第3話
俺は『はずれスキル』だったというだけで家を追放された、と思ったら侯爵家に拾われた。
「あなたのスキルってきっとすごいわよ。あの人たちをいつか見返せるほどに。」
新しい母親になったラノス=アングルスが言う。彼女の家では、神を熱狂的に信仰しているらしい。だから、俺のスキルの「神」という文字にひかれて拾ったそうだ。それに彼女曰く、何故だかわからないが、この子を拾わなければならないという使命が与えられた気がしたらしい。彼女はそれが神からの神託だと思っているそうだが。
「いえ、見返すなんて。私はただ平穏に暮らしたいだけです。」
本当は1ミリもそんなこと思ってないけどね。死ぬほど見返してやりたい。だけど俺の目的は魔神討伐だからな。目的を見失ってはいけない。
そんなこんなで家に到着した。俺のもともとの家とは比べ物にならないぐらい大きい。
「ただいま戻りましたわ。」
そうラノスが言うとおじいさんっぽい人がドアを開けた。その横に小さい女の子がいる。きれいな銀髪のロングヘアにきれいな青い目。あの女神にそっくりだなと思った。
するとこの時俺は、気が付いた。あの女神が言っていた相棒とはこいつだと。
その夜、俺の歓迎パーティーが開かれた。その時、この家のことについて、俺のスキルについて、そして「古い言い伝え」について。
この家は、およそ1000年前の王国建国の時の功労者が始祖で、今はその54代目らしい。
また、俺のスキルはめちゃくちゃすごいらしい。なんでも、王国の建国者クロノス=レガトゥスが保有していたスキルと3つともおなじらしい。なんで、あの人は俺を追放したのだろうか? 最後に「古い言い伝え」だが、その内容は… ====================================昔、およそ1000年前にクロノス=レガトゥスという一人の冒険者がいた。彼は、幼いころに両親を失い、一人で過ごしていた。しかし、10歳の時、「創造神」を名乗るものと出会い、3つのスキルを手に入れた。それが、『神眼』、『神聴』、『神の奇跡』だった。彼は、そのスキルを使って、魔王を討伐した。
そして国を造った。その時、彼はこういった。
『いずれ、苦難の時代が来るだろう。だが、案ずるな。その時が来れば必ず、神の使徒が人族を救うだろう。』と。 ====================================
なるほど。それで俺が彼と同じスキルを持っていたから、神の使徒だと思ったのか。そして俺を拾ったと。まあ、神の使徒かと言われればそうかもしれないけれど。俺はそれを聞いて、ますます疑問に思った。なぜあの元父親は俺を追放したのだろうと。まああんなようなクズの思考はわからないか。俺は思考を放棄する。
そんな話を聞かされながら、俺たちは食事を終えた。席を立つとき、俺は銀髪の彼女に
「後で私の部屋に来てください。」
と言われた。
その夜、俺は彼女の部屋へ行った。部屋の入ると彼女はベッドに腰を掛けていた。彼女は無言でベッドをポンポンとたたいた。俺は彼女の隣に座った。おもむろに彼女は
「あなたが私の相棒ですか。話は聞いていますね。」
といった。
「はい、あの女神から聞いています。魔神を討伐するように、そしてそれがなされた暁には、神になれると。」
「はい、私も同じようなことを聞きました。これからもよろしくお願いしますね。」
彼女は微笑んだ。美しい…。思わず見とれてしまった。
「はい。こちらこそ。」
「そういえば、名前って何だっけ?」
俺がそう聞くと
「アテネです。アテネ=アングルスです。」 「アテネか…。いい名前だね。」
「あなたは?」
「俺はセルスだ。」
「…」
「…」
少しの間、沈黙が続いた。お互い相手を見つめあっている。めっちゃきれいだな、このまま押し倒してしまおうか、とか考えていると、突然
(私の娘に手を出そうとするな!!)
と空から声が聞こえてきた。すると、目の前に転生するときにあった女神が現れた。
「私の娘に手を出そうとするなんて、いい度胸じゃなの、セルス。」
と女神が言ってきた。
(娘ってどういうこと?アテネって女神さまの娘だったの?)
俺が混乱していると、
「お母さま!突然どうされたのですか?」
とアテネが言った。
「どうしたも何もこいつが私の娘に手を出そうとしたのよ。母親として娘に変な男が近寄らないようにするべきでしょう。」
「え!俺そんな事してませんよ。」
「していなくても考えているだけでダメなのよ。」
アテネはかわいいけどそんな勇気はないよ、俺には。
「セルスさんはそんな人ではありません。誠実な人だと信じています。」
(そんなこと言われても…。俺ってそんな誠実な人だったっけ?)
そんな事を思っていると、アテネが
(お母さまは私のことになると周りが見えなくなってしまうのです。いわゆる親バカですね。)
アテネの口調からこれまでの苦労が感じられる。
「お母さま。これ以上私たちの魔神討伐を邪魔するようなら、絶縁しますよ。」
「ぜ、絶縁、だと…。そんな…。」
女神さまが絶望している。効果はバツグンのようだ。と思ったらこちらを向いて、
「アテネに手を出したら…。わかってるわよね。」
「は、はい。もちろんです。」
俺がそう言うとアテネにキスして帰っていった。 俺とアテネは顔を見合わせて
「大変ですね。」
「本当に大変です」
アテネがしみじみとしながらいう。 これから大変そうだ…。
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