第6話

「加勢します。」


俺たちはそういうと騎士のような人たちと魔物に向かっていった。どの魔物もステータスの平均が200ぐらいで弱めである。ものの5分すると、500ほどいた魔物はすべて殲滅されていた。


「こんなものかな。」


「そうね。このぐらいだと私たちの敵ではないわね。」


「やはりあなた方、なかなかに鍛えがいがありそうですね。」


俺たちがそう話していると、


「この度はご加勢ありがとうございます。あなた方がいらっしゃらなければ今頃どうなっていたことか…。」


そういいながらまるで執事みたいな人が近づいてきた。


「いえ、困っている方がいらっしゃれば助けろ、と母に常々言われていますので。大したことはしていませんよ。」


そう、うちのお義母さんはいつも、毎日のようにそういうのだ。耳に胼胝ができるのではないかってほどに。まあ、その教えのおかげで俺は助かったのだが。


「この魔物の量は異常ですね。この森に何かあったのでしょうか?」


そうアレスが言う。


「この森は脅威度が低く、子供の教育にうってつけの場所として王都でも有名な場所なのですが。」


「ええ。後日陛下に個々の調査をお願いしましょうかね。」


「……へ、陛下?」


俺が驚いてそういうと執事は、


「失礼しました。まだ名乗っていませんでしたね。私、レガトゥス朝42代目アキレウス=レガトゥス陛下の第2王女ヘレネ様の使い、パントオス=ピンセルナと申します。以後お見知りおきを。」


「………」


(え、俺たちが助けたのってもしかして…)


と考えていると広場の端に停まっていたおそらく馬車だと思われる車から(馬は逃げている)美しい、きれいな金髪ロングヘアときれいな赤い眼をした同年代ぐらいの女性が出てきた。


(あの人きれいすぎるだろ。きれい以上の語彙がないのが悔やまれる。)


なんてくだらないことを考えているとアテネがジト目でこちらを見てくる。


「セルス君ってああいうきれいな人がいいんだ。」


そ、そうだ。俺にはアテネがいるもんね。うん。惑わされてはいけないぞ、俺。


「えっ。い、いや、そんなことないよ。うん。アテネのほうがその…きれいだと思うぞ。」


途端にアテネの顔が真っ赤になった。多分俺の顔も真っ赤だ。


「セルスってずるい…。」


アテネが何かつぶやいた気がするがよく聞こえなかった。


「あなた方が私を助けてくれた方々ですね。ありがとうございます。私が先ほどじいが紹介しておりました、ヘレネ=レガトゥスです。」


「あっ。いえ。そんな大したことなどしておりませんよ。」


アレスが王女様にペコペコしながら挨拶している。ああいうことは大人に任せておこう。


しばしの間、アレスが王女様と執事の方と話している。と、アレスがこちらに帰ってきた。


「セルスさん、アテネさん、数日後に王都に行って国王陛下と謁見し、恩賞をいただくことになりそうです。よろしいですか?」


俺とアテネは顔を見合わせ


「お義母さんに相談してからではないと。」


俺が代表して答えると、


「その通りですね。ではそう王女様方にお伝えしてきます。」


というとアレスは王女様のほうへ行った。そして、少し話して帰ってくると、


「セルスさん、アテネさん、謁見の話はアングルス家に話をあちらで通してくれるそうです。ですが、王女様が直接お礼をおっしゃりたいとのことです。参りましょう。」


「ええ。それぐらいなら。」


俺とアテネが王女様のところに向かった。


「こちらがセルス、こちらがアテネです。私の弟子です。」


お前、何も教えてないじゃん。何が弟子だよ。まあいいや。


「私がセルスです。」


「アテネです。」


「あなたがセルス君で、あなたがアテネちゃんね。これからよろしく!」


ヘレネって結構親しみやすい性格の人だな。アテネにもちゃん付けだし。


「ええ。よろしくお願いします。」


ヘレネが手を出してきたので俺はその手を握りそう答える。そして


「突然なんだけどセルス私の婚約者にならない?君の戦いっぷりを見てるとかっこよくってね。つい惚れちゃった。」


ヘレネがペロッと舌を出していう。あざとい、そしてかわいい…。って、そんなこと考えてる場合じゃねえ。この子なんて言った?婚約者になれ?あれ?今日が初対面だよね?ってそんなことより早く断らないと。


「なかなかにお似合いではないですか。セルス君のスキルは初代国王のスキルと同じものなのだそうですよ。」


「なんと。それは何という偶然か。国王陛下も納得されることでしょう。」


アレスとパントオスが何やら変な会話をしているようだ。


「そうなのですか!もっとセルス君と結婚したくなってきました。」


「あの…。結婚というのは…。」


俺が断ろうとすると



「セルスは私の嫁になるの!」



突然アテネが叫んだ。途端に周りがが静かになる。当のアテネはこんなことを叫んでしまったた


め、恥ずかしさで悶えている。俺ってアテネにあんな風に思われていたのか…。なんかうれしいな。よし、アテネのためにもビシッと断るか。俺が断ろうとするとヘレネがアテネに耳打ちをする。


「アテネちゃんもそのように思ってたのね。でもね、この国では貴族なら複数人嫁を持ってもいいのよ。私たちで不毛な争いをするより、二人で仲良く婚約者になったほうがいいのではないかしら。」


と、アテネは少しの間考え込んで、


「負ける可能性がある争いをするぐらいなら、独占できなくても一生一緒にいれるほうがいいわね。」


アテネは何かつぶやくと、


「ヘレネ。あなたがセルスの婚約者になることを許すわ。ただし、私もセルスの婚約者になることを認めなさい。」


「ええ。もちろんです。というか私はそもそもこのような素晴らしい方を独り占めできるなんて思っていませんけどね。」


「あの…。ちょっと、二人とも…。」


「「というわけでこれからよろしくね、セルス(セルス君)!!」」


「は、はい。」


俺は2人の圧に負け、素直にうなずくしかなかった。

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