第8条「ドウジンー隠し事は、なるべくしないー」
「描いてみたんだ。
二人が作った、『エコマンダー』。
っても、普通に同人だけどね」
翌朝。
その日は、夏休み前の、終業式だった。
少し早めに、二人を呼び。
題材は、エコマンダー。
少し前に、
それを
二人しか知らない、エコ戦士である。
「甘いなぁ、ワトジンくん。
君
この世に、一つとして
「イソジ◯みたいに言うな。
あと、こっちの思考を先読みするな。
それはそうと。
ユウ、漫画家志望だっけ?」
「ううん。
正確には、ジャーナリスト。
でも、ほら。
今って、活字離れが嘆かれてるでしょ?
現代人は、
だから、多くの情報を、一遍に求める傾向にある。
その最適解として、漫画も勉強してたんだ」
「確かに、そうだな。
じゃないと、倍速とか切り抜きとか、ショート動画とか。
そういう文化、生まれてないもんな。
んで、俺の近くにも
てか、目の前、隣に」
そのまま、コピー原稿に吸い込まれそうな物々しさである。
「え、エコマンダー……。
……
「
「……え、今ので?」
「ああ。
俺でも中々お目にかかれない、『っ』を叩き出した。
すげーよ、ユウ」
「ま、まぁ、うん。
喜んで
「締結」
漫画を机の上に置き、
ブンブンブンッと、シェイク・ハンドする
「
「ううん。
私が、勝手にやった
それより、
これからは私も、仲間に入れてくれないかな?
こんな
「熱烈歓迎」
「ありがとう。
そう言う割には、笑っていない
「早速だけど、
今日の放課後、ファミレスでお茶しない?
ほら……こういうのは、対面じゃないと、どうしても伝わり
それに私、もっと
「あ。
ごめん、ユウ。
基本、自炊で、外食とかは……」
「承認」
「え?
「エコマンダーへの、お布施。
必要経費、カショト。
よって、エコ」
「ありがと。
てな
今日は、
「悪く思うな」
「え?
あ、ああ。
了解。
じゃあ俺も、トシとカラオケでも行くわ。
この前の穴埋めも兼ねて」
「ん。
じゃあ、
放課後、空けといてね」
「御意」
こうして、
今日は、
自分の同士と、
まだ友達の少ない
それは、
では、
先程から止め
誰とだって
だのに。
クラスが違う
それでも
だからなのだろうか。
咄嗟に、
「そうだ。
ごめん、
俺、今日から
「?」
「あー……『小説に専念する』って
今度、ネット小説コンテストに、応募してみよっかな、って。
丁度、1次審査の発表が、始業式の3日前まで。
で、締切も、1週間後だし。
期限
そういう
夏休み、あんま遊べそうになくってさ。
2週目には、宿題終わらせたいし。
「平気。
それは、今のハルに
もしかしたら、
「ありがと。
メッセとかには、応えられると思うから。
気ぃ向いたら、連絡して」
「あい分かった」
こうして二人は
「……?
ハル。
それは、妙。
先程、『
「あー……あれは、でまかせだよ。
そんな予定、
ちょっと、
そこら辺の事情、嫌がるんだよ、ユウが。
前に一回、拗れちゃったから」
「優しい嘘?」
「まぁ、そんな
でも、うん。
基本的には、
相手してくれると、
「御意」
多少の、不穏さを残して。
※
放課後。
平日の昼間という
人混みが苦手な
「はい、これ。
実はもう、ストックしてたんだ」
「……っ」
思わず、即座に受け取ろうとする
が、
「安心して。
ちゃんと、渡す。
けど、その代わりに。
私の質問に、
「お安い御用」
「ありがとう。
じゃ、はい。
前払いに、プレゼント。
読みながらで
「わーい」
餌に釣られ、簡単に誘いに乗る
こうなった以上、
彼女は、
「
「大切な同士」
「
他の好意が、散見されたりしてない?」
「……?
意図が分からない。
答えられない」
「聞き方が悪かったね。
質問、変えるよ。
君は、ジンの
「認識も
ハルは男、
それ以上でも以外でもない」
「そういうんじゃなくってさぁ……。
私が聞きたいのは、そういう
「では、
中々に、無自覚に、的確に煽る
「
恋心を、
「……恋心?」
「そう。
君は、ジンを。
「……」
漫画を置き。
程なくして、ストレートに明かす。
「
過去に、封印した。
「……心が?
どういう
「その前に。
君のご家族は、健在?」
「え?
あ、うん」
「仲良し?」
「悪くはないかな」
「把握。
であれば、申し訳ないが、黙秘権を行使する。
この場にも君にも、
きっと、それを知ったら。
君は、
最悪、家族と、
それは、
もう、あんな凄惨な悲劇を、繰り返したくない。
それに、
「……」
天然で、機械的。
けれど、相手の気持ちを、推し量れる。
そんな
不覚にも、迂闊にも。
それは、思わしくない。
そういう意味でも。
この場は引くに限ると、
「そっか。
分かった。
じゃあ、今日は
「面目ない」
「こっちこそ。
急に重い話しさせちゃって」
「平気。
まだイントロ」
「そうだね」
「ところで。
これは、コイバナ?」
「え?
うーん……。
……かなぁ」
「
ワクワク」
無表情のまま、両手をシェイクする
それは、『感情が
それはそうと。
「
私は、そうはなれないから」
頬杖をつき、何となしに窓の向こうを、ぼんやり眺め。
「
ジンの趣味、受け入れてる?」
「
ハルには、大成して
多くの人を、小説で助けて
「優しいね、
私は、違うんだ。
ジンには、現実を見て
フィクション、物語にばっか目を向けてないで。
私にも、構って
「
「リアリティも説得力も伴わないから。
どれだけ豪華に着飾っても。
どれだけ綺麗事、羅列しても。
どれだけエモいシーンだろうと。
結局は、架空。
私の心には、今一つ届かない。
どっかで達観、俯瞰しちゃうんだ。
『それ書いてたの、私と喧嘩してた時じゃん』、みたいな感じで。
そういう
アニメや、ドラマも同じ。
どんな名言、神作画を生み出そうと。
その裏で、スキャンダってる人達が
実力と実績も
一方で、富や名声目当てで、そういう人達を突き落として食い物にして、せせら笑ってる
私は、それが大っ嫌い。
私には、どうしても許容
だから、ジャーナリストになりたいの。
そういう偽者達を、一網打尽にする。
無言になる
急冷する頭。
苦笑いで、凌ごうとする。
「ごめん。
あー、
みっともない。
勘違いし
「そんな
今の時点で、明確なビジョンを持っている。
「……え?」
意外だった。
てっきり、面食らっていると思っていた。
「……
私より
だからこそ、話しちゃったんだろうなぁ。
「もっと、話して、どうぞ」
「ありがと。
ごめん、ちょっと顔洗って来る」
「承知」
そこには、
「……ジンに、スパイの依頼でもされた?
信用
っても全部、自業自得だけど」
「違う。
「『夏休み中、自分の代わりに、
そう、彼から
その際に、あなたと
「あんたは、どーも怪しんだよ、最初っから。
今度は、
言っとくが、もう賛同も協力もせんぞ?
今の
あんな裏切り行為、
ここまで早く、同じ
「
私は、ただ、見定めたいだけだよ。
彼女が、ジンに
「……
あんた、やっぱ……」
言おうとして、
「……心配しないで。
今更、どうこうなる、する
その選択肢は、過去に捨てられた。
無残に、消し去られたから。
私達は、
そういう
他でもない、『
「……!?
どういう意味だよ、そりゃ!
てか、あんた、今!」
「『ジン』ではなく、『
追求から逃れる
涙なら、もう引いていた。
心の波を、落ち着かせられた。
「……あーあ。
ヒント、出し
じゃあね、二人共。
それだけ
自身の心の扉と一緒に。
「さて。
それを浚いつつ、
「
お
こんな、くだらない
通りで、一向に靡かない、ナビ
私は、お求め、お呼びじゃないってか。
特に、この第8条。
ちゃんちゃら
隠し事もしないで生きてる人間なんて、存在し得ないのに。
人と人との関係は、欺瞞、操縦でこそ成り立つのに。
人間なんて、嘘と欲望、猜疑心の塊なのに。
人間の本質なんて、虚無と怠惰なのに。
なーんて……中2か、私は。
我ながら、痛々しい。
これじゃあ、選ばれなくて当然だな。
別に
スマホをしまい。
汚れてもいないのに、手を洗い。
「さて、と。
次は、どう、どこから攻略しようかな」
自分でも分かる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます