第11話 10年前の記憶

鈴と鈴香に告白されたのだが。

何がどうなっている。

俺は考えてみるが.....答えが全く見つからない。

何というか俺なんぞに告白しても返事も貰えないかもしれないんだぞ。

俺を好きになるメリットが無い。


「.....」


教室で顎に手を添えて考える。

しかし答えは出ない。

思っていると.....目の前に春香が立っていた。

俺は真顔のまま、何だ、と威嚇する様に問う。


「.....ゴメン。噂に聞いたけど.....告白された.....って聞いた.....」


「.....まあそうだな。.....それがお前と何の関係性が?」


「.....いや。おめでとうって言いに来ただけ。何でもない。それ以外には」


「そうか。なら.....」


そこまで言っていると鈴が、春香。何、と春香に向いた。

春香は!となりながら鈴を見る。

鈴は警戒しながら春香を見る。

そして暫く2人の睨めっこが続いたが。


「.....何でもないよ。鈴」


「.....そう。だったら離れて。.....雫くんに迷惑だから」


「.....」


踵を返して去って行く春香。

正直言ってなかったかもしれないが。

浮気してから春香は教室での印象がかなり悪くなった。


これも計画しているのかどうか知らないけど。

本人にとって何ら徳が無い。

なのに何をしているのか。


「.....大丈夫?雫くん」


「.....ああ。有難うな。特に.....何もされてないけど」


「.....うん。.....何もされてなくても.....不安だしね。.....私は」


「.....そこまでするのは.....その.....」


そうだねそれもあるかもね。

でもそれだけじゃないよ、と言ってくる鈴。

そして俺をニコッとしながら見てくる。


恥ずかしそうに恥じらいながら。

俺はその姿に少しだけ赤くなってから頬を掻いた。

正直言って.....そんな実直に言われるのは恥ずかしいのだが。

しかしまあその.....コイツだしな。


「.....私は貴方が好きだから」


「小さな声で呟くな。分かったから」


「だから心配になるんだよね」


「そうか.....」


「そう。それは鈴香も同じだから」


そして俺を赤くなって見てくる鈴。

俺はその姿を見ながら顎に手を添える。

すると鈴は、じゃあね、と手を挙げて、また後で、と去って行った。

俺はそれを見送ってから。

そのまま春香を見る。


「.....何が彼女をそうさせているのか.....だな」


考えながら.....俺は一人ぼっちになってしまった春香を眉を顰めて見る。

正直言って訳が分からない。

訳が分からないっていうのは.....そうだな。

話さないから訳が分からない。

何でぼっちになっても話さないのか.....。



「先輩」


「.....どうした。鈴香」


「お昼ご飯です。お昼食べましょう」


「ま、まあその.....うん。分かった。しかし教室まで来るな」


みんなジロジロ見ているからな。

俺は汗を流しながらその姿を見る。

え?何でですか?、と聞く鈴香。

俺は、お前な.....美少女なんだぞお前は仮にも。.....そして俺は今はフリーだが嫉妬する輩.....、とまで言い掛けたが。


「そんな難しい事分からないです。さ。行きましょう♪」


となってそのまま俺は屋上に連れて行かれた。

そんな難しい事分からないですって.....。

俺は額に手を添えながら。

そのまま屋上にやって来る。

屋上は.....晴れ渡っていた。


「久々だ。こういう所に来るの」


「先輩は日光浴しないんですか?」


「.....しないな。引き篭もりだし.....な」


「.....そうですか。.....じゃあこれからは一緒に動きましょう」


「一緒に動くってのは?」


「夏祭りとかそういうので.....屋外に出ましょう、って意味です。デートです」


相変わらず恥ずかしい事をさらっと言いやがって.....。

俺は少しだけ苦笑いを浮かべながらシートを広げ出す鈴香を見る。

鈴香は、あ。今日はお姉ちゃんは来ません、と言ってくる。

ああ。そうなのか、と俺は返事をする。

そういや大会だったな。


「.....お姉ちゃんは大丈夫そうか」


「.....?.....何がですか?」


「.....いや。.....大会は上手くいきそうかって話だな。すまん」


「ああ。それですか。上手くいきますよ。だって先輩の応援がありますから」


「平然と小っ恥ずかしい事を言うなっての」


だって先輩ですから、と。

揶揄いたくなりますから、と返事をしながら笑顔になる鈴香。

俺はその姿を見ながら、はぁ、と溜息を吐く。

それから頭をガリガリと掻いた。


「そんな事より。さあお弁当。食べましょう」


「ああ。分かった。.....まあ食べるか」


すると.....お重が出てきた。

は!?、と変な声を出して目の前を見ると。

今日はお弁当を豪華にしてみました、とニコニコする鈴香。

豪華すぎるだろ!!!!!

お正月か今は!


「朝4時から作りました」


「.....馬鹿なのかお前は.....」


「今日を記念日にする為です」


「.....ああ。それで告白とかキスとか寝ていたんだな.....」


「そういう事です」


成程な.....、と思う。

それから俺は赤くなって口を塞ぐ。

全くな.....。

俺に恋をしても仕方がないのに。


「.....先輩」


「.....何だ」


「記念日だから聞きたいです。.....10年前。何故私達を救ってくれたんですか。貴方も命を落とす可能性があったのに」


「.....!.....気まぐれかな。.....でもあの場所で.....命を落とすのを見るなら同じ様に死んだ方がマシと思ったんだ」


だからお前らを救った。

それだけの話だ、と俺は語る。

すると、先輩は当時から格好良かったんですね、と俺に向いてくる。

赤くなりながら俺の手に手を添えながら。


「.....先輩は必ず守ります。この命の恩返しで」


「そんな大事じゃないけどな。.....今回の件は」


「私にとっては命よりも大切です。.....貴方の今の環境が」


「.....」


そう言ってくれる事には本当に感謝しかない。

俺はそう考えながら.....鈴香を見る。

まだ何も思えないこの世界。

俺は.....変わっても良いのかもしれないと。

そんな事をふと思った。

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