第3条「ヨウジンー無駄と粗末とトラブルは、避けるー」
それは「自分の本心、オリジナリティ、武器などが分からない」
中でも最近の
友達と遊んだり、フィクションに没頭するのも好きだ。
反面、ふとした表紙に思考が捕らわれたり、拘束時間が長くてイライラしたり、嫉妬したり。
そういうジレンマに陥る瞬間が、
そんなリソースが
とはいうもののの。
結局の所、その小説とて、同じ。
1度しか
それに釣り合った、
これの方が無駄という気は
結果、
そういった要素を発散し、切り替える糧にもなる分。
これならまだ、ゲームやカラオケの方が生産、建設的かもしれない。
そもそもの話として。
ただ、「小説を書く
これを職業にする
ましてや、カリスマやコネなど、
そんな自分が
なので、昼休み。
思い立って、聞いてみたら。
「コスタイ。
それにハルは、エコ寄り。
ちゃんと掃除も、ゴミ捨ても
だから、スカウトした」
と、返された。
予想以上の好印象、プラス査定。
と同時に、
またしても、結局は「エコ」絡み。
それ以外の採用理由、付加価値なんて、
やはり自分には、文才なんて、備わっていない。
そう、痛感してしまった。
はっきりと、理解してしまった。
今のままでは、遅かれ早かれ、
危機感を覚え、
そこで
ゴチャゴチャしがちな設定を、なるべくシンプルにし。
それにより、一点突破型のストーリーにする
が。
実際に書いてみて、思い知らされた。
それもまた、愚策でしかなかったのだと。
既存の未読、未知の作品と、ダブっている
題材は同じなのに、同じステージに立てている気がしない。
やはり、自分には。
才能、独自性なんて、
自分には、これしか。
小説しか、
「は……。
はは、は……。
ホンッッット……。
……超、ダッセー……」
今日も今日とて、弁当を恵んで
あんなにも、頼りにされて。
もしかしたら、生涯のパートナーになるかもしれないのに。
自分は、自分の中では、まだ、ただの一度も。
そんな
「はーっ……」
開いた窓の向こうから、雲一つ
無性に憎らしく、腹立たしく思えてしまった。
自分の、三文小説で。
名前なんて、書いてない。
この趣味も、明かしていない。
普段の連絡ならスマホで事足りるから、自分の筆跡も、知られていない。
バレる心配なんて、きっと
それは、「彼女の面白さを文章に
あれだけユニークな
それ
だから、とっとと、そのレポートも済ませ。
彼女みたいな有能が、いつまでも自分に縛り付けられているなど、愚の骨頂。
そんな勿体
許せないし、許されない。
だから、もう。
ここで、終わりにしよう。
そう思い、外を確認。
こちらを見ている人が
そのまま、
作者の手から物理的に離れ、宙を舞い。
把握
ーー
後ろから伸びて来た手が、それを止めなければ。
「なん……。
で……」
「ハル。
それは、
窓を締め、退路を断ち。
「……
思わず、
普段の
彼自身、理解してはいるが。
「……
割と、束縛しいなんだね」
「
「『いちいち断りとか、
別に、恋人でも家族でもないのにさ」
自覚
このまま
そう、
「そもそもさ。
あまつさえ、干渉して、口出しするの?
関係
特に、懇意とかでもないでしょ?
俺と、
「……」
そのまま、
ギュッ、と。
二人の手を、重ねて来た。
「な……
「ここまで、密着しているのに。
物理的にも、客観的にも、
それでも、『関係
今日とてクールな
彼女の瞳が、
ここに来て、
「……ご、ごめん。
冷たい
「……?
それは、平気。
その仮説は、たった今。
「じゃあ、
微妙に、泣きそうなの?」
「……?
この数日で散見していたが。
とかく自分絡みで、無頓着な人だった。
空いている手を、顎に置き。
「……『
「え?」
「ハル。
多分、それが原因」
「……」
……そっち?
拒絶とかじゃなくて?
あーでも、これも『突き放し』って
……のか?
「ナツ……。
不可解
「あ。
戻った」
「お黙り……」
「なでなで」
「追い打ち、
ヘナヘナと座り込む
腰を屈め、頭を撫でる
「ハル?
どうかした?
話し合い、する?
カラオケ?」
「ナツさんに、お金出させられないよ。
俺にしか罪、メリット
「では、
「却下。
ナツ絡みの
俺、ミートパイにされる」
「しからば、いずこへ?」
「互いに、自分の部屋に戻ってからでも
ダイレクトじゃなくても、スマホとかでも」
「不許可。
今のハル、信用に値しない。
またノート捨てそう。
ちゃんと、
「そ、それは、まぁ……。
そうかも、だけど……」
平静に戻ったとはいえ。
また暴走、闇落ちの可能性は否めない。
しかし。
時刻は、6時前。
高校生である二人が、なる早で、無料で、健全に話せそうな場所など。
他に、どこに
「……ハル。
候補を、立候補する」
「マジ?
俺の知ってる
「当然」
もう片方の手でも、
数分後。
遅ればせながら、
これは、手錠だったのだと。
「ハルの家」
※
「ほら、
これも、持ってって!」
「い、
アポ
これ以上、
「
普段、
「ジュースも持って行くと
「ぼちぼち……」
「なら、これをすると
この前出たばかりの、新作だ!
きっと、面白いぞ!」
「うぉう……」
次から次へと、手厚く
空いている手で、
「こっち。
俺の部屋、2階だから。
歩ける?」
「
ドアに『立入禁止』の札も貼り、内側から鍵を掛け。
一方、
テーブルの前で、クッションも使わず。
背筋をピンとして、正座していた。
消去法な上に、発案者は彼女ではあるものの。
一件の騒動の張本人は、他でもない自分。
自責の念を隠せず。
が。
足に敷く
彼女も彼女で、その実、心細いのかもしれない。
無理も
今の自分
しかも、未成年で、恋人未満の異性。
これでは、「身の危険を覚えるな」という方が、酷だろう。
それはそれとして。
「……」
ナツルは クッションを そうびした!
ナツルは かわいさが 10101あがった!
スバルに つうこんのいちげき!
スバルは こんらんしている!
「……?」
「いや、ごめん、
「あ」
ふと、思い出した
「ごめんなさい。
勝手に取って」
「ううん。
俺の方こそ、ごめん」
「それは、そう。
ちゃんと、
「はい」
預かった小説を、受け取る
と思いきや。
「……どうかした?」
「訂正。
もう少し、借りる」
「どうぞ?
そんなんでも、
「口の聞き方を慎め。
これは、
名人ハルによって生み出された神作。
「どうしたの?
てか、最初の
「つい、力んでしまった。
カッとなって、特撮ネタを披露した。
「今の、元ネタありきだったの!?」
「ウィザー◯第36話」
「高速補足!」
緊張感の
やや険しい顔をした。
「……薄味。
普段と真逆で、微妙……。
両極端……」
「だから言ったじゃん。
てか、『侮辱は許さない』じゃなかったの?」
「扱き下ろしてはいない。
忌憚無い意見」
「『汚い』の間違いでしょ。
それより、ほら。
読了したなら、もう返してよ。
やや強引に、奪い取る
そんな彼を、
「……ハル。
今の君、嫌い。
全然、エコじゃない」
普段より2割増しで、機械的に
ここに来て、まさかの
説教は済んだとばかり思っていた
「……どういう意味?」
「ノートが、気の毒。
このノートは、ハルに引き裂かれる
「は?
俺は?
俺の安否は?」
「そんなの、知らない。
エコではないなら、ハルなんて知らない。
好きに、すれば
またしても、ややズレた指摘。
別に、ノートに心なんて、宿っていないというのに。
「それに、キャラも。
作るだけ、作っておいて。
弄んだ
しまいには、
ハッピー・エンドも、カタルシスも迎えないまま。
創作者の手で、捨てられようだなんて。
「今、自分で言ったじゃん。
作ったのは、俺だよ。
どうしようが、どうなろうが、俺の勝手。
余所者が、口出しする
「
余所者でも、部外者でもない」
「詭弁だろ、それ。
気が変わった。
だったら、出て行ってくれ」
「断る。
ハルが、きちんと自戒するまで」
「だから、反省したって。
もう、こんな
謝罪なら、もう済ませただろ?」
「反省とは、次に活かして始めて、意味を持ち、形をなす。
ハルはまだ、糧にしていない」
「どうしたら、満足なの?」
「ハルが、
「
具体案も解決策も
「それなら、
「『コクピット』。
今回の作品、文章は悪くなかった。
でも、悲しいかな。
コクラ◯を始めとした、題材被り。
それを過去、凌駕する出力は
だからこそ、他の自作から、パワーを借りる」
「……どういう
少し、スマホを操作してから。
「『
ハルが過去、自分探し、承認欲求目当てでやっていた、ラジオアプリ。
そこで出していた、12
この中の、一つと、組み合わせる」
「なぁっ!?」
まさかの、黒歴史。
「な、
しかも、未だに持ってるの!?
教えてないし、アカウントごと消した
「
バック・アップを、譲ってくれた」
「あいつぅ!!
向こうにすら教えてないのに、あいつぅ!!
てか、いつの間に仲良くなったの!?」
「
その夜に、
クラスメートの
「個人情報っ!!
現代ネット社会の闇っ!!
あの、コミュ強ラブ探偵気取りめっ!!
さては、俺から相談して
しかも、え、
全部、聴いたっての!?」
「
ハルのネット小説も、網羅した」
「ただのガチ勢じゃんかよ、それぇっ!!」
頭を抱え、崩れ落ちる
手持ち無沙汰となった
「で、ナツさん。
組み合わせるって、
割と
開き直りとも言うが。
「この中に。
幽霊として蘇った女子との三角関係を題材にした、悲恋物が
「それと合体させようって
難しくない?」
「現実的には。
だから、天使を出す」
「……はい?」
「『告白をさせる
略して、『コクピット』」
「サラッとトリプル・ミーニングになったね。
発想は、面白いよ。
でも、そのテーマで、
「一口に『告白』と言っても。
家族や、友人など。
特段、恋愛絡みじゃなくても可」
「なるほど。
死神く◯みたいな感じでも行けるのか」
「あとは、シリアスとコメディの二足の
ないしは、切なく儚く締めたり。
バリエーション、豊富」
「……ねぇ。
それ今、思い付いたばかりなんだよね?」
「
「うん。
問題が
「哲学?
深そう。
考察が捗る」
「違うよ?
単なる、率直な感想だよ?
くれぐれも、しないでね?
考察も、勘違いも、拡大解釈も」
「御意。
それはそうと、ハル」
ベッドに座っていた、
「……
「……
創作は、苦手。
けれど。
ハルの作品を分析、網羅し。
その中から、組み合わせ、再利用し。
パワー・アップさせる
「ん、んー?」
「他にも、様々な機能、オプション付き。
ハルと、お
ハルの、コスタイ、最適化。
ハルの、食事のサポート。
ハルの、気晴らし。
ハルの、デレさせ」
「最後のは、
あなたが、甘えたいだけだよね?」
「ハルにとって、
なれば現状、離れる理由など、許さない。
それでもハルが、
こうして、足に組み付き。
文字通り、ハルの足を引っ張り続けるまで」
「
人前では、勘弁してね?」
「ハルが素直なら、しない」
「素直になった結果。
今日みたいに、なったんですが」
「だったら、最初から言えば
そうしたら、未然に防げた。
モヤモヤしたなら、
ハルの心、頭のゴミを。
もっと早く、
いつでも、
「……迷惑じゃ、ない?」
「微塵も。
されど、強いて言えば」
「言えば?」
「
こうなってからは、少し迷惑。
無駄と粗末と、トラブルは避けるに限る。
コスタイ」
「参りました、恐れ入りました」
「遅い。
けれど……最適解」
その体が、
けれど、理性が働き。
両腕を伸ばしたまま、固まってしまう。
「……意気地無し。
ハルは、妙な気は起こさない。
その点は、
「うぅれしくないなぁ、その信頼はぁ……」
「
はよ、ハグれ」
「いや、あの……
俺達、そのぉ……。
そういうんじゃあ、断じて」
「もう
コスタイ、焦れったい」
少し下がり、助走を付けて。
「おわぁっ!?」
「な、
「こっちのが、効率的」
「そうだけどさぁ……。
仮にも女の子なんだし、その……」
「『仮』じゃない。
ハル、失礼」
「ごめんて」
「許さない。
罰として、ハル。
「え」
「
ハルが、
ちゃんと、
「……
「これは
よって、ハルに。
「いきなり、そんな
「いつなら、可?」
「いや、『いつ』とか
そんな
こっちの複雑な男心も、分かってよ」
「そういう
この場は、折れる」
あっさり身を引く
そのまま彼の体から離れ、ベッドから降りる。
残念だなぁと。
そんな自分を。
「ハル。
君は今、また1つ。
大きな
「へ?」
「正確な日時を、設定しなかった。
それが、君の罪」
「……どういう意味?」
「
今に見ていろ。
失敬」
真相を
そして、翌朝。
答え合わせは、存外あっさり。
されど大規模に、行われた。
※
「上述の通り。
でも、ハルに恩返しがしたい。
二人での登校中。
再び、
「いや。
施しなら、もう充分、受けてるよ?
弁当に、コメント。
カラオケのも、趣味と実益を兼ねた気分転換だったし。
なのに、これ以上だなんて。
とてもじゃないけど、望めないよ」
「ならば、望め。
「そう言われてもなぁ」
「ハル、ちょろ甘。
大方、そんな所だろうと思った。
だから、噂を流した」
「噂?
どんな?」
「『ハルに、彼女が
「へー、そう。
そりゃ羨まけしから、はぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!?」
正に、青天の霹靂。
想定外の根回しに、思わず
「これで、ハルはもう、不必要に遊びに誘われない。
エコでもない手合いに、無理に付き合う必要が
仮の彼女、
ハルに、彼氏らしい振る舞いなど求めない。
ハルが、ハルの好きな
「ちょちょちょ……ちょっと、待って!?
「別に、唐突ではない。
元より
「そうだった!?
あ〜!!」
落ち込み、頭を抱え、屈む
数分後。
ふと顔を上げると、
先程まで、
「……いや、ステルス持ちかい、放置かぁい!」
ツッコんでいても仕方が
まぁ、でも?
影響力なんて、高が知れてるでしょ?
別に、新聞部でもないし、
「……新聞部?」
はたと、
それを裏付ける
やにわに、周囲が賑やかになる。
「おい、
「
あれ、どういう
「
「相手は!?
お相手は、誰!?」
重役出勤ばりに、遅刻スレスレで登校する
が。
来てみれば、質問ラッシュ。
正直、心当たりしか
「おはよう、ジン」
「おはよう、ユウ。
それはそうと、コラ。
よくも
「
それより、これ、どうぞ。
我が新聞部の、号外だよ」
「……」
校門前で意味深に待ち伏せていた
『1年のスターに、恋人疑惑!?
我々、新聞部は先日、とある確かな筋より、ホットな極秘情報を入手した。
これまで、その人気に反して、叩いても叩いても一切、埃の出なかった
そんな彼に、浮いた話が急浮上。
そのニュースは、我々新聞部さえもザワつかせた。
しかし、相手が相手。
独自調査をしても、尻尾は出さず。
残念ながら今回、その正体まではキャッチ
が、我々は決して、
この失敗、屈辱をバネにし。
近い内に、この特ダネを真実に昇華させ。
報道の自由、正義の名の元に』
「な……!!
なんじゃ、こりゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!」
思わず、盛大に叫ぶ
先に教室に入り、ベランダから高みの県を決め込んでいた
彼女が、無表情で、
新規登録で充実の読書を
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