第203話 いざ国王陛下の下へ
「な、なんで呼ばれたんだろう……私、なにかしたかな……いや、してるわ……いろいろ王族相手にやらかしてるわ。こ、コーロランと試合をしたこと? いやでも、あれは向こうから仕掛けてきたんだし、クラス対抗だったし……じゃ、じゃあ、ゴルさんに決闘を挑んだこと? 低俗な人間の分際で、私の息子と決闘するとは何事か、とか、怒られるのかな。あれ、いやそもそもゴルさんって呼んでることかな……不敬罪かな。それとも、それとも……」
「……なにをぶつぶつ言っているんだ、お前は」
「はは、さすがの狂犬新入生でも、国王陛下との謁見はビビるか」
先生からのメッセージを受け取った、翌日。私は学園の外に出て、歩いていた。
その理由は……当日になっても、謎のままだ。いや理由を聞かれたら、国王陛下が私に会いたいかららしい。その理由はわからない。
昨日受け取った先生からのメッセージ。その内容は、明日……つまり今日、王宮へ行くというものだ。そのため、今こうして王宮へ向かっているわけで。
「いつまでそうしている、フィールド。いい加減覚悟を決めろ」
振り向き、私に言葉をかけてくるのは、メッセージを送ってきた張本人サテラン先生だ。
王宮に呼ばれたとはいえ、さすがに私一人で行くわけにもいかない。よって、付き添いで先生が一人着いてくることになった。
私のクラスの担任ってことででだろうな。な
それに、一緒にいるのはもう一人……
「そう気を張る必要はない。胸を張っていろ」
このベルザ国の第一王子である、ゴルさん。ううんゴルドーラ・ラニ・ベルザ。王子ってことはつまり国王の息子……身内だ。それに、学園では生徒会長って立場でもある。
なので、私に同行することになった。
二人がいてくれるのは、正直とても心強い。私一人だったら逃げ出していただろう。
「せ、先生は、私がなんで呼ばれたのか、知ってるんですか?」
「いや。さっきも言ったが私も知らない。ただ、国王陛下直々にお前に会いたいと、王宮からの連絡があってな」
どうやら、私が呼ばれた理由は先生も知らないらしい。知っていて隠している……という意地悪なのは、あんまり考えたくはないな。
いや、今から理由を知ったとしても、だからどうしたって問題ではあるんだけどさ。
それにしても、息子のゴルさんはともかく……
「先生は、そんなに緊張してないように見えますね」
先生は、いつもと同じ堂々とした姿で歩いている。その姿から、緊張は見えない。
私の指摘に、先生はふふん、と笑って……
「そう見えるだけだ。私だって、めちゃくちゃ緊張している」
めっちゃいい顔で、すごく情けないことを言った。
「……してるんですか、緊張」
「当たり前だ! 国王陛下だぞ!? 謁見だぞ!? 緊張しないほうがどうかしてる!
今はなんとか、大人の威厳を保っているだけだ!」
「その威厳、どうせなら最後まで突き通してほしかったですね」
普段クールな先生の、慌てた姿は貴重だ。まさかこんな形で見ることになるとは思わなかったけど。
ただまあ、その姿を情けないとは言わない。気持ちはわかるから。
だって国王陛下に会うんだもん! いくら世間知らずと言われている私だって、それがどれくらい大変なことかはわかっている!
それも、私のような一市民と! そりゃ、私だってフィールドの家名を持っているから枠組みとしては貴族なんだけど……
それだって、師匠からもらった名前で、実際に私が貴族の家系ってわけじゃないし! 平民と同じだよ私は!
「平民が王様と会うってこれ本当に大丈夫なんだよね!?」
「……いきなりなにを叫んでいるんだお前は」
ゴルさんが、私のことをかわいそうなものを見る目で見てくる。あと周囲の視線が痛い。
私はコホンと咳払いをして、押し黙る。ちょっと恥ずかしい。
そんなやり取りをしているうちに、目的地へとたどり着いたみたいだ。
見上げれば、白く大きな建物……この国の中心に位置する王宮だ。はぁー、見上げすぎて首が痛くなりそう。
「第一王子、ゴルドーラだ。国王陛下の要請に従い、魔導学園よりエラン・フィールドを、その付き添いで学園教諭を連れてきた」
「これはゴルドーラ様。お待ちしておりました。
さあ、中へ」
門の側に立っている門番さんに、ゴルさんは話しかけ……話が通じたのか、門が開き私たちは中へ案内される。
門の向こう側に広がっていたのは、壮大な敷地。魔導学園と比べても、見劣りしないどころか広いんじゃないかな。
恐る恐る敷地内に足を踏み入れる。ゴルさんは当然のように胸を張って歩いていくが、私たちはそうもいかない……けど、ここでじっともしていられない。
私も先生も、門番さんとゴルさんに着いていくように足を合わせる。
中庭から、王宮内へ。もうただ、私たちはゴルさんの後ろを歩いていくのみだ。
時折、王宮内の兵士さんから挨拶された。ゴルさんが。やっぱ、第一王子なだけあって人徳があるってことなんだろうか。
「こちらが、王の間です」
先導していた門番さんは足を止め、一つの扉を見る。他の部屋よりも豪華に見える扉が、そこにあった。
はぁ、この向こうが王の間ってことは、この向こうに王様がいるってことだよな……いよいよもって緊張してきた!
「はぁ、ふぅ……」
「国王陛下! ゴルドーラ様をお連れしました!」
「うむ、入れ」
「ちょ、はや!?」
私が深呼吸をしている間にも、門番さんは部屋の中へと声をかけ……王様と思われる人物の声が返ってくる。
それを確認して、門番さんは私たちにコクンとうなずく。いやコクンじゃないよ!
そして、扉に手をかけ、ゆっくりと押し開いていく。
ええい……こうなったら、ままよ!
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