479話 変な人ばかりじゃないよ
私の周りには変な人が集まるという結論に至った。
「全く、魔女さんも容赦ないよね」
「そこまでバッサリ言ったつもりはない」
まあ、そこまではっきりとは言ってなかった気もする。
「聞いた限りでも、キミを中心にいろいろな種族が、人種が集まってきている。
今いるエルフ、ダークエルフ、人魚もそうだろう。それに、使い魔にドラゴンとは」
「あれ、クロガネのこと話したっけ」
「それくらいのことはわかる。元々強大だった魔力が、ドラゴンと契約したことによりさらに増大しているはずだ」
ほほう、さすがは魔女さんだ。話してないのに、私がクロガネと契約したことに気づいていたとは。
というか、他の人から見て私の魔力……増大しているってわかるんだね。
契約したモンスターとは一心同体みたいなもんだから、魔力だって一緒になっているよってことなのかな。
「強力すぎるモンスターも、契約する側に同等以上の力が備わってなければ契約することはできない。
そのドラゴンと契約できたことが、そのままキミの魔力の高さを表している」
「えぇへへへ……そ、そうかなー」
やだなもー、そんなに魔力が高いとか強いとか言われたら、照れちゃうじゃんかー。
「ただし、魔力が高いだけだと足元をすくわれる。魔力の高さ=その者の強さではないのは、よく肝に銘じておくといい」
「うぐ……」
「あまり不甲斐ないと、ドラゴンに愛想を尽かされてしまうかもしれないぞ?」
「うぐぐ……」
魔女さんの言葉が、私の胸にクリティカルに突き刺さる。
その忠告みたいな言葉には、覚えがあったからだ。
またしてもゴルさんとの話だけど、彼との決闘時に経験が足りない、って言われたんだよね。
魔力の高さはゴルさんも認めてくれたけど、戦闘経験の少なさ……特に人と戦ったりしたことがないことを、見事に見抜かれてしまった。
私にとって身近な人は師匠で、師匠以外の人と深く関わったのなんて魔導学園入学のためにベルザ王国行ってからだもんなぁ。
「愛想って……モンスター側から、契約を拒否して破棄することはあるんですか?」
「ないとは言えないな。普通は、術者がモンスターを従える。言い方を考えなければ、己の魔力でモンスターを従わせているようなものだな。
だが例外はある。術者とモンスターとの魔力量が近い……つまり対等の関係である場合だ。気に入らなければ、モンスターから一方的に契約を破棄することができる」
魔女さんの言葉を聞いて、私は思い出していた。
クロガネとは……確かに使い魔契約を交わしたけど、その関係性は対等だ。どっちが上とか下とかは、ない。
互いに対等だってことで、契約を結んだ。
普通は、術者側が使い魔との契約を破棄する……って聞いたことがあるけど。逆もあるのか。
術者の魔力量がモンスターよりも多ければ主導権は術者に。術者とモンスターの魔力量が近ければ主導権はお互いに。
こういうことか。
「まあ、私自身もっと強くならないととは思ってるよ。そのために日々訓練したりもしてるし」
「なるほど。魔導は使えば使うほど強くなる……というわけではないが、イメージの力を固めればそれだけ応用が効く。
だが、一人で訓練していても限界があるだろう」
「まあねー。でも、少し前から他の子の訓練に付き合ってて、私もそれでいろいろ強くなってたりするから」
「え」
「いろいろ強く?」
少し前から、ダルマスの特訓に付き合っている。
ダルマスに魔力の使い方を教えるのが主だけど、私と立ち会いをしたりする。対人相手に魔力を使うのは、私にとっても良い訓練になる。
今度ダルマスに剣を教えてもらおうかな……いや、今更か。中途半端になるくらいなら、魔導を極めるほうが……
「訓練? 誰とです? 私知らないですよ」
「うおっ!?」
急に、ルリーちゃんが詰め寄ってくる。
隣に座っていたから距離は近かったのに、その距離が余計に縮まる。なんか怖いよ!?
うーん、ダルマスの訓練は、本人の希望で誰にも秘密ってことにしているからなぁ。
いくらルリーちゃんでも、勝手に話すわけにはいかないじゃない。
「ごめんねルリーちゃん、これは言えないんだ」
「言えない……ということは、秘密の訓練……二人きり……相手は男……? ……男女が秘密の訓練……」
なんだろう、ぶつぶつ言っているルリーちゃんがなんだか怖い。
ルリーちゃんたまにこういうことなるよなぁ。
「ぐっ……!」
「え、泣いた!?」
突然、ルリーちゃんがきれいな緑色の瞳から涙を流す。
なんで!? 泣いちゃった!?
眉を寄せ、なんか……悔しがっているような表情だ。どういう感情なんだそれ。
「る、ルリーちゃん、落ち着いて。なにも変なことしてないから」
「うぐっ……男女で夜の秘密訓練……ひっく!」
「え? 夜? 訓練は放課後にやってるから、夜ではないけど?」
私いつ夜って言ったかな!?
「二人だけの秘密訓練……」
「そうだね、二人の……あ、いや正確には三人か」
思い返してみれば、ダルマスとの訓練は途中キリアちゃんに見つかっちゃったんだよね。
キリアちゃんは平民の女の子だ。魔石採集の授業でいろいろあって、ダルマスのことが気になるようになったみたい。
そんなキリアちゃんに、二人きりの秘密訓練を見られたもんだから……誤解されそうになったよ。
誤解を解くのに苦労したよね。
……あれ、もしかしてルリーちゃんも、あのときと同じなのか? まさか、ルリーちゃんもダルマスのことが!?
……いやぁそれはなさそうだな。入学試験前のいざこざからルリーちゃんがダルマスに好印象を抱くとは思えないし。
それに、なんか違うよな……この悔しがり方。
「なっ……さ、三人!? まさかそんな……三人で、秘密のと、とっく……ひぃいいいい!」
「やっぱり変な人が集まっているじゃないか」
「……」
どうしよう、魔女さんの言葉を否定できない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます