第4条「シンジンースキンシップは、基本NG」
数日後の土曜日。
それぞれ、求める理由は異なったが。
互いの好み、条件の一致により。
自ずと、ここに絞られたのだ。
というより。
他に、
学校の人間に身バレしないまま、目的達成
が。
それは
「……?」
現着するや
目の前の光景が、
仲良く
「だぁかぁらぁ!!
そんなんじゃねぇ、ってんだろっ!?」
「
ほれほれー。
そろそろ、白状しなさいよぉ」
「だぁぁぁ!!
話聞け、
「
休みに出かける度にコーデ、送迎してあげてる、優しい美しい気高い大人気モデルのお姉様に!!
その言いようは、ないんじゃなくってぇ!?
「いててててっ!!
このっ!!
顎撫でてた手で、シームレスに頬を
ネイルも、刺すなぁ!!」
「
あんた、彼女
ここまで
どういう了見よ、えぇ!?
前言撤回。
色々、確定した。
「……ハル?」
中々カオスな現場にも
ブレもブレーキも
結果。
「……
もしかして、あの子?
え?
……嘘でしょ?
あんな
あんた
「説明の前に、謝罪しやがれっ!!」
「今、そういうの
ゾーン入ってるから。
邪魔しないで」
「あんたといい、ナツといい、ユウといい!!
俺の周りの女性陣は!!
「ナツちゃん。
へー、
……
コスらせるか」
「
また今度にしろっ!!」
「言ったわね!?
ちゃんと、
本人に無断で、
が、コスタイなので、仕方が
満足に自己紹介も
二人は、遅ればせながら挨拶した。
「おはよう、ナツ。
初っ端から、ごめんね。
内の姉貴が、騒いじゃって。
俺も、厄介事は苦手だからさ。
普段は、俺の変装、送迎だけお願いしてるんだ。
でも、今日に限っては、居座っててさ。
「……」
「ナツ?
どうかした?」
「違う」
「
「扱い」
「?」
言わんとする趣旨が
「ハル。
ハルのお姉さんと、
口調、砕けている。
「あー……。
……もしかして、聞いてた?
この前の」
「聞こえた。
それより、ハル。
答えるべし」
「……
どうしても?」
「めっ」
肩の辺りで、両手をクロスする
「……話すよ。
ここだと、通行の妨げになるし」
「了承」
こうして、二人は並び立ち。
そのまま、図書館へと向かう。
※
「トラウマ?
元カノが?」
「そ。
っても、カップルかも怪しいかなぁ、今となっては。
結局、俺の独り
人気の
「中学の頃にさ。
滅茶苦茶、綺麗な人が
物議を醸してばかりの、良くも悪くもインフルエンサーな社長令嬢。
それが、
理由も経緯も、
俺は、その人に気に入られて、コクられて。
分かり
二つ返事で、オッケーしたんだ。
そしたら、その人が、もう、とんっっっっっでもない束縛しいで。
語気を荒げようものなら、物凄い形相して。
つまり、『言動にすら綺麗さを求める、度を超えた潔癖症』って
俺は、『使い勝手の
髪や口調とか、諸々の改善点も直し終え。
ドタキャンやドタ参にも、文句は言わず、常に笑顔で許し。
本人曰く、『地雷』『ダサい』、だとさ」
「……
「
もう、昔の話だし。
転勤族だったからさ。
いつの間にか、学校からも
とまぁ、それだけの詰まらない話だよ。
今でこそ、笑い
どこを見るでもなく、目線を下げ。
いつもより落ちたトーンで、
「……俺が、姉貴や、
姉貴は、実姉の既婚者。
つまり、『
こっちも、『そういう
だから、自然体で接せられる。
けど、同年代の異性は、違う。
もしかしたら、俺が粗野な言動をする
がらっぱちな俺を見る
その
だから、ありのままではいられないし、いたくない。
そんな
俺は、本音を、伏せて生きる。
それだけの、シンプルな理由。
吹けば飛ぶ
自嘲し、お手上げポーズを取る
「ナツ。
気にしないでよ。
ナツは、
「しかし……」
「
俺、ナツの前では、そのままでいられた場面が、何度か
普段は、意図的にナヨッとしてるけどさ。
ナツの前では
つまりは、さ。
君が、俺の『特別』になりつつある。
っていう、証左なんじゃないかな?」
「
……ハルの、特別?」
「ああ。
だって、考えてもみなよ?
こちとら本来、休日返上で執筆したがる
放課後のカラオケ、買い食いでさえ、気乗りしない異端児だ。
自分が
その
でもさ……ナツには、それだけじゃないんだ。
そういう、成り行き、不可抗力的な感じじゃなくってさ。
もっと普通に、自然に、プライベートに。
大して作らない、繕わないままに、触れていたいんだよ。
君とだけは」
「……ハル……」
「まぁ。
裏を返せばぁ?
俺すらも上回るエゴ、ツッコミ所の塊。
って
「……」
「あ、あれ?
怒った?」
「……意地悪するハル、嫌い。
でも……悪くは、ない。
時々なら、許可する」
「お、おう?
ありが、とう?」
「
「予約、承認制なんだ」
くくくっ……と、笑う
ああ、
とんでもない逸材と、袖振り合ってしまったものだ。
「聞けて、
情報提供、感謝する。
ハルを、学んだ」
「どういたしまして。
てか、こちらこそ。
聞いてくれて、ありがとう。
ちょっと、肩の荷が下りたよ」
「これからも適時、開示すべし」
「気が向いたらね」
「強情っ張り」
「男なんて、大体そうだよ。
「
よって、歯の浮く
ハル、痛い、残イケに格下げ。
ふ、ふふふ」
「俺がスベったみたいな空気にするの、
いつもなら、これで照れさせられるんだから……」
「つまり。
「主に、クセがね」
「期待の新人」
とんでもない強敵である。
「それはそうと、ハル。
そろそろ、当初の目的を果たすべし」
「『オリジン協定』の、正式な取り決め、だっけ?
了解。
ところで、どれ
「10個前後」
「手頃だね。
それじゃ、始めよっか」
「了承」
その後、二人で互いのルールを決め。
途中で、休憩なども挟みつつ。
宣言通り、12条までは固めた。
余談だが。
数日
そう。
ここまでは、
「……
※
「驚いた。
髪、染めたの?」
「いや……。
これは、ウィッグで……」
「なんだ。
粗悪品か。
残念」
許可も取らずに、正面に座り、身を乗り出し。
そのまま、頭を
「でも、うん……。
悪くは、ないね。
その
3年以上もブランクの
間違っても、誰の目にも映らない
「……先輩。
「
来年から大学生だし、予習も兼ねて。
で、こっちに戻って来たんだ。
ほら。田舎って、物価安いし、緑も多いし。
っても、治安最悪だけどね。
毎日、暴走族と出くわすし、ヤーさんはいるし。
交通事故多いし、薬物も蔓延ってるし。
そして、
シティ気取りの
あー、
あんな、害悪、反社共。
特に、茶髪群。
男は、黙って黒髪にだけしてれば
日本古来の由緒
自分のエゴだけで、醜く捻じ曲げるなっての」
「相変わらず、潔癖……。
徹底的な、クロカミストですね……」
「『人間は等しく、正しく生きるべき』。
そう、親に叩き込まれたの。
不可抗力だよ。
遺伝子レベルで、刻まれてるんだ。
抗う
「それは、まぁ……。
……そう、ですね」
その割には、口の悪さも健在なのだが。
そのまま、互いに押し黙る二人。
やや
「やり直さない?
と思いきや。
色々と
「……
言ってるん、ですか……」
「久し振りに少し話してみて、分かったけどさ。
言動も、雰囲気も、マイルドなまま。
「……は?」
「しかも、ウィッグとはいえ、黒髪にまでしてくれてる。
そうだよ、
それで
大分、待たされたけどさ。
黒髪以外なんて、どいつもこいつも地雷、ダサい。
頭の天辺から足の爪先まで、模範的。
多様性が求められ、叫ばれる、この現代社会において。
女性に、黒髪ロングを押し付ける過激派は、一定数、現存する。
謂わば、『徹底的な黒髪狂信者』。
登場したての伊井野◯コと同類の、クロカミストなのである。
「先輩……。
「お、
そうだよ、大変だったんだよ。
今日まで、この黒髪ロングをキープするの。
ほら。枝毛も無いし、ツヤツヤでしょ。
「付き合えません。
付き合い切れません」
きっぱりと。
反抗の意思表示を受け。
そのまま、テーブルを指で叩き始める。
「
誰か、
男が、女と付き合った以上。
最後まで責任取るのが筋、常識だよね?」
「そんな悪習は、
「あなた
「俺達が重んじるべきは、『和の心』じゃない。
今という時を懸命に生きる、『俺達自身の心』です」
真っ向から対立し、立ち上がり。
「大体、
人には、『古風』『普通』を強いる
自分は徹頭徹尾、取って付けた
その
まるで、思想の激しい怪しい団体。
歪んだ、穿った、尖った部分を『個性』という蓋で覆い隠し。
作品を内側、根幹、最初から全壊させる
一体どこに、先輩の主張が、主観が。
俺の心が、血が通ってるってんですか。
あなたには、オリジナリティが
俺が、最もいけ好かない人種です。
今も、昔も」
「面白くないなぁ、
一体、いつから、そんな口を叩くようになったの?」
「5日前です。
ちょっと遅かったですね、先輩。
俺はもう、未来の相手を、決めたので。
だから、先輩とは付き合えません」
「がっかりだよ、
こんなにも、絵に描いた黒髪顔なのに。
残念でならないよ、
すっかり色気付いて、毒されちゃって。
とんだ不貞行為ね。
これは、ゼロから調教し直さないと、かな」
「そもそも、付き合ってすらいないでしょ。
あんなの事故、時効、
「口答えしないでよ。
女の要望を
「今時、大半の同性も敵にしますよ。
そういう、ステレオでしかない狂想は。
こんなに
俺は、一度たりとも。
先輩と、
もう、あなたには『付き合い切れません』と」
それだけ
が。
それを、
「待って、
分かった、妥協する。
ちゃんと、話すからさ。
きちんと、
「いいや、分かってない。
でも、惜しいですね、先輩。
今の俺は、そんなにヤワでも、愚かでも、お利口でもない。
あなたは一向に、『ごめん』の一言さえ口にしない。
自分がこっ
自分の
いつまでも、お高く止まってるから、謝ると見せ掛けて『妥協』なんて言える。
あなたは今も、傍観者を決め込んでる。
頑として、自分を明かそうとしない。
そんなだから、『高見の
「
鵜呑みになんてしないでよ。
そんな、ソースもセンスも分からない
一体、誰が広めたの?」
「俺です。
たった今、適当に名付けました」
「なっ……!?」
「嘘です。
絶えず、陰で、そう呼んでました。
そんな卑怯者は、先輩には
それすら隠して恋人を演じるなんて、不自然ですもんね。
先輩は、自然な人が好きですもんね。
いつか、会えると
応援も、お祈りも、斡旋も、保証もしませんけど。
てな
二度と、会いたくないです。
次は、声掛けられても、視界に入っても、既読スルーします」
「……っ!!
ど、
痴漢、痴漢ですぅ!!」
見え透いた冤罪なのに、事件を装う。
二人を遠巻きに眺めていた人々は、不審そうな顔をし。
聴衆
突如、図書室で叫ばれ、不愉快そうにする人も
一部の人間は、男だからというだけで、
実力行使し、勝ち誇った顔をする
「
痴漢は、あなたの被害妄想、エゴの置換。
そして泥棒は、あなた。
それは、
見ず知らずの、あなたの物ではない」
慣れた
またしても特殊スキル、ステルスを発動したのである。
「サンキュー、ナツ」
「礼には及ばない。
ハルを助けるのは、
「重いよ?」
「時に、ハル。
もしかして、あれが」
「ああ。
「聞きしに勝る傍若無人。
あれを許容し、付き合い。
あまつさえ、さほど悪様にしないだなんて。
ハル、聖人君子」
「重いよ?
パート2」
そんな二人を、
「あんたね……!?
あんたが、
この、泥棒猫っ!!」
「補足。
ハルは現在、誰とも正式に付き合っていない。
よって、あなたの言論は、基盤から成り立たない。
やり直し、及び撤回。
「
返しなさいよ……!!
……返しなさい、よぉっ!!」
ビンタの構えを取る
それより先に、
そのまま、洗練された流麗な動きで、床に伏せさせ。
「なぁ……!?」
「護身術。
火急に備え、ハルを守るべく、身に付けたスキル。
やはり、
またしても、ハルの役に立った。
口先、耳障り、ポーズだけの、あなたとはダンチ」
「おー。
「ブイ」
無表情で、子供っぽくピースをする
台無しである。
そのまま、再び
「助言。
図書室では、静かに。
そして、訂正依頼。
ハルは、あなたの物じゃない。
ハルは、ハルの物。
行く行くは、
「重いよ?
パート3」
「ハル、失礼。
今日は、月の日じゃない。
少し幻滅」
「そっちでもないよ?
ジト
そして、
そこは、派手に幻滅して。
いや、言わんけどね、そんな
割と
いつの間にか、ギャラリーから拍手を受け。
看過
こちらに近付く人と、カウンターで警察に電話しようとする人。
「計画、定刻通り。
時間稼ぎ、完了。
「俺は?
ねぇ、俺は?
「
覚えてなさいよぉ!!」
「あれー?
ねぇ、
あんな人種とは、関わりたくないよねー。
知り合いとかじゃなくて、
「同意。
滑稽極まれり。
ふ、ふふふ」
強引に記憶を改竄され、奇異の視線を注がれ。
羞恥心がピークに達する
そのまま、入り口へダッシュし。
ゲートを潜る
「ちょっとぉ!
どうなってるのよぉ!? 一体!
この図書館と、最近の男と来たらぁ!
女が、困ってるのよ!?
とっとと気ぃ利かせて、開けなさいよぉ!!」
と、金切り声に近い叫びで訴え。
そんなこんなで、数分後。
どうにか、逃げ果せるのだった。
ここで
彼女は、
※
「あ、あの……
どうか、したのかな?」
帰り道。
不意に
無表情で、頬を膨らませた。
「……ごめん。
妙な
「
うー。
うー」
はぐらかし、地団駄を踏む
ほのぼの◯グ第8話の、
「ハル。
また
うー。
うー」
「ご、ごめん。
とても、そんな状況じゃなかったからさ」
「
それ
うー。
うー」
「『
俺そんな、
「うー。
うー」
「……あの、すみません。
せめて、対策だけ、示してくれませんかね?
このまま立ち往生ってのも、
足踏みを
「……
確か、『スキンシップはNG』と……。
第4条で……」
「
厳密には、
「違わなくない?
まるで同義じゃない?」
「
早く、
「どうしたの?
「ハルの心の掃除」
「え」
意外な返答に。
一方、
照れもせず、好意も
「
ハルの心、脳は汚染された。
『女性とは、
『
そんなゴミ、偏見を刷り込まれた。
だから、
正常に、洗浄する。
ああいう連中だけでは、断じてないのだと。
他の同性は、定かではないにせよ。
ハルを、敬い、慕い続ける。
君の趣味も、心も、過去も、人生も、未来も、傷も。
余さず、尊重してみせると。
そう、証明する。
現状これが、
「……あなた、つい先日、俺に抱き付いてましたよね?」
「上半身ではない。
胸部は当たっていない。
食らい付いただけ。
よって、無効」
「まぁ、突飛な暴論ですこと」
「気が変わった。
そこまで言うなら、覚悟しろ。
受け身を取らねば、体を壊す。
けれど、安心。
最悪の場合、責任持って
「ねぇそれ、正しく使ってますぅっ!?
「なれば、従え」
「ははーっ」
「君を産んだ覚えは、
「俺も、君に産んで
てか、この前もやったな、これっ!」
その実、
自分への刷り込み、溶け込み具合だけなら。
とどのつまり理解、共感、感心
それが、明暗を分けたのかもしれない。
などと思いながらも。
二人は、ゆっくり帰って行く。
その裏で、
隠し撮りしていた、
大勢のファンを盾にして、ネットをざわつかせていたなど。
その頃の、二人には。
まだ、知る由も
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