第20話  アイライン


ねぇ、早くおきなよ~。


可愛い女の声がしてる。


目をさます俺。


見渡すと、一瞬どこにいるかわからない。


記憶をたどる。


そうだった。


俺は、横浜から、一緒に暮らすため、お前の部屋へとやって来ていたんだ。


俺は、キティのトランクスに右手を突っ込み、股間をポリポリ掻きながら、お前の声のする方へ歩いた。


早く、シャワー浴びちゃって。


今日は出掛けようよ。


あんたの買い物しなくちゃ。



鏡台に前に下着姿で腰掛け、鏡越しに俺に微笑む。


俺は後ろから抱き締め、朝の挨拶をしようとした。


ダメダメ!!


いま、目をつくってるから、触らないで!!


お前は、真剣な眼差しで、アイラインをひいていた。


俺は女系家族で育ったせいか、化粧をしている女の顔は何度となく見ている。


普通なら見飽きているんじゃないの?って言われそうだが、俺は、化粧で女の顔が進歩していく様が非常に大好きなのだ。


それに、これ以上出来ないって言うくらいに、真剣な顔になる。


これがまた、俺の気持ちをくすぐるのだ。


片目をほそめ、口をちょびっと開き、鼻の下を延ばし、お前は必死でアイラインを引いている。


ちょびっと、肩、押していい?


バァ〜カ!


頭、触っていい?


殺すよ…。


ぢゃ、乳首…。


うるさい!!



恐怖を感じ、俺はシャワーに入ろうかと、シャワーの入り口に立ち止まり、また改めてお前の顔を見つめる。


さぁできた!


メイクの終わったお前は、俺に近づき、俺に口づける。


一緒にお出掛け、楽しみだね。


Make-Upしたお前は、優しく可愛い女に戻っていた…。


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