちゃんと話そ?」
「……一緒?
……これからも?」
「
ナツさえ、
「あー……」
「?」
数分後、気を取り直し、正面に戻す。
「……『
そう、呼んで
その、『ナツ』って呼び方は、カン……。
……別の相手にこそ、
同性同士の秘密
だが、しかし。
自分とて、そこまで鈍くはない。
「……分かった。
じゃあ、『
改めて、
「……ん。
ハル」
「
「問題
特許取得済み」
「いつ誰が
そんで、
そろそろ、読んでやってくれ。
ノートが、可哀想だ」
「……その、意趣返し。
……卑怯」
「
それより、頼むよ」
「御意」
「冷淡で辛辣、無表情で、文章めいて
「長年の一匹狼経験により、ステルス持ちで、存在感を消して行動
「
「口癖は『エコ』『コスタイ(コスパとタイパ)』『カショジ(可処分時間=自由に使える時間)』『カショト(可処分所得=自由に使えるお金』」
「生粋の倹約家なエコロジストで、出掛ける際も外食は極力せず、弁当を持参する他、持ち込み可の安価なスポットにしか行かない」
「常にタイパとコスパを重視しており、言葉や名前を我流で省略する他、豪遊してる不真面目なパリピ連中を嫌悪している」
「普段はアンニュイだが、エコにかける情熱は凄まじく、歌詞や設定も不確定なまま投げ込みだけしたりもする」
「機械的な言動を取る反面、1人称は『
「良く言えば『ミステリアス』、悪く言えば『気まぐれ天然』」
「クラスきっての才媛だが、授業では寝てばかりで、テスト対策どころか受験勉強さえした事が無い(それでいて、当てられると寝起きでも秒で答えられる)」
「資料や知識さえあれば大抵の事は出来るので、料理も作れる」
「相手が気にしている
「中途半端な馴れ合い(=恋人止まり)を嫌い、『生涯の戦友、夫婦』かを見極める、吟味しようとする」
「妙に尊大でマイペース」
「特に告知もないまま、自分だけが知ってる状態で、謎にテストを設ける」
「嘘は、速攻でバレる」
「自意識が
「他者を当てにしておらず、自分だけで解決しようとばかりする(その
「声だけで笑ったり、拍手したりと時折、少し怖い(慣れると
「自虐的な傾向があり、やや被害妄想しがち」
「コスタイを理由に、
「他者への印象が二転三転する」
「セキュリティーが両極端で、外部は厳重、頑丈なのに、内部はガバガバで超近距離型」
「コスタイ勢の割に、話が長い」
「料理が
「互いを尊重し合える」
「妙に話、波長が合う」
「普段はドライだが、『ノートとキャラが気の毒』という理由で、捨てようとした
「歯牙にも掛けられない
「
「
「割と子供っぽく、無表情で頬を膨らませたり、抱き着いたり、
「
「『常に彼を感じていたい』『
「
「
「
「
「
「滅茶苦茶、
「洋風美人なのに、着物も似合う
それは、不調で拵えた即席にしては、充分のクオリティだった。
一つ、不満点を挙げるとすれば。
「……ネガティブ気味」
「
状況的に」
「許した」
「サンキュ」
ポンッと、頭を撫でる
「それはそうと、ハル。
「見詰め直したかったんだ。
俺達の、関係を。
新しい俺達に、なる
「??」
言葉が足りなかったらしい。
気持ちを新たに。
「創作もさ。
エコと、同じだと思うんだ。
人間は、忘れっぽいし、飽きっぽい。
だから、
それを未然に防ぐべく、不変のテーマを、手を替え品を替え形を変えて。
自分なりに噛み砕いて噛み締めて嵩増しして、後世に
要は、『アイデアの3R』な
ひょっとしたら、突飛かもしれない。
単なる感想、拡大解釈かもしれない。
でも、それでも。
相手が
「俺は多分、これからも迷い続ける。
どれが俺で、どれが面白くて、どれがオリジナルなのか、分からなくて。
何度も、何度も、迷うと思う。
でも、二番煎じ、二匹目のドジョウでしかないと認識する中にも。
多少なりとも、相違点は
ハッとさせられる、印象的なシーンや
そういうのは、読者の人達の中でも、頭の片隅
ふとした拍子に、ひょっこり思い出したりして。
パクリ、三文なのを熟知の上で。
罵倒も炎上も覚悟の上で。
そういう発見を、発明して行けたら
「応援する」
「ありがと。
でさ、
ここからが、本題なんだけど」
続いて
「そんな優柔不断、卑怯者、ヘタレな俺にも。
これは
後にも先にも、『俺』だけだって。
こんな『魅力的、ビビッド、ユニークなヒロインに恵まれた人間は、他に
これこそが、『俺の原点、頂点、分岐点』。
そう確信してる、確信してたい人が
僥倖な
なんて
要は、
しかも、『両想い』まで、
だったらさ、
そこまで把握してるのに、このまま現状維持、しがない同志に執着、終着するってのは。
君の言う所の、『コスタイ』に該当する案件だと思う次第でして」
彼女の気を惹き付けそうなワードで結び。
「つまりはさ、
だから、俺のオリジン、エンジンに。
……俺だけの。
彼女に、なってください……」
最後の最後で日和りながらも、右手を差し出し。
きちんと、告白をする
対する
(
「……ハル。
上述の通り。
椅子を持ったまま、
その手を包みながら、
「
……ハルに、抱かれても。
きっと、笑えない。
……大好きなハルを、女として、彼女として。
……妻として、満足させられない。
「
それ、もう……」
「……言われずとも、悟っている。
でも、
「……っ」
そう来ると、睨んでいた。
気遣い屋の彼女なら、きっと。
そこを、懸念事項にしてるだろうと。
昨日、彼女の前で、大見得切って宣言したばかりだから。
でも、と
こんなに心が穏やかなのは。
きっと、それだけが原因じゃないと。
「……ラーキー。
やっぱ俺、肉食系じゃなかったみたいだ」
「……?
どういう意味?」
「耐えられるって
相手が
「……っ。
そんなの、
ハル、苦しむ」
「だろうね。
少なからず、キツいと思う。
だからこそ、『我慢』って明言してる
でもさ、
それでも俺は、君とこそ、一緒に
だって、強がりとかじゃないんだ。
それ
昨日の諸々に、比べたら」
「……あ……」
弱々しく、けれど
彼の、言わんとしている所に。
「別に、当て擦りとか煽りとかではないけどさ。
マジで響いたんよ、昨日のは。
かと思いきや、激重な
しかも、こっちは、反論とか
極めつけに、まだ付き合ってもないのに、フラれるし?
俺の人生において、間違いなく最悪、災厄日だよ」
「……ごめんなさい」
「そうだね。
確かに、アレだったね。
かくいう俺も
「……?
……いつ?」
「うん。
この前、『黙ってられると迷惑』って言ってたけど、自覚
その話は、また今度で
冗長になると判断し、即座に切り。
「
それでも俺は、君と付き合いたい。
別に、今
そりゃ、キス
俺、現状でもほぼ満足してるし。
今の
「80点」
「いや、まぁまぁだな。
ありがと。
とりま、減点箇所は、改めて確認するとして」
またしても脱線しそうだったので、ポイントを切り替えずにスルー。
「そうだなぁ……。
俺達が、成人するまでにしよう。
それまでは、俺も持ち堪えてみせる。
キスとかハグまでは、許して
……自家発電
それ以上の
「……本気?」
「
「……努力?」
「だって、そうだろ?
物心つく前から、親の言い付け守って。
まだ幼いのに、自分の心を封印して。
それが、『努力』じゃなくて、
俺からすれば垂涎物、ただのユニーク・スキルでしか
やっぱ、すげーよ、
「……
……
「ああ。
俺なんかより、
「……
ただ、おこちゃまなだけ」
「でもさ、
まだそれで、誰かが本気で迷惑した
「……誰とも、親しくしなかった。
……ハルを、脱退させた。
……
……結果論に、
「それは、本人達の
つまりはさ、
やっぱ、その呪いはさ。
だったら最後まで、有効活用しよう。
家族を思う優しい気持ちで
きちんと、必要な時には引き出せる
決して、無駄にはすべきじゃない。
「……っ」
普段から自己肯定感が低い分。
殊更、応えたのだろう。
「そもそもさ。
頬膨らませたり、地団駄踏んだり」
「
子供のまま、ストップしてるだけ。
幼少の習性を、この歳でも再現してるだけ。
そこに、『今の感情』は伴わない」
「そうは言うけどさ。
「……?
「だよね。
でもさ、
その、『考える』って行動だって。
感情が
つまり
ただ、『持ってるけど、自覚、表現し
前に、それを題材にした小説を、読んだ
その時、ハマってたから、他にも勉強した。
家庭環境から植え付けられたトラウマによる、ディスコミュや、無関心。
そういった症状が、確認されてるだけ。
そして、それ
ストレスを軽減したり、誰かと接する
ちゃんと、改善
「……っ……。
本、当……?」
「
「つー
それまでに俺も、今より頼もしくなってみせる。
第一、虫が
それを、そんじょそこらの俺が、
俺は、そこまで強欲、傲慢じゃない。
君と同じだよ、
俺だって、どうせなら、君に笑って
もっと互いに、精神的に大人びたい。
その暁に、同じ寝床で、
互いに笑顔で、抱き締めたいんだよ。
こんな
前払いとでも言う
「
俺を、『生涯の戦友、伴侶』扱いしたいんだろ?
だったら、
俺の、これからの5年
喜んで、慎んで、余さず捧げ切ってみせるよ。
互いに無理の
そんで、可能であれば、5年後。
公私、心身共に、大人になったら。
まだ二人が、変わっていないのなら、その時は。
身も心も、結ばれたい」
「……間に合わなかったら?」
「もっかい、互いの関係を見直して。
次のゴール、目標を定めれば
「……予定より、早かったら?」
「言わせんなよ。
俺が、
「……スケベ」
「サラッと下ネタ噛ます、君が言う?」
「……卑怯者」
「昨日の今日で、
「……ロジハラ」
「それは、年中無休で、君にだけは言われたくない」
昨日の仕返しとばかりに、額を合わせ。
「『ハルとなら、付き合える気がする』
君は、そう俺に言った。
その責任を、今。
ここで、取って
だから、
俺と
それから先は、言えなかった。
キスを、されたから。
「んっ……」
両頬を押さえ、
もしかしたら、セーブ
その実、
「……な……。
つ、る……」
目をトロンとさせ、見上げる
「……承知した。
責任、誓いは、果たす」
「……ぇ……?」
「個別ルートに突入した。
これより、
そして、
ハルは、
ずっと……
また、特許かよ。
そうツッコむ隙も、気力も
そんな彼に、
「『
『
最後の、パス・ワード。
今だけは、ハルに、呼んで
「なつ
思わず、名前を口にしかける
噤む前に、再びキスの嵐を受けた。
これでは、どちらが男か、まるで分からない。
そういう意地も、
期待に、応えたくなったのは。
「……『
俺と
「結婚する」
「い、いや、あの……
思い返してみれば、話した当初からトップ・ギアだった気もするけどさ」
「不満?」
「そうじゃなくってさ。
もちっと、こう……段階を……」
「却下」
三度、
それからも絶えず、
「……ハル」
「……んだよ」
「
5年後の、そのまた先に備えて。
100個
「……そこまで、浮かぶ? 作れる?」
「余裕。
その前に、同棲する。
ハルと二人だけで、暮らすから。
その過程で、また見付ければ
「……はい?」
「ハル。
「はいぃぃぃぃぃっ!?」
「入れ。
「いや、入りますけどぉ!?
「やたっ」
「
てか、え、強制!?」
「ハル、
体罰」
「理不尽っ!!
てか、ちょ、待っ……!?
これ以上は、酸素と心臓がっ……!?
ん〜っ!!」
こんなでも、これはこれで、
そんな
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