第17話 乙女にとっては大事件

環に.....男が.....出来た.....だと。

俺は衝撃を受けながらも要らん男に絡まれないか心配しながら約束の日を迎える。

そして朝起きると.....環が鼻歌混じりにお弁当を作っていた。

それもメチャクチャ大きいサイズで。


黒いお重のお弁当。

つまり.....全員で摘むつもりの弁当らしい。

俺は頭をボリボリ描きながら、環、と声を掛ける。


「あ。おはようお兄」


「.....?.....何時から作っているんだ」


「午前6時かな。今が.....8時だから頑張ったよ」


「.....うーむ。大丈夫なのか?環」


「うん?.....あ。眠たさ?無いよ。アハハ」


そしてニコニコしながら俺を見てくる環。

調理箸を置きながら。

俺は、何を作ったんだ?主に、と聞いてみると。

今日は卵焼きとか作ったよ。

軟骨チキンボールとか煮物とかそういうの、と笑顔になる。


「.....そうなのか」


「うん。肉巻きも作った」


「.....ご苦労様だったな。.....ノリノリだな。序でに」


「うん。だって楽しみで仕方がないから」


「.....」


この環の笑顔を見るのが俺は一番幸せだ。

俺は思いながらエプロンを外してから、ゴメン。ちょっとお兄の洗濯物を洗濯するよ、と俺に向いてくる。

そして、早く脱いで。お兄、と言ってくる。

俺は、お、おう、と言いながらそのまま洗面所に押される。


「じゃあ着替えてくるから」


「うんうん。.....私は準備しているから」


「準備か。分かった。早く着替えるな」


そうして着替えるとインターフォンが鳴った。

俺は?を浮かべながら、まあ宅急便だろうし環に任せるか、と思っていると。

ドタドタと音がして、センパーイ、と声がしてきた。

俺は!?と思って、鈴香か?、と声を発する。

あ。先輩。もしかして準備中ですか?、と聞いてくる。


「ああ。そうだな。ちょっと待ってくれるか」


「はいはーい」


「.....」


鈴香.....か。

俺はキスした時の事を思い出す。

それから赤くなりながらパンツを脱いでから着替えていると。

ついよろめいてから壁に頭を打つけた。

すると心配したのか、先輩!?大丈夫ですか!?、と鈴香が洗面所にドアを勢い良く開けて飛び込んで来た.....え!?


「.....わーお.....」


鈴香は俺の下半身を見てから真っ赤になる。

口元を抑える形で、だ。

何やってんだコイツは!!!!?

俺は、いやーん、と抵抗する。

鈴香は、す、すいません、と真っ赤になっていそいそと去って行く。


「.....」


全くアイツは.....。

俺は赤くなりながらパンツを履き替えた。

そして今日の外出着を着てから鈴香達の元に戻る。


鈴香はモジモジしながら赤くなって俺を見ていた。

まあ.....仕方がないな。今のは。

俺のミスだ。


「.....鈴香。嫌なものを見せてしまったな」


「い、いえ。全然抵抗無いです。.....な、無いですよ」


「本当かお前。真っ赤になって目が.....グルグルしているぞ」


「それは.....ま、まあお気になさらず.....」


お兄の変態、と言ってくる環。

ジト目で、であるが。

まるで変質者を見る様な顔だ。

俺は、何でや、と思いながら盛大に溜息を吐いた。

それから、まあ良いけど。何しに来たんだ。鈴香、と聞く。


「大会の事です。.....お弁当を作ってきました」


「.....え?俺達も作ったぞ?」


「.....あ。じゃあお弁当.....一緒に食べましょう!」


「.....相変わらずだな」


俺は苦笑する。

満面の笑顔で俺達を見ながら鈴香は弁当を取り出す。

先輩には特別です、と言いながら。

何が特別なんだ、と聞くと。


「黒毛和牛です。でも特価品ですけど.....」


「.....は.....?」


「えへへ。.....お小遣いで買いました♡」


「.....お小遣いってお前.....お年玉とか?」


「そうです。先輩に.....食べてほしくて」


赤くなりながら俺を見てくる鈴香。

お前な.....、と思いながら俺は財布を出した。

それからお金を出す。

鈴香は、え!?良いですよ!、と言ってくる。

俺は、そういう訳にはいかない。半分出す、と言う。


「.....まあ先輩らしいですよね。そういうの」


「.....先輩らしいとかそういうのじゃ無いけどな。お前がやり過ぎだ。お前.....ただでさえお金を持ってないだろ」


「.....今回だけって思ったんですが.....」


「ダメだ。そういうのは。.....半分出すから」


「.....先輩。有難うございます。.....じゃあ受け取ります」


鈴香は笑みを浮かべながらそのままお金を受け取ってから頬を掻く。

それから俺を真っ直ぐに見てくる。

俺は、こんな無茶苦茶な事はしなくて良いから、と告げる。

お前の愛は分かっているしな、とも。

まるでアプローチの様で恥ずかしいが。


「せ、先輩.....じゃあ付き合ってくれます?」


「それは話が別だ。.....ノーだな。今は」


「ぶー。先輩のけちんぼ」


「.....お前な.....」


俺は額に手を添えながら.....そのまま鈴香を見る。

鈴香は、はーい、と項垂れた。

俺はそれを確認してから苦笑している環を見る。

でも分かります、と切り出す。


「.....心から相手を愛していたら.....何でもしたくなりますよね」


「.....環ちゃん.....分かってくれるの!!!!?」


「はい。.....分かります。本当に」


「.....た、環よ。.....そ、それは.....」


「お兄。何を勘違いしているのか分からないけど。.....そんなんじゃ無いから」


いやでも今の言葉はマジに誤解するだろ。

俺は環を不安な目でウルウルと見る。

すると、シスコンですか?先輩、と青ざめてドン引きされた。


俺は、悪いか、と偉そうに言う。

その言葉に、シスコンはドン引きです、と鈴香に引く様に言われた。

え?いや.....そんなに悪いかな?シスコンって.....。

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