第18話 話をさせてもらおうか.....?
春香の事件の事は取り敢えず置いて。
俺達は.....春香を誘ってみる。
だが春香は、用事がある、と言って断った。
俺はその事に、仕方がないか、と思いながら.....そのまま公民館にやって来る。
ここは.....思い出のある場所だが。
何かと言えばやはり大水害の事であるが.....。
「やっぱりデカいですね。改修されましたしね」
「そうだな.....」
二回改修されている。
そのうち一回は.....要は大水害で壊れた。
二回目は人口が増えたので大きくなったのだ。
しかしこの場所に来るのは改修されて以降だった。
つまり.....俺はあまりこの場所に来るのを控えていたのだ。
その理由はもうお察しの通りだが。
この場所は仮の遺体安置所になっていた。
つまり.....まあ。
母親を思い出すのだ。
と同時に高橋も思い出す。
怒りしか湧かないが。
そうして複雑な顔をしていると.....ギュッと俺の手を握ってきた。
鈴香が。
「.....先輩。大丈夫ですか」
「.....ああ。.....お前も大丈夫か。鈴香」
「.....そうですね。.....まあ私より先輩ですよ。.....遺体が.....保存されていたんですよね」
「.....そうだな」
鈴香達の母親の遺体は洪水後の家屋で見つかり。
俺の母親の遺体はこうして.....目の前の公民館に安置されていた。
その為に差がある。
俺は思いながら鈴香を見る。
鈴香は複雑な顔で目の前を見ていた。
「.....と呆然としても仕方が無いですね。.....ささ。先輩。行きましょう」
「.....あ?.....ああ」
「.....鈴香さん.....」
「大丈夫です。過ぎた事は悔やんでも仕方が無いですから」
そして鈴香は俺の手を握ってからそのまま歩き出す。
過ぎた事、か。
正直。
髙橋さえ居なければ.....鈴香達の母親も助かったかもしれない。
それを考えると沸々と熱湯の様に怒りが増す。
やはり高橋は許せない。
思いながら俺は前を見る。
そして公民館に入る。
「やっぱり広いですね」
「.....そうだな。10年前とはえらい違いだ」
「.....ですね」
そんな会話をしていると。
おや?、と声がした。
顔を上げると.....そこに凛とした感じの同級生っぽい少女が居た。
顔立ちは凛としており。
美少女だ。
江戸っ子が似合いそうな感じのポニテである。
俺を目を丸くして見ながら。
そして鈴香を見ながら顎に手を添える。
バッシュを履いている。
そして珍妙な感じの気配で特に俺を見てくる。
「君は確か盾宮くんだね」
「.....俺の事を知っているんですか?」
「ああ。噂蔓延。.....鈴がよく喋っているよ。君の事。愛しているとか何とか」
「何言ってんだアイツは.....」
「ははは。でも良いじゃないか。そんな愛があるのが」
私は、大宮。
大宮弓(おおみやきゅう)だ。
と言いながら俺に手を差し出してくる。
君と鈴と同学年だ、と言いながら。
俺はその差し出された手を握りながら、大宮は.....ここ観客席だがどうして此処に居るんだ?、と聞いてみる。
「.....私はメンバーに選ばれなかったんだよ。大会のね」
「.....ああ.....そうなんだな.....」
「そう。でも応援の気持ちがあって使ってないバッシュを履いている。ただそれだけだ」
「.....大宮先輩.....」
君は鈴香だね?其方は?、と聞く大宮。
俺は、俺の妹の環だ、と答えた。
すると、へえ、とニヤッとしながら見る。
何だこの反応は?、と思っていると。
顎に手を添えて唸っている環が。
どうした。
「.....大宮.....手鞠(おおみやてまり)くんの.....お姉さんですか?」
「アッハッハ!そうだよ!手鞠は大物を狙ったんだね!」
「.....大物.....まさか.....環」
「そう。告白された男の子のお姉さんだと思う。この人」
「なん.....だと」
俺は大宮を見る。
大宮は、そんな顔しないでおくれ、と笑いながら言葉を紡ぐ。
俺は、いや。笑い事じゃねぇよ、と顔を引き攣らせる。
大宮は、アンタはシスコンかい?、と苦笑いを浮かべた。
先輩、とまたドン引きされる。
「俺の妹に手を出すた良い度胸だ。その手鞠とやらに今度会わせてくれるか」
「.....いやちょ。会ってどうするのお兄.....」
「いや。話を聞きたいだけだ」
「じゃあ私から言っておくけど。.....余計な事をしたら殺すよ」
「ほほう?」
「ハーン?」
バチバチと火花が散る。
何やってんですか先輩、と言いながら俺の腕を引っ張る鈴香。
今はこんな事をしている場合じゃ無いってのは分かるがな。
全く、と思いながら席に座る。
すると横に腰掛けて来た大宮.....何でや。
席は決まっているんだぞ。
と思っていると直ぐに答えを言った。
「すまないな。此処はチケットで取っていたんだ」
「ほう。.....良いじゃないか大宮。良い話が出来そうだ.....」
「お兄.....」
「先輩。キモいです」
だから何でだよ。
妹を心配しているんだぞ俺は。
マイシスターをな。
だからキモくないぞ。
そう思っていると手鞠らしき少年が.....。
「え.....た、環さん?」
と言いながら現れた。
すると大宮は目を丸くして、手鞠。来たのか、と言う。
まあ暇だったしね、と答える手鞠くん。
ほほう。童顔のイケメンだな.....?
環は、手鞠くん、と笑みを浮かべる。
満更でもない様な顔だ.....。
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