4.1
カロルは、トマトの苗を引き抜いた後の畑をクワで耕していた。
屋敷の中庭には野菜畑があり、今はちょうど夏野菜の終わりの時期である。
「こ、こちらのお屋敷には、野菜畑もあるのですね…」
「ええ。葡萄やリンゴは大規模でやっていますが、こういう小さな畑でお屋敷で食べる分の野菜を作っているんですよ」
「ここが終わったら、向こうの畑もお願いします」
ジュディさんとシルビアさんという中年の二人の女性が、上機嫌でカロルを見守っている。
(あなたに対する侯爵の心象は良くありません)
さっき、屋敷の周りを案内しながら、クレアがカロルにこう言った。
(30分も遅刻したんですから当然です。そこでご提案なんですが、少しでも侯爵の心象を良くするために、この屋敷の力仕事を手伝っていただくというのはいかがでしょうか)
クレアはあくまでも提案という形でこう言ってきたが、カロルに拒否権があるはずもない。
畑の土にクワを突きたてながら、カロルは考えた。
(彼女はどういう立場の人なんだろう)
もちろんクレアのことである。お屋敷には、クレアより年齢が上の人間もたくさん働いているが、全員がクレアの指示に従っているように見える。
「クレアさんは、このお屋敷の執事なんですか?」
ジュディさんとシルビアさんは、首を横に振った。
「執事はアルバートさんという男性で、2週間の休暇中です」
「クレアさんはお屋敷の財政面を担当している方です」
「なんでも、大学で経営を勉強されたとか」
「侯爵様と同じ大学で、ご友人だったそうです」
「…なるほど」
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