第17話  霊感。


俺にはまったく霊感がない。


しかし、女性には、霊感が強いって娘がわりとたくさんいるね。



ラブホへ入る。


ラブホってぇのは、なんだか霊の溜まり場…集会場みたいな感じなんだってね?


生前、えっちがしたりなかったのか、人の行為を見たがるすけべな気持ちがあるのか、とにかく霊が集まりやすいみたいだね。



霊感の強い娘とラブホへ入る。


入ってすぐに怖がり、部屋を代えるか、帰りたがる娘もいるが、たいがいは裸になり一緒にベッドに入り、一回終わったくらいで霊に気づくね。



「誰かが見てる…。」


「なんか音が聞こえる…。」



俺にはなんにも感じない…。


しかし、彼女がうそをついているとも思わない。


なぜなら、いちどだけ俺も感じたことがあったからだ…。



それはもう、数年まえのこと。


はじめて入ったモーテル式のラブホだった。



部屋に入り、しばし抱き合い、口づける。


互いに服を脱ぎ捨てバスルームで一緒にシャワー…。


身体を拭う時間も惜しみ、ベッドへなだれ込み、目の下の彼女の髪を撫で上げながら、優しく乳首に触れようとした時だった。


俺は裸の背中に重圧と強い視線を感じた。


異変を感じ、そのまま彼女に覆い被さる感じのまま、俺は真っ暗な部屋の照明を少しだけ明るくする。


彼女の顔を見て、俺は話しかけようとし、さらに驚いた。



彼女は蒼ざめ、目を見開き震えていたからだ。




「誰かいる…いっぱい…いる…。」



霊感の強い彼女は怯えていた。


俺には見えない…。

しかし、確かに何かを感じた…。


霊感の無い俺まで確かに感じたのだ!!


窓の脇の…冷蔵庫の裏から


「ピシッ!」 と 音まで俺にも聞こえたのだ…。



「ラップ音?」


俺はつぶやき、彼女を抱き締めた。


彼女は無意識下で、霊たちと交信をしているみたいに押し黙っている。



しばしの沈黙の後、抱き締めていた彼女の緊張が緩んだのを感じ、俺は口を開いた。



「大丈夫?」


「うん…大丈夫。もう大丈夫…危害加えるようなことはないみたい」


「そっか…。」


「抱いて…。」


「え?そんな気分じゃなくない?」


「だって…せっかくギャラリーがいるんだから…。」




忘れてた…。


彼女は見られながらの行為に欲情する性癖があったのだ…。


俺にはもう霊の存在は感じられなくなっていた。


だから、俺は彼女の期待に応えるべくレベル4のMAXパワーで彼女を抱いた。



ひときわ高く響く彼女のうめき声…。


部屋じゅうに俺たちの“愛の匂い”が、漂う様だ。



そして、彼女はクライマックスを迎える。



「あっ!いくっ!いくっ!あっ!あぁぁぁ~!!」



二人は余韻の中を漂った。


余韻の中、小さな電球がひとつ、パリッと音をたて消えた。

そして、あきらかに彼女の声とは違う声で彼女は言った。




「ありがとう…よかった…みんなも逝けたよ…。」



言葉が消えると、部屋の中には、俺たち2人だけが残ったのだった…。





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