「女の子」概念とわたしの「先生」
早々に「女の子」というカテゴリから足を洗ったつもりでいる。暖かい家を出て外界に入り、投げかけられる言葉の数々に
中学校の時の卒業文集にはランキング特集のページが設けられており、「絶対結婚しなさそうランキング」というものがその一角を飾っていた。当然、女子部門の一位を飾るのは私である。どれだけ女子としてのステータスを低く見積もられていたかというのがここから窺い知れる。どんだけだよ君たち。そんなふうに見えていたっていうのかい。
そんな「みんな」は想像しえたろうか、そんな私が早々に結婚相手を見つけて嫁いだ上、今は少女向けのロマンス小説を書こうとしているだなんて。
※※※
性別が女である理由で穿かされるスカートに嫌気がさしている頃。娘のあまりのファッションへの無関心から、心配した両親が勝手に洋服や髪飾りを見繕って買ってきてくれていたような時期だ。
出会いは古本屋だった。私は「混ざりものの月」にたいへん感銘を受けた。夢中で続きを探し求めた。やはり古本屋にしかなかった。
この時「スカーレット・クロス」シリーズの新刊は通販でしか買えなかったのではないだろうか。ライトノベルの層が厚い
実は今も持っている。全部で10冊を超えるシリーズ。非売品のものは手に入らなかったけれど。
心が折れそうな時に、時折読み返してため息をつく。ヒロイン・ツキシロの
私は「魔物」とくに「ヴァンパイア」を扱う小説を書ける気がしない。これを超えられる気がしないからだ。
確か「白と黒のバイレ」シリーズが店頭に並ぶ頃だった(こちらはもちろん新刊で買い揃えた)。
私は先生に手紙を書くことにした。
無知で馬鹿な女子高校生は、素直に「古本屋で見つけて買いました」みたいなことを書いた。馬鹿だ。先生にとってみれば大変失礼な読者であったろう。
しかし私はやはり馬鹿な若者であったので、大変な失礼をぶっこいていることにも気づかず、先生が書いてくださった返事のお手紙を大事にしまい込んで、次の手紙を書いた。「白と黒のバイレ」についてだ。
こちらも呪われた姫ブランカと、その護衛騎士セロの恋愛物語で、身分違いの両片思いだった。じれじれと距離を置いて繰り広げられる恋愛模様は、私の原点だ。
身分差の恋が大好きなのは多分このためだろう。同時期に「ツバサ・クロニクル」を摂取していた私は見事に「身分差の恋」を性癖の一つに加えることとなった。
先生にお手紙を送ったのは3回だったと記憶している。手元に残っているお返事のお手紙が三通だからだ。
※※※
女の子でいることをやめた私が「可愛い女の子」に憧れる瞬間は、先生の本の中にしかなかった。ツキシロやブランカ、「マギの魔法使い」のエメラルドのような「みずから戦う女の子」を書きたいと思うのも、あの日古本屋で見つけた「混ざりものの月」があったからだ。
強くて可愛い女の子を書きたい。ずっとそう思っている。
先生。瑞山いつき先生。
10年ほど前、先生に大変失礼なファンレターを送りつけた女子高校生は今、あの手紙の中で宣言したとおりに商業作家を目指しています。ほんの少しですが今、その一歩を踏み出すことができました。
web小説という出発点ではあるものの……いつか先生のように、かつての私のような読者に届くような物語を綴りたいと思っています。女の子をやめた女の子にも、届くような面白い物語を書きたい。素敵だと思えるような恋の物語を書いてみたいのです。
見ていてください、なんてことはとても言えませんが。私の力量がいかほどかを私はまだ知りません。まずは全力で挑みかかってみようと思います。先生がそうしたように。
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