生き急ぎ3月

 生き急いでいる気がして考えるのをプッツリやめる。その繰り返しを毎晩まいばん行なっている。


 さほど広くできていない私の思考空間はさまざまな悩みに埋め尽くされて窮屈だ。私はいどころを求めていろんな態勢をとるのだけど、毎度うまくいかずに撃沈する。そして全てを放棄して(思考空間ごと!)眠る。

 第一に、「未来」というでっかくて重たいものが浮いている。私は身体を縮こめてそいつを見上げるんだけど、見上げることしかできない。干渉できないし、奴もそこに居るだけで干渉してこない。でも私は窮屈で窮屈でたまらなくなって、床に大の字になる。


 大の字になると床に「労働」って埃がたくさん積もっていて咳き込む。パートタイムされど本業。生活の命綱は私の呼吸に合わせて舞い上がってくる。煩い。奴らの動きが。忙しなくてうるさくて煙たい。嫌なんだけど、吸わずに生きていけない。私はやっぱり起き上がって体を縮こめて壁を見つめる作業にかかる。

 壁には「夢」ってでっかく書いてある。絵に描いた餅。絵に描いた夢。

 作家になりたいなあ。ずっと思い描いてきた夢。それでちゃんとお金が稼げるんならもっといいのになぁ。そして現実に帰ってきた私はその夢のためにごちゃごちゃと作業をするんだけど、そうすると思考空間の壁がごごごと動いて私を圧迫するものだから、私はぎゃーん!と喚きながらやっぱり大の字になって明日の労働について考える。


 毎日思考はここで終わる。



※※※


 本をまた買ってしまった。

 読みもしない本を積んでしまった。

 本の山は私を圧迫してくる。読んでくれ、読め、よめと。

 これがいつもの浪費癖なのか、過剰な焦りからくる情報の過収集なのかは、判別がつかない。また本を買った。また本を買ってしまった。


 「買いたいだけだろう」という夫の言葉が頭の中に反響している。


 どれだけ書けば、私はこの積み本たちに報いることができるだろうか。

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