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個人的にはこの状況に安心していたが、それよりも天川先生の様子が気になっていた。
「あ、あの、天川先生はどうしてそんなにモンスを嫌われるのですか?」
天川先生は私の言葉に即座に反応すると私をジッとにらみつけてきた。
「私の尊敬する姉をモンスに奪われたからだ」
「えっ・・・・・・」
質問したことを後悔したくなるような返事が返ってきた。しかし、時すでに遅し、天川先生さらに口調を荒げた。
「私の姉は魔法界でも指折りの魔女だった、彼女はモンス事変が起こる前日に「いってくるね」と一言残して、それ以降帰ってきていない。
それまで姉の事をもてはやしていた連中も、姉が残した功績も、すべて消え去り、姉はこの世界から跡形もなく消え去ったんだ。
私の耳には今でも姉の悲痛な叫びが聞こえてきて仕方がないのだ。だから、私はモンスを憎み、モンス事変の謎を解き明かすためにここにいるっ」
天川先生は目は、まるで火がともっているかの様に情熱的であり、それと同時に怖いほどの恨みがあるようにも感じられた。
そんな熱い瞳に思わず引き込まれそうになっていると、ふと、目の前に手が現れてひらひらと動いた。
その手はアーモンド先生のものであり、彼女は私を心配そうに見つめながら、私の様子を確認している様だった。
「カイアさぁん、大丈夫ですかぁ?」
「え、はい、私は大丈夫です」
「そうですか、次の授業は「地理学」のフィールドワークですよ、私も同伴する事になっているので一緒に行きましょう」
天川先生の情熱とは裏腹にアーモンド先生はそっけない態度でそう言うと、席から立ち上がった。
「しかし、天川先生のお話は聞いておかなければいけないような気がします。私にもお手伝いできることがあるかもしれません」
「あまり深いりしない方がよいですよ、それに天川先生にとってカイアさんは敵だそうですし」
「そ、それは・・・・・・そうかもしれませんが」
「残念ながら、今の私達にできることはありません」
「しかし」
「カイアさん、私だって天川先生の情熱を無視するつもりはありません、しかし、物事の解決には段階というものがあるのです、今はまだその時じゃありません」
「では、そのいつかのために何か準備できることがあるかもしれません」
「だめですよ、天川先生には天川先生の、カイアさんにはカイアさんのやるべきことがあるのですよ」
どこか納得できる言葉が刺さった私は、確かに深入りすべきではないのかもしれないと思った。しかし、天川先生の事が気になる私は、彼女の方を見てみると、私をじっと見つめていた。
「大角カイア、お前の存在は気に食わないが必ずまたここに来い。お前は私の長年の謎を解き明かすカギとなるやもしれん、私の糧となれ」
まるで悪役のようなセリフを吐いた天川先生は私から目線をそらすことがなかった。なんだかよくないことが起こりそうな雰囲気のまま私はアーモンド先生と共に図書館を後にした。
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