第2条「メイジンー趣味と本音を、敬い合うー」
「ムショ」
翌日の昼休み。
どこか静かな場所を求めて
不意に後ろから、怪しく危ないワードが届く。
「……」
……
安心したけど、物悲しいな。
「……いや、
ボソッと
その前に、
「……ムショ」
無表情のまま、頬を膨らませた。
雑コラ感が
が。
今は、それどころではない。
「ごめん、
ちょっと、場所替えしない?」
「賛成。
コスタイ」
「ありがと。
どこにする?」
「秘密基地」
言いつつ、先導する
付いて行った先に
手慣れた
普段から、通い詰め、無断で私的に利用しているのだろう。
「日頃の成績の賜物。
ブイ」
つまり、『仮に
という
思わず、
それはそうと。
彼女の
「俺、犯罪者じゃないから。
せめて、ちゃんと『無所属』って言ってくれませんかね?」
「『ムショ族』」
「名称は変わったけど、印象は変わらないね」
「『適当で
ムショ、嘘
「分かった、ごめん、撤回する。
今この場で、決めよっか。
お昼済ませながら」
「
コスタイ」
「だから、ごめんて」
「ムヒョロ◯れなかった」
「あ、そういう感じ?
確かに、響き似てるね」
「そーれーがー。
きーみーのー」
「言わせないよ?
紅白出てたから、知ってるよ?」
「ケチ」
「ケチで結構。
その方がエコ、君好みでしょ。
それより、ほら。
昼休み、無くなるから」
催促しつつ、弁当を広げる
かと思えば、
対面する形で、自分の前に座った
ちょくちょく思っていたが。
距離感が、ややバグっている気がする。
確かに自分は、「パス・ワード」とやらを突破してはいるが。
「ん?」
などと思っていると。
「……え、ピクニック?
それ全部、
「んーん」
首を横に振り。
「もしかして……俺の分?
作ってくれたの?
「上述した。
だから、餌付け。
契約破棄されない
「しないよ?
少なくとも、今の所は」
「……つまり、未来は」
「
この命
ここに、誓いまーす」
体育祭の選手宣誓みたいな
気恥ずかしくなったので、膝に手を置き、
「……これで、
「充分。
やはり、君は愉快」
「
「……?」
通じなかったらしい。
説明しようとする
が、昨日みたいに初期化され
今、優先すべきは昼食と、自分達の呼称だ。
「じゃあ、
ご厚意に甘えて、頂くね」
「食すが
「ちょくちょく思ってたけど、
ジワる」
ちょっとした感想を述べつつ。
ホット・サンドだ。
ハム・チーズやツナ、ポテサラやハンバーグ、ジャムなどのデザート。
様々な種類のホット・サンドが、ぎゅうぎゅう詰めになっており。
思わず
「……そんなに?」
「いや、そんなにだからっ。
めっちゃ
肉系多いし、デザートまで
そして、
現役の女子高生、それも
……ご馳走様ですっ」
「まだ平らげていない。
気が早い。
ふ、ふふふ」
例によって、無表情のまま、声だけ笑う
最初こそ、恐怖を隠せなかった
今は、割と普通だった。
真相はどうであれ。
控え目に言って、絶品だった。
一口食べただけで、別格だと分かる
「ご馳走様でした」
「お粗末」
食べ終わるや
その
立ち返ってみても。
ロボットみたいなのに、エコに興味津々。
ドライな
ガードは硬い割に、内部はガバガバ。
RTAみたいな
その内、簡潔に纏めるか。
本人の希望する「面白さ」「エコ」に
正直、後者に関しては、未だに
「……夏、か……」
彼女は、『夏』みたいだ。
夏のクーラー、アイスみたいに、涼し気な
それでいて、夏の
そう。
彼女に、そぐう愛称は。
「『ナツ』」
試しに、呼んでみた。
かと思えば、顔を正面に戻し、挙手した。
その、妙に
「ご、ごめん……。
ちょっと、ツボった……」
「?」
自覚は
が、ここで説いても、残り少ない昼休みを空費するだけ。
今は、避けるべきである。
「『ハル』」
などと思いながら、
不意に、
それは、『
「もしかして……。
……『俺』?」
「左様。
ハル」
まるで、芸人のユニット名みたいではないか。
でも、まぁ。
凸凹な、自分達らしい。
「
じゃあ俺は、今日から、『ハル』だ」
「
「お気に召した?」
「召した。
ふ、ふふふ」
「それは
話が一段落したタイミングで、予鈴が鳴った。
「ハル」
「ん?
「今日、放課後、バッファ?」
「え?
あ、うん。
空いてる、けど」
「しからば。
ちょっと、付き合うべし」
「
「カラオケ」
目的地だけ
数分後。
「……はぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!?」
※
「『くりんりねす・びーむ』」
「……」
「……」
「……」
シーン……。
「『あーるてぃめっとこうせーん』」
「……」
「……」
「……」
シーン……。
「『くりんりねす』
またしても、技名を叫ぼうとした
が時、
それより早く、フリー素材のBGMが、切れてしまい。
心なしか、
「えと……ナツさん?
これは、どういう……」
「エコ」
「うん。
その『エコ』について、聞いてるんだ」
確かに、
このカラオケで、エコ絡みの投げ込みを棒読みでしてる、女性の声がすると。
にしても、である。
その正体が、
通りで、局地的にエコが流行っている
噂の出処は、一人だけだったのである。
それはそうと。
というか。
棒読みなのは、
二つしか
立っては投げ込み、座っては休み、を延々と繰り返しているのか。
そもそも。
ここに来てから彼女は、歌ってすらいないではないか。
これは、活動内容も目的も、謎
「
世界を、もっと、エコにしたい。
だから、エコなヒーローを作って、アピールしたい」
「あー。
エコガ◯ンダーみたいな感じで?」
「そう。
しかし、悲しいかな。
そこで、ハル。
君の力を、お借りしたい」
「……もしかして……。
この前、俺に言った、『君ならエコにしてくれそう』ってのは……。
それに、俺と『オリジン』を結成したのも……」
「ハルならば、エコ戦士を生み出してくれそう。
創作を囓っている、ハルならば」
「なるほど、それで……。
得心したよ」
早い話。
彼女の原案を、形にすれば
「だったら、プロに頼めば
そう一瞬、考え。
節約家の彼女の
それすらも、「エコじゃない」と、却下したのだろう。
それは好都合だったと、
別に、『お
そんな驕った理由ではない。
単に、『
「事情は把握したよ。
そういう
俺にも、手伝わせてくれるかな?」
「熱烈歓迎」
「ありがと。
うーん……『エコマンダー』とか、どうかな?」
「サラマンダーの意匠も入れたい」
「採用、賛成。
じゃ、次に。
どんな設定にしようか?」
「エコ精神がエネルギー」
「『エココロ』。
だと、言い
じゃあ、『エコロ』って感じかな」
「キャッチー」
「ありがと。
敵は、どうする?」
「お色気多めの、女性幹部が
爆釣」
「りょ、了解。
そうだなぁ……。
じゃあ、『エゴデス』率いる『エゴミン帝国』ってどう?
っても、幹部通り越して首領になったけど。
じゃあ敵幹部は、『カビナス』って所かな」
「
「決まりだ。
こんな感じで、フィードバックして行こう。
残るは、技名と、歌詞か」
「熱いキレキレ、頼んます」
「多いな、要素。
でも、うん。
頼まれました」
それにより、スムーズに作業が進んで行く。
こうして、初日ながらも、他の作業も進め。
エコマンダーの曲は無事、完成したのだった。
※
そのまま、高校生の活動限界、9時までカラオケに居座り。
「ごめん。
こんな時間まで付き合わせちゃって」
「平気。
つい、興が乗ってしまった」
「俺は大丈夫だよ、男だし。
ところで、ナツ。
君のお家、こっちで合ってる?」
「肯定。
目の前」
「……思ってたより近かったね。
ここからも、俺の家からも。
「因果」
その喫茶店が、
それにしても。
この店名は、
「あら。
ナッちゃん。
おかえりなさい。
今日も学校、お疲れ様」
外で掃き掃除をしていた、ホワッとした上品な女性。
彼女が、即座に
続いて、その糸目が、
「あら?
あなたも今、帰り?
学業、お疲れ様。
にしても、二人共。
いつの間に、そんなに仲良くなったのかしら?」
「え?
俺の
「
だって、お隣さんじゃない。
以前あなたのご両親に、挨拶もさせて頂いたし」
「……すみません。
俺は今まで色々、知らなくって……」
「無理も
人と人との
気にしなくて
遅れた分は、これからだって巻き返せるし」
「は、はぁ……。
……ありがとう、ございます?」
「改めて、自己紹介するわね。
私は、
はい、私特製、『めぐみグミ』。
お近付きの印に、どうぞ」
「頂きます」
……めっさ優しい!!
神対応通り越して、『女神対応』じゃん!!
などと思いつつ。
「ハル。
見送り、ご苦労」
「あ、ああ。
またね、ナツ」
「明日、お迎え、来る?」
「そしたら死んじゃうね、俺」
「……?
されど、ハルを死なせたくない。
しからば、
今夜の内に、しまっておくべし」
「いや……
「スマホ勢。
電子派。
現代っ子」
「ごめん、『悪しき風習』みたいに言わないでくれる?」
またしても食い違う。
しかし、確認を怠る
「てか、ナツさん。
俺もう、お役御免では?」
「まだ。
だから、継続。
ハルが、
今度は、
徹底的に、ハル、助ける」
「……俺、そこまでの
「した。
ハルは、
だから、助ける。
ハルにも、文句は言わせない。
余計なお世話なら、引き下がる」
「いや、そのっ……。
……これからも、何卒……。
お願い、します……」
「心得た」
ビシッと敬礼し。
その場には、
しかし、話す
よって、
「じゃあ、すみません。
俺も、この辺で」
「
「あ、はい。
呼ばれた手前、引くに引けず。
「
お
「なぁっ!?」
フラットなまま、とんでもない尋問が始まった。
「こ、ここは普通、戒める所であって!!
少なくとも期待、催促はしませんよねぇ!?」
「別に
あの子と、
でもそれは、将来を誓約した上での
軽率に、その場のノリでちょっかい掛けたり。
ないしは、重苦しく手篭めになんぞしようものなら。
……どうなると、思う?」
「
「お褒めに
それはそうと、
どうなると、思う?
私に、そう聞いてくれるかしら?」
「拒否権っ!!」
許される
「……どう、なるんですか?」
「簡単よ。
品名は、そうねぇ。
……『若気の至り風ミートパイ』。
って、所かしら」
完全に、スウィーニー・◯ッド路線だった。
「で?
どうなのかしら?
きちんと、清い交際なのよね?」
「誓って、羽目は外していませんっ!!」
「ランジェリーは?」
「見てすらいません!!」
「それは頂けないわねぇ。
健全な男子高生、失格じゃなくって?
ラッキースケベ
「ボーダー、分かんねぇ!!」
「あら?
「違う、そうじゃない、保護者からのそういうセンシティブな情報、
「草食系にして、装飾系ねぇ。
うふふ。
私が、もう少し若かったら、粉を掛けてた。
かも、ね」
「勝てる気しねぇ!!」
「だって、勝たせませんもの。
それはそうと、
これからも、プラトニックに、お願いね?
楽しかったわ。
ご機嫌よう」
などと言いつつ、
「……
婚前交渉も、お残しも」
恐ろしい耳打ちをして。
そのまま、何食わぬ顔で、帰って行った。
へなへなと、崩れ落ちる
そのまま、天を仰ぎ、潔白を叫ぶ。
「お、俺は……!!
……無実、だぁぁぁぁぁ!!」
数分後。
普通に、親に怒られた。
そして、翌朝。
「
頂いたグミ、めっちゃ
「あらあら。
今日も、お菓子を持ってらっしゃい。
飴とチョコも
「あざーっス!!」
それはそれとして。
「ハル。
※
急速ではあるものの。
仲良くなって行く
このまま
そう、
それが、
「……ハル。
今の君、嫌い。
全然、エコじゃない」
正しく、活用されてしまったのは。
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