イカったよ

夕日ゆうや

イカのお刺身!

「CDって聞いたことあるかい?」

「CD。何それ?」

 やはり、今の元気っ子は聞いたことがないんだな。

 イカを捌きながら、俺は困ったように顔をしかめる。

 イカのお刺身を食卓に並べると、次男の武士たけしが嬉しそうに箸を持つ。

「いただきまー」

「待って。重広かさひろがまだだろ?」

「トイレじゃないー?」

「重広。ご飯だぞ?」

 俺は重広の部屋を前にノックする。

 ガラッと開けてみると、上からたらいが降ってくる。

 それを素早くかわし、俺は中の様子を見やる。

 重広が残念そうな顔をする。

「まったく、なにやっているんだよ。せっかくイカのお刺身だというのに」

「イカのお刺身! 食べる!」

 重広は嬉しそうに食卓へと向かう。

 俺も後をついていくと、驚きの声があがる。

「イカ、ないじゃんか!」

「なんのこと?」

 武士がもぐもぐと口を動かしている。

「武士……」

 咎める気も起きないほどにすがすがしいな。

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イカったよ 夕日ゆうや @PT03wing

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