第4話 プロミスリング

俺は教室に帰ってから。

幼馴染とも全く口を聞かず。

それからそのまま帰ろうとした。

すると.....昇降口の辺りに鈴香が立っているのに気が付く。

俺を見るなり明るくなりそして気分を落とした。


「.....先輩」


「.....鈴香。.....今度は何だ」


「.....私も決意しました」


「何をだよ」


「.....私とお姉ちゃんは協力して貴方を取り返します」


取り返す。

その言葉はもう聞いたのだが.....それでも取り返すのか。

俺は鈴香を見る。

鈴香は拳を握りしめる。

両方でグッと固く決意する様に。


「.....このまま終わらせたく無いんです」


「.....何が.....だ?」


「私は10年前のあの日。.....私は貴方に救われた。.....姉妹だから救われた。.....家の中に入れてくれた。.....だから私は今度は私が助ける番だって思っています」


「.....」


10年前のあのこの街を襲った豪雨災害。

その時に.....俺は姉妹を救ったのだが。

でもそれももう10年前だが.....。

まだそれを切り出すとは.....。


「.....何でお前も鈴もそんなに拘る」


「そんなのどうでも良いでしょう。.....先輩。付き合って下さい」


「.....あのな。俺もう帰りたいんだけど.....」


「駄目です。帰しません。寧ろ帰さないです」


「.....」


意味が分からない。

俺は思いながらも、待っていて下さい。先輩。ローファー履いて外で待っていて下さいね。帰らないで下さい、と言ってくる。

指差されながら。

俺は盛大に溜息を吐きながら意味不明のまま。

そのまま外で待っていると1分もかからずして鈴香が来た。


「先輩。.....私と一緒に絵画を観に行きましょう」


「.....何でだよ.....お前そういうの興味あるのか?俺はあるけど.....」


「先輩を励ましたいので」


「.....無理するな。お前嫌いだろそういう静かなの」


「私は無理していません。リア充ですが。でも無理はして無いです。先輩に合わせたい」


「.....?」


ますます意味が分からない。

俺は考えながらそのまま手を引かれながら。

商店街の中に有る小さな画廊に来た。


それから.....中に入ると.....そこに好きな画家の作品が並んでいる。

俺は目を丸くした。

まさかコイツ.....調べたのか?


「画廊ですけど.....良いでしょ?」


「.....何で俺がこういうの好きって知っている」


「.....私は貴方の好物なら何でも知っています。.....だってそれは.....」


とそこまで言ってから口を噤む。

俺は???を浮かべながら赤くなる鈴香を見る。

すると奥から、あれまあ。カップルかしら、と声がした。

お婆さん。

どうやらこの画廊の主らしい。


「.....か、カップ.....」


「.....落ち着け。鈴香。.....すいません。俺らカップルじゃ無いです」


「あらまあ!そうなの!ごめんなさいね。.....珍しいわねこんな場所に若い人達が来るの。私びっくりよ」


「.....そうなんですか?」


「そうね。.....今時の若い人達はみんな.....漫画とかの文化に触れてしまっているから。.....それにこういう美術品に興味がある人が少なくなったわ」


「.....」


それにしても可愛いわね貴方。モデルでもやっているのかしら、とニコニコしながら鈴香を見るお婆さん。

そんな鈴香は、そ、それは言い過ぎです、と顔を真っ赤にする。

そして首を振って謙遜した。

俺はその姿を見ながら溜息を吐く。


「男の子の方は.....何というか何か悩んでいるわね」


「.....分かるんですか?」


「私ね占いもやっているのよ。趣味で.....あ。そうだ。せっかく来たんだから占っていかないかしら?.....今日はサービスよ」


「.....どうする?鈴香」


「するに決まっている」


「いや即答かよ」


全くコイツは.....。

と思いながらお婆さんを見ると。

有難う、と言いながらタロットカードを出していた。

タロット占いというやつか。

とは言っても素人だからあまり期待しないでね、と言ってくる。


「ささ。そこに腰掛けなさい。.....お二人を占ってあげるわ」


「有難うございます」


「.....それじゃ先ずは.....ってごめんなさいね。全く画廊と絵と関係ないわね」


「いえいえ」


俺達は顔を見合わせてクスクス笑う。

今更気が付いたのか。

俺は苦笑しながらもそのまま占いに身を任せる。

その結果だが.....。


先ず鈴香。

大切な人ほど貴方に近付くわ、という感じだった。

そして俺だが。

今は最悪の時でも待れば全て切り開ける。

そんな感じだった。


つまり.....俺達の将来は安泰という事だった。

本当だろうか。

期待しても良いのだろうか。

と思いながらお婆さんを見ていると。


「占ったぶんのお土産渡すわよ」


「.....これは.....ミサンガ?」


「そう。ミサンガは効果があるわよ。それから貴方にもミサンガを」


「.....エヘヘ。お揃いだ」


「.....」


虹色の切れにくいミサンガ(別称 プロミスリング)だった。

これは確か.....切れたら願い事が叶うんじゃなかったか?

よく分からないが。

するとお婆さんが俺達を見てくる。


「お互いに幸せになる事を願っているわ」


「.....お婆さん。有難うございます」


「.....良いのよ。.....久々にこうして若い人に触れ合えて楽しかったわ。.....オババになるとめっきり楽しい事が減るのよ。アハハ」


「でも.....これお婆さん。これって.....こ、恋人.....の証ですよね?別称で」


「.....さて?どうかしら?」


ウインクして誤魔化すお婆さん。

困ったもんだな。

鈴香が真っ赤になって目を回しているし。

これは.....どうしたものかな、と思うのだが。


「.....」


鈴香が慌てる中。

恋人の証、か。

今の俺には必要は無いな、とそう考えたが。

俺はミサンガをそのまま足首に巻いた。

それから顔を上げる。

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