第3話 諦めない覚悟
鈴と鈴香はまだマシなのかも知れないが。
俺は女性不信に陥ってしまった。
もう何を信じたら良いか分からない。
そもそも何故春香は話せないのか。
訳の1つぐらい話しても良いと思うのだが。
「.....はぁ.....とは言っても。止め止め。もうくだらなさ過ぎる」
そんな感じで感情を揺さぶられるのを止めてから。
そのままトイレに向かってから。
そのまま出て来ると.....鈴が俺を見ていた。
そして口を開きたそうな感じで口を閉じてしまう。
「.....何だ一体。言ったじゃないか。もう話さないって。必要最低限以外は」
「そんな人生楽しくない。.....私は嫌。春香と何があったか知らないけど.....私達は.....それでも貴方を.....」
「.....お前に俺の気持ちが分かるか?裏切られた気分なんだぞ」
「.....分かってる。失恋は.....キツいっていうの。でもそれは他人の視点からだから.....全部理解出来ない」
「ああ。だから俺は.....」
「でもそれでも.....私は.....」
涙を浮かべながら鈴は俺を見てくる。
潤んだ瞳で見上げてくる。
俺は?を浮かべて鈴を見るが。
何故そんな感じになっているのか分からない。
というか何故ここまで必死なのか、が。
「.....私。諦めない」
「.....何を」
「女性不信になった?そんなの関係ない。私は.....雫くんがまた元に戻るまで頑張る」
「.....いや頑張るって頭おかしいだろ。.....俺はもう良いって。放っておいてくれ」
「.....嫌。絶対に嫌。.....私達姉妹は.....貴方に救われたから」
「.....そんなもん10年前の話だろ。.....時効だ」
時効って何?そんなもの存在しない、と言いながら俺を見てくる鈴。
本気の目付きをしている。
何なんだコイツは.....ずっと俺を.....。
俺は思いながら盛大に溜息を吐く。
それから、勝手にしろ、と言ってから歩き出した。
すると明るい声で、うん、と鈴が返事をする。
「.....雫くん。.....私は勝手にやらせてもらいます」
「.....お、おう」
「だから先ずは私に付き合って下さい」
「.....いや。お前。勝手にしろって言ったのはそういう.....」
「良いから。付き合って。.....中庭に行こう」
何でこの短時間で中庭に行かないといけない。
俺は考えながらも潤んだ目で見上げてくる鈴に負けて。
そのまま中庭に向かうと。
そこに綺麗なポピーの花が咲いている。
花壇に植えられしっかり育てられている様だ。
「.....誰が育てているんだ?」
「私だよ。.....不器用だけど育てている」
「.....ああ。そうなのか」
そんな会話をして見ていると。
鈴の長袖から手首が見える。
そこに.....リスカの痕跡があった。
鈴は直ぐにそれを隠す。
「あはは。気持ちが悪いものを見せたね」
「.....もうやってないよな。それ」
「.....うん。全部貴方のお陰で解決に向かったから」
そしてポピーの花壇を持ち上げる。
それから、良い香りがするんだよ。ポピーって、と笑顔を浮かべる。
俺は、そ、そうか、と困惑する。
かなりしっかりした笑顔だったから。
俺は少しだけ考えて告げる。
「.....お前はそういう顔が出来る様になったんだな」
「.....うん。時間は掛かったけど。.....全部貴方のお陰でね」
「不器用かって思っていたんだが。.....そうじゃないんだな」
「.....まあ私の性格だとそう思えてきてもおかしくないよね。 .....でもこういうのは嫌いじゃない。.....だって側に雫くん居るし」
最後の方が聞き取れない。
俺は?を浮かべて、最後が小さい声で聞き取れないぞ、と告げると。
鈴は真っ赤になりながら、な、何でもない、と言う。
俺はその姿を見ながら時計を見る。
そろそろ戻らないと。
「.....鈴」
「.....な、何?」
「.....有難うな。.....少しだけ気分がスッキリした」
「.....そう.....なんだ。良かった」
「.....花にそんな効果があるなんてな。.....驚きだ」
「うん。セラピストになる夢があるの。私」
「.....」
小さな夢かも知れないが。
今としては.....。
だけどコイツなら確かにセラピストの夢を叶えそうだな。
俺は考えながら.....俯いた。
何だか複雑な気分だ。
「私は迷惑を掛けていく」
「.....え?」
「.....雫くんが元に戻る為ならもっと迷惑掛ける。だから覚悟してね」
「.....お前な.....」
ニコッとする鈴。
話を聞いてなかったのか。
勝手にしろとは言ったけどそう言う意味じゃないぞ。
俺は盛大に溜息を吐きながら。
そのまま裏口から戻った。
そして授業を受ける。
感情がモヤモヤだった。
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