381話 魔物の暴走
「ちょっと待て。あれ魔族か?」
「へ?」
ラッヘがどこか冷静に言うもんだから、私も目を凝らして見てみる。
というか、クロガネの視界を通して、だけど。
走ってきているのは、青色の皮膚の、角が生えた、さっき会った魔族の子供と類似した特徴の……
「……外見は魔族に見てるけど、どちらかというと……」
「魔物?」
二足歩行で走っているのが目立ってはいるけど、四足歩行の獣のようなものもいる。
なにより……なんか、おかしい。
大勢いるその誰もが、白目のまま、正気とは思えない状態で走ってきている。
その姿は、まるで本能のまま動く、獣のようだ。
「今まで魔物は見てきたけど、魔族に似ている魔物はいなかった。それも、あんなに居るなんて……どういうこと?」
「さあな、ただでさえ魔大陸って未知の場所だ。生態が違うのかもな。あれだけの数の魔物が一斉に迫ってくる……まさに、
それより……」
「このままじゃ、あの大群に押しつぶされちゃいますよ!?」
あの大群は、なんの目的で私たちに向かってくるのか……いや、私たちじゃなくて、塔か?
魔物たちは塔に向かってて、逆に塔からは魔物たちに光線が放たれている。
もしかしてさっき放たれた光線は、私たちが魔物の仲間だと誤解して、撃たれたものだったのか?
『どうする契約者よ。上空に逃げるか……それとも、ワレが一掃するか?』
クロガネが、なんとも力強いことを言ってくれる。
「ううん、上に逃げたら、またさっきみたいに狙い撃ちにされるだろうし……」
上空に逃げるのは、ダメだ。さっきの二の舞になる。
なら、クロガネに魔物を倒してもらう? クロガネの力なら、あれだけの数が居ても、魔物なんて目じゃない。
もし、魔物たちを倒せば、塔の魔族に私たちは敵じゃない、ってわかってもらえるかもしれない。
「よし、ここはクロガネにあいつらを倒してもらう方向で……」
「う、撃ってきましたよ!?」
このあとの対応を、決める……そのタイミングで、ルリーちゃんの声が響く。
彼女が指さしているのは、迫りくる魔物たち……彼らが、一斉に魔法を撃ってきたのだ。
あるものは口から、あるものは手から……次々と、魔法が放たれる。
私たちを、完全に敵だと定めている。
「グォオオオオ!」
迫りくる魔法の数々に、クロガネは
炎のごときそれは、迫る魔法とぶつかり合い、爆発する。
……一つの威力なら、クロガネの攻撃が当然強い。だけど、相手の魔物たちは、一斉に攻撃してくる。
単vs多。数の違いで、向こうの攻撃の威力が跳ね上がっている。
「クロガネ、も、もう一回お願い!」
『うむ。ハァアアア!』
私のお願いを聞き、クロガネが再び
互いの攻撃がぶつかり合い、それらは相殺した。
あの魔物たち……魔物に仲間意識はないと思うけど、結果的に力を合わせる形になって、力を増幅させている。
「このままじゃあの大群につぶされっぞ!」
「! 仕方ない……クロガネ! お願い私たちを乗せて飛んで!
そのあとは、またあの光線が飛んでくるかもしれないから、注意! クロガネが急に方向転換しても振り落とされないように、しっかり掴まって!」
「はい!」
『うむ』
私の指示を受け、ラッへとルリーちゃんは素早くクロガネの背中に飛び乗る。私も乗って、クロガネは翼を広げて飛び立つ。
クロガネが地上から離れ……しばらくもしないうちに、私たちがさっきまでいた場所は、魔物の大群が押しつぶしていく。
巨体のクロガネならともかく、私たちがあの群れに潰されたら……一大事だ。
「わっ……すごい、ですね」
「うん……」
下を見ると、まるで魔物の波だ。肌が青いから、波打つ水のようにも見える。
同時に私は、塔にも注意を払う。飛び立ったことで、またさっきみたいに襲われる可能性が高いからだ。
クロガネにも、塔に注意を向けてもらい……しっかりと、背中にしがみつく。
「! 来たぞ!」
カッ、と塔の一部が光り輝く。その直後、放たれる光線が迫りくるのを目視する。
ただ、さっきまでのものとは、違った。
「魔物たちを、狙ってる……」
光線は、空を飛んでいる私たちではなく、地上の魔物たちを狙っている。
やっぱり……さっき狙われたのは、私たちが地上の魔物たちの仲間と思われたからか。
つまり、優先順位は魔物たち。襲ってくる様子のない私たちは、放置ってことだ。
「んじゃ、このままあの塔には向かわずに、移動した方がいいんじゃねぇか」
「うん、そうだね……」
なんとなく、クロガネに任せてこっちの方向に来ていたけど……進むのがこの方角だとしたって、あの塔の近くを通らないといけない、なんてことはない。
魔族に感知されない距離から、さっと抜けてしまえばいい。
クロガネもうなずき、少し遠回りして同じ方角に向かうことに。
それに、クロガネに全速力を出してもらえば、あの光線だって当たりはしないはずだ。
『! 来る!』
「へ?」
少し、注意をそらした瞬間だ……クロガネの言葉に、私はすぐに視線を戻した。
そこに、黒く大きな……鳥が、いた。
クロガネとそう変わらないほどの、巨大な鳥。
それだけじゃない。
「怪しげな魔物め……ここで殺してやる!」
その背には、魔族が乗っている。今度こそ、間違いない!
しかも……私たちのことを、魔物だと、思っている……!?
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