第2条「メイジンー趣味と本音を、敬い合うー」

「ムショ」



 翌日の昼休み。

 どこか静かな場所を求めて彷徨さまよっていると。

 不意に後ろから、怪しく危ないワードが届く。



「……」



 ……織守おりがみさん?

 なんだ。俺以外にも話し相手、たんだ。

 安心したけど、物悲しいな。



「……いや、なんでだよ」



 ボソッとつぶやきつつ、再び足を動かす進晴すばる

 その前に、凪鶴なつるが回り込み。



「……ムショ」



 かすかに不満、不機嫌そうに。

 無表情のまま、頬を膨らませた。

 雑コラ感がすさまじい。



 が。

 今は、それどころではない。

 すでに、通りすがりから、奇異の目を砲火されている。



「ごめん、織守おりがみさん。

 ちょっと、場所替えしない?」

「賛成。

 コスタイ」

「ありがと。

 どこにする?」

「秘密基地」



 言いつつ、先導する凪鶴なつる



 付いて行った先にったのは、なんことい。

 ただの、空き教室だった。



 手慣れた様子ようすから察するに。

 普段から、通い詰め、無断で私的に利用しているのだろう。



「日頃の成績の賜物。

 ブイ」



 つまり、『仮に気付きづかれても、首位だから咎められない』。

 ということらしい。



 思わず、進晴すばるは拍手を送る。

 勿論もちろん、口ではなく。



 それはそうと。

 進晴すばるすでに、大方おおかたの検討を付けている。



 彼女のことだから、恐らく。



「俺、犯罪者じゃないから。

 せめて、ちゃんと『無所属』って言ってくれませんかね?」

「『ムショ族』」

「名称は変わったけど、印象は変わらないね」

「『適当でい』って言った。

 ムショ、嘘き。

 凪鶴なつる、ご立腹」

「分かった、ごめん、撤回する。

 ただし、『適当』とは言ってない。

 今この場で、決めよっか。

 お昼済ませながら」

凪鶴なつる、最初から、そう言った。

 コスタイ」

「だから、ごめんて」

「ムヒョロ◯れなかった」

「あ、そういう感じ?

 確かに、響き似てるね」

「そーれーがー。

 きーみーのー」

「言わせないよ?

 紅白出てたから、知ってるよ?」

「ケチ」

「ケチで結構。

 その方がエコ、君好みでしょ。

 それより、ほら。

 昼休み、無くなるから」



 催促しつつ、弁当を広げる進晴すばる

 かと思えば、凪鶴なつるは机を移動し。

 対面する形で、自分の前に座った

 さながら、二者面談だ。



 ちょくちょく思っていたが。

 距離感が、ややバグっている気がする。

 確かに自分は、「パス・ワード」とやらを突破してはいるが。



「ん?」



 などと思っていると。

 進晴すばるの前に、大きめのバスケットが置かれる。



「……え、ピクニック?

 それ全部、織守おりがみさんが、一人で食べられるの?」

「んーん」



 首を横に振り。

 凪鶴なつるは、広げた両手を、進晴すばるに向けた。



「もしかして……俺の分?

 作ってくれたの?

 いの?」

「上述した。

 凪鶴なつるは、君を気に入った。

 だから、餌付け。

 契約破棄されないための」

「しないよ?

 少なくとも、今の所は」

「……つまり、未来は」

宣誓せんせー

 功刃くぬぎ 進晴すばるはー。

 この命る限りー。

 織守おりがみ 凪鶴なつるさんの、同士であることをー。

 ここに、誓いまーす」



 体育祭の選手宣誓みたいなことをする進晴すばる

 気恥ずかしくなったので、膝に手を置き、ぐに目を逸らす。



「……これで、い?」

「充分。

 やはり、君は愉快」

織守おりがみさんが、言う?」

「……?」



 通じなかったらしい。



 説明しようとする進晴すばる

 が、昨日みたいに初期化されまくっても困る。

 今、優先すべきは昼食と、自分達の呼称だ。



「じゃあ、織守おりがみさん。

 ご厚意に甘えて、頂くね」

「食すがい」

「ちょくちょく思ってたけど、なんで妙に尊大なの?

 ジワる」



 ちょっとした感想を述べつつ。

 凪鶴なつるの開けたバスケットを、進晴すばるは見る。



 ホット・サンドだ。

 ハム・チーズやツナ、ポテサラやハンバーグ、ジャムなどのデザート。

 様々な種類のホット・サンドが、ぎゅうぎゅう詰めになっており。

 思わず進晴すばるは、合掌してしまう。



「……そんなに?」

「いや、そんなにだからっ。

 めっちゃ美味おいしそうじゃんっ。

 肉系多いし、デザートまでるしっ。

 そして、なによりっ。

 現役の女子高生、それも織守おりがみさんみたいな可愛かわいい人の手作りとか、もう、もう、もうっ……。

 ……ご馳走様ですっ」

「まだ平らげていない。

 気が早い。

 ふ、ふふふ」



 例によって、無表情のまま、声だけ笑う凪鶴なつる



 最初こそ、恐怖を隠せなかった進晴すばるだったが。

 今は、割と普通だった。



 凪鶴なつると親しくなるに連れ、免疫なり愛着なりが出来できたのか。

 あるいは単に、超絶美少女の手作りバフにより、無効化されたか。



 真相はどうであれ。

 進晴すばるは早速、召し上がることとした。



 控え目に言って、絶品だった。

 一口食べただけで、別格だと分かるほどに。



「ご馳走様でした」

「お粗末」



 食べ終わるやいなや、即座に片付けを開始する凪鶴なつる

 そのさまは、まるで熟練の専業主婦のようだった。



 立ち返ってみても。

 織守おりがみ 凪鶴なつるは、不思議な人物である。

 


 ロボットみたいなのに、エコに興味津々。

 ドライなようで、実は思慮深く。

 ガードは硬い割に、内部はガバガバ。

 RTAみたいなことをしながら、長話と脱線を繰り返す。



 その内、簡潔に纏めるか。

 本人の希望する「面白さ」「エコ」につながるかもしれないし。

 正直、後者に関しては、未だにく分からないが。

 何故なぜ、真夏の太陽ばりに、あそこまでエコにご執心なのか。


 

「……夏、か……」



 つぶやいて、気付きづいた。



 彼女は、『夏』みたいだ。

 夏のクーラー、アイスみたいに、涼し気な内外うちそとを有し。

 それでいて、夏のようなエコロジー精神の持ち主。



 そう。

 彼女に、そぐう愛称は。



「『ナツ』」



 試しに、呼んでみた。



 凪鶴なつるは、無表情で、小首を傾げながら、自分を指差し。

 かと思えば、顔を正面に戻し、挙手した。



 その、妙に真面目まじめなリアクションに。

 進晴すばるは、吹き出してしまった。



「ご、ごめん……。

 ちょっと、ツボった……」

「?」



 自覚はいらしい。



 が、ここで説いても、残り少ない昼休みを空費するだけ。

 今は、避けるべきである。



「『ハル』」



 などと思いながら、なんしに空を眺めていると。

 不意に、凪鶴なつるが、そうつぶやいた。



 いな

 それは、『つぶやき』などではなく。



「もしかして……。

 ……『俺』?」

「左様。

 ハル」



 進晴すばるは、『ハル』。

 凪鶴なつるは、『ナツ』。



 なんの因果かは不明だが。

 しくも、春夏秋冬みたいになってしまった。

 まるで、芸人のユニット名みたいではないか。



 でも、まぁ。

 凸凹な、自分達らしい。



いね。

 じゃあ俺は、今日から、『ハル』だ」

凪鶴なつるは、『ナツ』」

「お気に召した?」

「召した。

 ふ、ふふふ」

「それはなにより」



 話が一段落したタイミングで、予鈴が鳴った。



 進晴すばるは、立ち上がり、肩を伸ばす。

 凪鶴なつるも、それに続き、進晴すばるを見上げた。



「ハル」

「ん?

 なに?」

「今日、放課後、バッファ?」

「え?

 あ、うん。

 空いてる、けど」

「しからば。

 ちょっと、付き合うべし」

いけど、どこに?」

「カラオケ」



 目的地だけげ、さっさと部屋を後にする凪鶴なつる

 数分後。



「……はぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!?」



 まったもって解釈違いなコース、二人きりでの初デートの誘いだと気付きづき。

 進晴すばるの叫びが、廊下を駆け巡った。





「『くりんりねす・びーむ』」

「……」

「……」

「……」



 シーン……。



「『あーるてぃめっとこうせーん』」

「……」

「……」

「……」



 シーン……。



「『くりんりねす』



 またしても、技名を叫ぼうとした凪鶴なつる



 が時、すでに遅し。

 それより早く、フリー素材のBGMが、切れてしまい。

 心なしか、凪鶴なつるはシュン……とした。



「えと……ナツさん?

 これは、どういう……」

「エコ」

「うん。

 その『エコ』について、聞いてるんだ」



 進晴すばるは、頭を抱えた。



 確かに、紺夏かんなから聞いてはいた。

 このカラオケで、エコ絡みの投げ込みを棒読みでしてる、女性の声がすると。



 にしても、である。

 その正体が、凪鶴なつるだったとは。

 通りで、局地的にエコが流行っているわけだ。

 


 なんということい。

 噂の出処は、一人だけだったのである。



 それはそうと。

 何故なぜ凪鶴なつるは、こんなことを?



 というか。

 棒読みなのは、仕方しかたいとして。

 二つしかい技名を交互に叫びつつ。

 立っては投げ込み、座っては休み、を延々と繰り返しているのか。



 そもそも。

 ここに来てから彼女は、歌ってすらいないではないか。



 いくら現代では、ゲームや配信なども出来できるとはいえ。

 これは、活動内容も目的も、謎ぎやしないだろうか?



凪鶴なつるは、エコが好き。

 世界を、もっと、エコにしたい。

 だから、エコなヒーローを作って、アピールしたい」

「あー。

 エコガ◯ンダーみたいな感じで?」

「そう。

 しかし、悲しいかな。

 凪鶴なつるには、創作の才能がい。

 いくつか思い付いた、技名の投げ込みが精一杯。

 そこで、ハル。

 君の力を、お借りしたい」

「……もしかして……。

 この前、俺に言った、『君ならエコにしてくれそう』ってのは……。

 それに、俺と『オリジン』を結成したのも……」

「ハルならば、エコ戦士を生み出してくれそう。

 創作を囓っている、ハルならば」

「なるほど、それで……。

 得心したよ」



 早い話。

 彼女の原案を、形にすればいのである。



「だったら、プロに頼めばいのでは?」

 そう一瞬、考え。

 進晴すばるは、撤回した。



 節約家の彼女のことだ。

 それすらも、「エコじゃない」と、却下したのだろう。

 


 それは好都合だったと、進晴すばるは心から思った。



 別に、『おかげで自分が選ばれた』とか。

 そんな驕った理由ではない。

 単に、『凪鶴なつるが怪しいことに巻き込まれずに済んだ』と、安心したのだ。



「事情は把握したよ。

 そういうことなら、っとけない。

 俺にも、手伝わせてくれるかな?」

「熱烈歓迎」

「ありがと。

 ず、名前だ。

 うーん……『エコマンダー』とか、どうかな?」

「サラマンダーの意匠も入れたい」

「採用、賛成。

 じゃ、次に。

 どんな設定にしようか?」

「エコ精神がエネルギー」

「『エココロ』。

 だと、言いづらいし、『絵心』と紛らわしいな。

 じゃあ、『エコロ』って感じかな」

「キャッチー」

「ありがと。

 敵は、どうする?」

「お色気多めの、女性幹部がしい。

 爆釣」

「りょ、了解。

 そうだなぁ……。

 じゃあ、『エゴデス』率いる『エゴミン帝国』ってどう?

 ちなみに、『ゴッデス』ってのは、『女神』って意味ね。

 っても、幹部通り越して首領になったけど。

 じゃあ敵幹部は、『カビナス』って所かな」

格好かっこい」

「決まりだ。

 こんな感じで、フィードバックして行こう。

 残るは、技名と、歌詞か」

「熱いキレキレ、頼んます」

「多いな、要素。

 でも、うん。

 頼まれました」



 進晴すばるのセンスと、求められるタスクの合致。

 それにより、スムーズに作業が進んで行く。



 こうして、初日ながらも、他の作業も進め。

 エコマンダーの曲は無事、完成したのだった。





 そのまま、高校生の活動限界、9時までカラオケに居座り。

 進晴すばるは現在、凪鶴なつるを送り届けんとしていた。



「ごめん。

 こんな時間まで付き合わせちゃって」

「平気。

 凪鶴なつるこそ、ごめんなさい。

 つい、興が乗ってしまった」

「俺は大丈夫だよ、男だし。

 ところで、ナツ。

 君のお家、こっちで合ってる?」

「肯定。

 目の前」

「……思ってたより近かったね。

 ここからも、俺の家からも。

 むしろ、隣だったね」

「因果」



 何故なぜ、今まで気付きづかなんだのか。

 進晴すばるの実家の隣に立地する『あすテラス・メガみ』。

 その喫茶店が、凪鶴なつるの家だったのだ。



 それにしても。

 この店名は、なんなのだろう。

 

 

「あら。

 ナッちゃん。

 おかえりなさい。

 今日も学校、お疲れ様」



 外で掃き掃除をしていた、ホワッとした上品な女性。

 彼女が、即座に凪鶴なつるを労った。

 続いて、その糸目が、進晴すばるに向けられる。

 


「あら?

 進晴すばるくん?

 あなたも今、帰り?

 学業、お疲れ様。

 にしても、二人共。

 いつの間に、そんなに仲良くなったのかしら?」

「え?

 俺のこと、知ってるんですか?」

勿論もちろんよ。

 だって、お隣さんじゃない。

 以前あなたのご両親に、挨拶もさせて頂いたし」

「……すみません。

 俺は今まで色々、知らなくって……」

「無理もいわよ。

 人と人とのつながりが、希薄になってる時代だもの。

 気にしなくていわ。

 遅れた分は、これからだって巻き返せるし」

「は、はぁ……。

 ……ありがとう、ございます?」

「改めて、自己紹介するわね。

 私は、織守おりがみ 寵海めぐみ

 はい、私特製、『めぐみグミ』。

 お近付きの印に、どうぞ」

「頂きます」



 ……めっさ優しい!!

 く分からんけど、めっさ優しい!!

 神対応通り越して、『女神対応』じゃん!!



 などと思いつつ。

 進晴すばる寵海めぐみから、グミの入った袋をもらう。

 


「ハル。

 見送り、ご苦労」

「あ、ああ。

 またね、ナツ」

「明日、お迎え、来る?」

「そしたら死んじゃうね、俺」

「……?

 く、分からない。

 されど、ハルを死なせたくない。

 しからば、凪鶴なつるが出向く。

 凪鶴なつるに見られて困る類は。

 今夜の内に、しまっておくべし」

「いや……いから、そういうの」

「スマホ勢。

 電子派。

 現代っ子」

「ごめん、『悪しき風習』みたいに言わないでくれる?」



 またしても食い違う。

 しかし、確認を怠るわけにはいかない。



「てか、ナツさん。

 俺もう、お役御免では?」

「まだ。

 凪鶴なつる、進化出来できてない。

 進晴すばる、オリジン見付けられてない。

 だから、継続。

 ハルが、凪鶴なつるを助けてくれた分。

 今度は、凪鶴なつるが。

 徹底的に、ハル、助ける」

「……俺、そこまでのこと、した?」

「した。

 ハルは、凪鶴なつるの恩人、名人。

 だから、助ける。

 ハルにも、文句は言わせない。

 余計なお世話なら、引き下がる」

「いや、そのっ……。

 ……これからも、何卒……。

 お願い、します……」

「心得た」



 ビシッと敬礼し。

 凪鶴なつるは、無表情で手を振り、店に入った。

 


 その場には、進晴すばる寵海めぐみだけが残った。

 しかし、話すことも気力も度胸も理由もい。

 よって、進晴すばるも上がろうとする。



「じゃあ、すみません。

 俺も、この辺で」

進晴すばるくん」

「あ、はい。

 なんでしょう?」



 呼ばれた手前、引くに引けず。

 進晴すばるは、残留してしまう。

 寵海めぐみは、顎に手を置き、満面の笑みで。



うち凪鶴なつるちゃんに。

 お悪戯いた、しないの?」

「なぁっ!?」



 フラットなまま、とんでもない尋問が始まった。



「こ、ここは普通、戒める所であって!!

 少なくとも期待、催促はしませんよねぇ!?」

「別にいのよ?

 あの子と、むついでも。

 でもそれは、将来を誓約した上でのこと

 軽率に、その場のノリでちょっかい掛けたり。

 ないしは、重苦しく手篭めになんぞしようものなら。

 ……どうなると、思う?」

だ、この人怖い、タレ目フワフワにこやか属性の十八番おはこ入った、顔に返り血浴びながら包丁持ってそう!!」

「お褒めにあずかり、うれしいわ。

 それはそうと、進晴すばるくん。

 どうなると、思う?

 私に、そう聞いてくれるかしら?」

「拒否権っ!!」



 わけかった。

 許されるはずかった。



「……どう、なるんですか?」

「簡単よ。

 うちの新メニューが完成するだけよ。

 品名は、そうねぇ。

 ……『若気の至り風ミートパイ』。

 って、所かしら」



 完全に、スウィーニー・◯ッド路線だった。



「で?

 どうなのかしら?

 きちんと、清い交際なのよね?」

「誓って、羽目は外していませんっ!!」

「ランジェリーは?」

「見てすらいません!!」

「それは頂けないわねぇ。

 健全な男子高生、失格じゃなくって?

 ラッキースケベくらいまでなら、渋々、譲歩するわよ?」

「ボーダー、分かんねぇ!!」

「あら?

 うち凪鶴なつるちゃんは、そういうのは着けてないわよ?」

「違う、そうじゃない、保護者からのそういうセンシティブな情報、しいけどらないっ!!」

「草食系にして、装飾系ねぇ。

 うふふ。

 可愛かわいいわね。

 私が、もう少し若かったら、粉を掛けてた。

 かも、ね」

「勝てる気しねぇ!!」

「だって、勝たせませんもの。

 それはそうと、進晴すばるくん。

 凪鶴なつるちゃんが待ってるから、そろそろ戻るわね。

 これからも、プラトニックに、お願いね?

 楽しかったわ。

 ご機嫌よう」



 などと言いつつ、進晴すばるに近寄り。

 


「……駄目ダメですよ。

 婚前交渉も、お残しも」



 恐ろしい耳打ちをして。

 そのまま、何食わぬ顔で、帰って行った。



 へなへなと、崩れ落ちる進晴すばる

 そのまま、天を仰ぎ、潔白を叫ぶ。



「お、俺は……!!

 ……無実、だぁぁぁぁぁ!!」



 数分後。

 普通に、親に怒られた。



 そして、翌朝。



寵海めぐみさんっ!!

 頂いたグミ、めっちゃ美味おいしかったですっ!!」

「あらあら。

 うれしいわ、進晴すばるくん。

 今日も、お菓子を持ってらっしゃい。

 飴とチョコもるわよ」

「あざーっス!!」



 それはそれとして。

 ものの見事に、餌付けされ。



「ハル。

 凪鶴なつるのお母さん、奪うな」



 ついでに。

 凪鶴なつるの頬を、膨らませた。





 急速ではあるものの。

 仲良くなって行く進晴すばる凪鶴なつる

 


 流石さすがに減速はすれども。

 このままさらに親しくなって行きたいと。

 そう、進晴すばるは願ってしまった。



 それが、あだとなったのかもしれない。



「……ハル。

 今の君、嫌い。

 全然、エコじゃない」



 凪鶴なつるの、鉄仮面が。

 正しく、活用されてしまったのは。

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